吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



TPP

TPPについて書いた過去のエントリー (まとめ)

先日、TPPについて久しぶりに書きましたが、以前にも交渉参加時が取りざたされた時に書いたものもご紹介。


●2011年10月28日: TPP交渉参加反対の怪
TPP交渉参加反対派にロジックが無いのではないかと書きました。

●2011年11月2日: TPPを巡る議論の勘違い
TPP反対派が主張するいくつかの言説(「アメリカは日本を狙っている」、「TPPには一切の例外はない」、「アメリカの承認が必要、アメリカの言いなり」、「承認無く脱退できない」、「ISD条項は一方的にやられる」)が的外れ、もしくは間違っていると書きました。

●2013年7月10日: いまだにTPPのISD条項が問題とか憲法違反とかいう人がいるのか
先日のエントリーです。
日本は35年も昔のエジプトとの条約を皮切りに多くの国とISD条項を締結しているのに、それを今まで一切指摘したことが無いばかりか、今回も指摘することもなくTPPにおけるISD条項のみを司法権の侵害だと批判することが的外れと書きました。


TPP賛成でも反対でもいいですが、最低限の事実の理解やロジックは整理して話してほしいものです。







いまだにTPPのISD条項が問題とか憲法違反とかいう人がいるのか

「TPPのISD条項の違憲性」という川口創氏の大変興味深い主張がありました。
  ●BLOGOS版
  ●オリジナル
TPP交渉が極秘に進められているため、内容が不明確な部分がありますが、TPPの中には「非違反申立」やラチェット条項など問題ある条項が多く含まれていると考えられます。

 とりわけ見過ごすことが出来ないのがISD条項(投資家対国家の紛争解決条項)です。
 憲法に照らしてみた場合、司法権が我が国の裁判所に属するとした76条1項に反するものであり、我が国の司法主権の侵害に他なりません。
 政府が今行おうとしていることは、司法主権の売り渡しです。

TPPの重大な問題点としてISD条項を挙げ、ISD条項とは司法主権の売り渡しで問題であり、それを今進めようとする政府は悪いという主張です。

デジャヴでしょうか。

TPP交渉参加が取りざたされた時にも同じような主張がありましたが、
mirko


ISD条項なんてものは一万年と二千年何十年も前からとっくに締結済みです。
●参考:経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA) (経済産業省)

1978年に発効済みの対エジプトの投資協定において投資家対国家間の紛争解決条項(ISD条項)は含まれています。
以下は日本・エジプト間のIIA(投資協定)における投資家対国家間の紛争解決条項の章です。
各締約国は、他方の締約国の国民又は会社が行う投資から生ずる法律上の紛争を、その国民又は会社の要請があつたときは、千九百六十五年三月十八日にワシントンで作成された国家と他の国家の国民との間の投資紛争の解決に関する条約の規定に従い、調停又は仲裁に付託することに同意する。紛争の当事者がその紛争を調停又は仲裁に付託することに同意する日の前又はその日に他方の締約国の国民又は会社が支配していたか又は支配している一方の締約国の会社は、同条約の適用上、同条約第二十五条(2)bの規定に従い、当該他方の締約国の会社として取り扱われる。調停又は仲裁のいずれがより適切な手続であるかについて意見が一致しない場合には、当事者である国民又は会社がそのいずれかを選択する権利を有する。

●参考:投資の奨励及び相互保護に関する日本国とエジプト・アラブ共和国との間の協定


ISD条項なんてものは35年も昔に発効済みで、すでに25のEPAやIIAで諸外国とISD条項を含んだ条約が締結されています。
TPPを進めていたとしても「政府が今行おうとしていることは、司法主権の売り渡しです。」なんて
mirko


ISD条項が司法主権の売り渡し云々で違法だと言うなら、交渉中で未定なものなどではなく、まずは締結済みのEPAやIIAなどに対して違憲だとして批判する方が筋ででしょう。
ISD条項が違法だと声高に叫んでいるにもかかわらず、何十年の歴史もある締結済みの多くのISD条項は無視して、将来締結されるかもしれないものだけを批判する行為は非常に不思議です。

26人の部下を持つ上司が、全員が同じことをやっているにもかかわらず、25人は批判せずに特定の1人だけはそれを理由にボロクソに言うようなものです。
しかもその1人は採用候補でまだ決まっていない人です。この批判のロジックに正当性はあるのでしょうか。不思議です。



食料の世界では「卵は一つの籠に盛れ」?

TPP交渉参加で、農業/食料問題がまた注目を集めています。
そこで場末のブロガーとしては流行に乗って食料安全保障に触れてみます。

【参考資料】


投資の世界には「卵は一つの籠に盛るな」という格言があります。多くの資産に分散しておくことで特定の資産(例えば日本株)がダメでも他の資産(例えば外国株式など)のパフォーマンスが良ければ救われるという発想です。投資先を分散することでリスクを低減します。

また、工業の世界でも特定のサプライヤーに依存している企業が、災害(タイの洪水や東日本大震災)でサプライヤーがやられて生産計画を見直したこともありました。

何かあった時、「リスクを回避するには一か所に集中するのではなく複数に分散させろ」とはよく言われることです。

この考えを食料の世界に当てはめると「食料の安定確保のためには調達先を一部の地域や国に依存するのではなく分散した方がいい。」となりそうです。

しかし、日本の食料安全保障を語る中では分散ではなく集中を推進する声が多くあります
農水省はFOOD ACTION NIPPONという活動を推進して、なるべく国産品を食べることを推奨していますし、自給率100%の米は素晴らしい食料として褒め称えられていますし、米輸入への抵抗は非常に強い。

高い自給率及び国産への集中は食料安全保障になるのでしょうか?

米と言えば、思い出すのは1993年の米不足騒動です。米不作によって店頭からコメが消え、慌ててタイやアメリカからコメを輸入する事態にもなりました。我が家でもタイ米などを買ってきて調理して…という記憶があります。自給率ほぼ100%の米でこのような騒ぎが起きています。

一方、米食が減る中で人気を集めつつある小麦の自給率は10%程度ですが、特に小麦危機といって騒がれたこともありません。

一つの作物で比較することが適切かという点はありますが、以下のような構図です。
 ・米 = 自給率が100%近い/ほぼ輸入無し = 食料危機有り
 ・小麦 = 自給率が低い/ほぼ輸入 = 食料危機無し


卵を一つの籠に盛ることが食料安全保障につながるのかは、冷静にもっと深く議論されてほしいですね。


・過去エントリー:食料自給率向上は無意味



TPPを巡る議論の勘違い

TPPを巡っていろいろな議論があるが、多くの間違いや勘違いが流布されているように思う。
そこで、ど素人ですが私が調べた限りでそれらの誤りへのツッコミを書いてみます。調べたもののメモ書きのようなものです。
(内容の正しさは保証しかねます。正しさの判断は皆様にお任せします)

●「GDP比でアメリカと日本で9割超なので実質日米FTA。アメリカの狙いは日本」

アメリカから輸出先としての日本のシェアは4.7%(605