吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



Vanguard

アクティブファンドにはインデックスファンド以上に金融機関側の利益が上乗せされている?

バンガードのファンド経費(エクスペンス・レシオ)の情報から思っていることです。

バンガードのサイトに行くとエクスペンスレシオに関する以下の情報があります。(2011年12月31日時点)
 ●バンガードのファンドの平均エクスペンスレシオ:0.20%
 ●業界のファンドの平均エクスペンスレシオ:

アクティブ/インデックス毎にも同じ情報が出ています。
 ●バンガードのアクティブファンドの平均エクスペンスレシオ:0.28%
 ●業界のインデックスファンドの平均エクスペンスレシオ:1.30%
 ●バンガードのインデックスファンドの平均エクスペンスレシオ:0.16%
 ●業界のインデックスファンドの平均エクスペンスレシオ:0.85%


表にまとめると以下の通りです。
Vanguard_fund_expenseratio


バンガードにしろ業界にしろコストは【アクティブ>インデックス】の傾向があります。
実際にはアセットの違い、分配頻度の違い、資産規模の違い、利益の上乗せ幅の違いなどの要因がありますが、ここからはアクティブの方がインデックスよりコストがかかっているのではないかとも推測できます。

特にバンガードのアットコストと素晴らしき仕組みでも書きましたが、バンガードはアットコストという理念のもとにファンドを運用しています。
バンガードのファンドが理念通りに運用されているならば、コスト+事業継続のために必要な利益分以外は取らないということですので、それなりにいい感じにアクティブvsインデックスの比較ができそうです。
(分配頻度に関して言えば、アクティブとインデックスの大きな違いは、アクティブは毎月分配が50%程度に対して、インデックスは四半期毎が45%程というところ。1年分配はアクティブ35%、インデックス40%と大きな差はありません)


そんなバンガードの数字を見て気になるのが、アクティブとインデックスのエクスペンスレシオの差です。

表にあるようにアットコスト方針のバンガードでは0.12%程度の違いですが、業界平均では0.45%です。アセットの違い、分配頻度の違い、資産規模の違いなどの原因も考えられますが、「アクティブファンドの方が金融機関側の取り分をより多く上乗せしているのではないか?」という疑問が湧いてきます。


非常に荒い試算ですが「アクティブは運用コストがかかって大変なんだ」と言うついでに取り分も上乗せしている仮説程度は立てられそうです。







バンガードのアットコストと素晴らしき仕組み

10月25日にバンガード報告会(スピーカー:竹川美奈子氏)が開催されたこともあって、バンガード関連の話題を聞きます。

【参考:バンガード報告会の参加レポート】
 ・竹川美奈子さんのバンガード視察ツアー報告会に参加しました ("いい投資"探検日誌 from 新所沢)
 ・米国バンガードツアー報告会レポート(梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー)

このバンガード視察ツアーの報告会には参加していないので会の話は書けませんが、バンガードの素晴らしき仕組みを自分の整理がてら書いてみます。

上の「"いい投資"探検日誌 from 新所沢」の報告にも書かれていますが、at-costという考え方が最重要です。バンガードはこう言っています。
What can be better than low-cost? At-cost investing. At Vanguard, a fund costs you what it costs us to run it.

これは私も反省。仕組みは分かっていたのですがlow-costとat-costという用語を区別せずにバンガードの話をしていました。低コストより優れた仕組みをat-costとしているのですからバンガードに敬意を払うならここはしっかりと区別すべき。


そんなat-costの仕組みが素晴らしい。

まずはさんざんに言われていることですが、極めて低いExpense Ratio(≒信託報酬)です。業界平均が1.12%に対し、バンガードのファンドの平均は0.20%。
1.12% vs 0.20%と非常に低い水準になっています。



そして、今日の本題はExpense Ratio以外の仕組みです。

【1】1万ドル以下の残高には年20ドルの口座手数料
「低コスト」を是とするならば無料こそが良いのでしょう。しかし、バンガードは1万ドル(今のレートだと約80万円)以下の預かり資産にはファンド毎に20ドル/年の口座手数料(Account Service Fee)を徴収しています。

【2】預かり資産残高5万ドル未満は口座手数料は無料
バンガードは顧客を預かり資産残高で区別しています。
 ・~5万ドル: Core
 ・5万ドル〜50万ドル: Voyager
 ・50万ドル〜100万ドル: Voyager Select
 ・100万ドル〜: Flagship
このクラス毎に受けられるサービスが違っており、上記のファンド毎の20ドルの手数料が課されるのは5万ドル以下と一番下のCoreクラスだけです。Voyager以上でこの費用は無料になります。

【3】Admiral Sharesというより低コストなファンド
ただでさえ0.20%平均と低Expense Ratioですが、インデックスファンドにおいては1万ドル以上、アクティブファンドにおいては5万ドル以上の投資額であれば多くがAdmiral Sharesというより低Expense Ratioのファンドがあります。

【4】最初は3000ドル、追加投資は100ドル*からという最低購入額 (*自動積立は50ドル)
日本では投資信託は基本的に1万円から購入できます。また販売会社によっては500円からのように少額投資も可能です。
しかし、バンガードでは初回の投資には3000ドル(約24万円)が必要です。また、追加投資においては100ドル、積立でも50ドルからと決して最低購入額は低くありません。

参考: Vanguardのサイト
 ・Vanguard mutual fund accounts
 ・Vanguard Personal Services—assistance you can count on


上記4つの仕組みは非常に共感を持てます。

ファンドの運用にはコストがかかります。
日本の多くの販売会社のように口座管理手数料を取らない形式では、わずかな額しかファンドを買ってくれない顧客は、コスト>収入となります。
仮に50万円しか投資信託を保有しない顧客がいて0.20%しか手数料を取らないなら年1000円の収入にしかなりません。この人の口座を管理して運用報告書を送付して…では全く割に合いません。
しかも「月1万円から投資を始める」という顧客の場合、1年間後でも12万円の預かり残高です。ここから0.20%を取っても年240円の収益にすぎません。

これでファンドの運用を続けていこうとすれば、誰か他の人にそのコストを押し付けることになり、ファンド全体の手数料引き下げは難しくなります。

しかし、at-costを標榜するバンガードでは顧客本人からコストを徴収するような仕組みです。少額投資に対してはファンド毎に20ドルの口座管理手数料を取れば、その少額口座を管理するコストを他人に転嫁させることなく本人に負担させるようにできます。
預かり残高が増えればExpense Ratioから得られる収益が大きくなるので口座管理手数料を取らないで運営できるようになります。
このような仕組みにすればファンドのExpense Ratioを引き下げることも容易になります。


「口座管理手数料の有無」「残高に応じたExpense Ratioが違うファンド」「相談の有無」のように資産額に応じた費用・サービスレベルの違いは、ビジネスとしてバンガードを続けていくために非常に優れている仕組みでしょう。

日本では「より少額で買える」「口座管理手数料を取らない」のような方向性が主流で、バンガードのようなat-costの「口座管理手数料の有無」「残高に応じたExpense Ratioが違うファンド」「相談の有無」という仕組みを設けようとする会社はありません。

バンガードのような仕組みを設ける会社もでてきていいのではないでしょうか…と思う反面、日本でこのビジネスモデルを展開するのはそう簡単ではなさそうです。

日本では直販ファンドの投資報告会/セミナーなどは人気があります。顧客と運用会社の強い結びつきとしてのFace to Faceに対する価値が高いようにも思います(報告会のレポートにあるようにバンガードはWebが基本)。
また、いくつかの会社で投資可能最低額が1万円から引き下げられた時にもそのほとんどが好意的な意見だったように、少額投資に対する期待値も非常に大きそうです。
口座管理手数料への抵抗感も強いように思え…バンガードモデルは文化的に合わないかもしれません。

これは、どちらが良い/悪いということではなくて目指すべきベクトルが全く違うというだけの話です。しかし、だからこそ難しい。どちらかが悪いなら明らかにそちらにダメ出しして終了ですが、どちらにも理があるので一方を良し悪しで駆逐して終わりとはいかない…

バンガードも創設当初は苦労したとのことですが、このモデルを入れることはなかなか難しそうです。



新しいインデックスなどカーブフィッティングです。偉い人にはそれが分からんのです(Vanguardのレポート)

「あんなの(新しいインデックスなど)カーブフィッティングです。偉い人にはそれが分からんのです。」

こちらで知ったのですが、Vanguardが大変興味深いレポートを発表していました。
ファンダメンタルインデックスなど、新しいインデックスに注目している人は必見(?)のレポートです。

Joined at the hip: ETF and index development (Vanguard)

インデックス及びそれに連動を目指すETFに関するレポートです。2000年以降のデータで面白い検討をしています。


面白いポイントは3つです。(特に3つ目が重要)

(1)インデックスの種類
2002年頃まではほとんどが時価総額ベースのインデックスでした。しかし、2003年からは従来の時価総額ベースでない多くのインデックスが開発されています。


(2)インデックス組成⇒ETF組成期間の短縮化
インデックスが組成されてから、そのインデックスをベンチマークとするETFが組成されるまでの平均期間が短くなっているようです。2000年は約3年だったのが、2011年は77日ということでかなりの短縮です。


(3)過去に調子が良かったパラメーターをインデックス化しているだけ?
ここが一番面白いポイントです。
Vanguardは組成されたインデックスの組成前のパフォーマンス組成後のパフォーマンスを調べています。

インデックスの87%はインデックス組成前の過去データではアメリカ株式市場をアウトパフォームしたようです。
しかし、インデックス組成後のパフォーマンスを見るとアウトパフォームしたインデックスは51%とのことです。

しかも「インデックス組成」「ETF開始」の前後5年でアメリカ株式市場に対する年次超過リターンを見ると大変興味深い。
figure6
figure7

見事なまでに対アメリカ株式市場で、組成前はアウトパフォーム組成後にはアンダーパフォームという結果になっています。これを見ると、インデックスという皮を被っていますがテクニカル分析でよく聞くカーブフィッティングという言葉が浮かんできます。

ファンダメンタルインデックス等も提唱されていますが、このようなデータを見た時にどう考えるか・・・
大変興味深いレポートです。

当たり前ですが、Vanguardは「あんなの(新しいインデックスなど)カーブフィッティングです。偉い人にはそれが分からんのです。」なんて言っていません。



バンガードの行動指針とチョクハンファンド

投資信託の直接販売で低コストインデックスファンドを提供している会社と言えば、Vanguard(バンガード)
そのバンガードには次のような行動指針があります。
●細心の注意を払い、長期的な方向性と明確な目的をもってファンドを運用しています。ベンチマーク指数や他社の同種同等のファンドよりも優れた運用成果をご提供することを最終的な目標としています。
●私たちは、販促活動などへの配慮よりもまず、顧客に対する受託者としての責任を最優先に考えています。
●私たちは投資家に対して投資成果のみならず、リスクとコストに関しても正確かつ正直な情報提供を行います。
●私たちは顧客との信頼関係において公正な取引、誠実、正直の精神を持ち続けます。
この理念が具現化されているサービスがあってこそバンガードは支持されています。

これを念頭において日本で最近増えている直販(チョクハン)ファンドに目を向けてみます。
どうでしょう?日本の直販ファンドはこれを満たしているでしょうか?

販促活動よりも、顧客に対する受託者としての責任を最優先に考えているでしょうか?
リスクとコストに関して正確かつ正直な情報提供を行っているでしょうか?
公正さ、誠実さ、正直さの精神があるでしょうか?

私の評価は残念ながらNOです。部分的に満たしているところはあっても、総合的にはNOです。セゾン投信などはいい線をいっているとは思いますが、それでもまだというところです。


チョクハンの中には、ファンドの特徴を「販売手数料0%、信託報酬0.7%(税込0.735%)」と太字の赤字で書いて低コストと謳っているファンドがあります。しかし、このファンドは、その後にカッコでとじられた中に黒字&強調無しで「実質的な信託報酬は1.5%以上」と書いています。
目論見書でも、最初に出てくる『当ファンドに係る手数料等について』という項目でも投資先のファンドに支払うコストについての言及がありません。
目論見書を読み進めていて、最初に出てくる当ファンドに係る手数料等についてを読んでコストについて分かったように思った投資家を欺こうとしているのではないかとさえ思えてきます。
これが誠実さ、正直さでしょうか?

なお、セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドでは、HPのファンド概要で実質的に投資家の負担となる信託報酬(0.74%±0.035)が大きく赤字で記述されています。交付目論見書の『当ファンドに係る手数料等について』でも実質的な信託報酬が記述されています。

これで、チョクハンは顧客目線で公正で誠実で正直なモノを提供できていると言えるでしょうか?
セクシャル・ハラスメントの判定基準ではありませんが、ファンドがどう考えているかは問題ではありません。重要なのは顧客がどう受け取るかです。
「運用会社自身が頑張っているつもり」には価値がありません。それが顧客にとってよいかが問題です。上で良い例として挙げたセゾン投信の信託報酬情報の提供のような例もありますが、それでも現在のチョクハンはまだまだでしょう。


チョクハンは受託者としての責任を最優先に考えているでしょうか?
資産運用会社なのですから資産運用・経営管理をしっかりやるのが何よりも受託者の最大の責任です。
野村や外資系運用会社の商品には眉をひそめるものも多くあります。しかし、それでもその規模を生かしたネットワークによる情報収集力や資産管理手法のレベルは決して低いとはいえません。
「自分自身には個別銘柄を選ぶ能力が無いからアウトソースをしている。おまけにそのためにアウトソース先へのコストもかかる」と言っているファンドが受託者としての責任を最優先に考えているのでしょうか?

フットボールチームのManchester UnitedのスターであるRyan Giggsは「才能だけでプレーできることはあるけれど、自信だけでプレーすることはできない」と言っています。私の好きな言葉です。
プロフットボーラーとしてプレーするだけの能力があってこそプロとして活躍できます。自信や想いだけではプレーできません。
資産運用会社もこれは同じです。チョクハンも資産運用会社としての能力があってこそ運用会社として認められる存在になります。自信や熱意だけでは資産運用会社としては通用しません。
今のチョクハンが大手資産運用会社と比較して受託者としての責任を果たす能力で勝っていると言えるでしょうか?

なお、バンガードは経営管理についても「経営管理にシックスシグマの手法を採用し、業務のあらゆる局面で、正確、迅速な運営を実現。作業工程の更なる改善に日々取り組んでいます。」とまで謳っています。(バンガードの独自性 より)


コスト競争が進んだ時に販売会社がいない直販は強力な武器になります。直販というシステムには大いに期待しています。しかし、現在のチョクハンは残念ながらこのレベルには程遠い。

バンガードのような直販低コストファンドを望んでいますが、「インデックスなら何でも良いわけではない」「直販なら何でも良いわけではない」ということです。
高品質であることは必要条件です。


こういう声を乗り越えてガンバレ、チョクハン。



私の著書 - ズボラ投資
「毎月10分のチェックで1000万増やす! 庶民のためのズボラ投資」
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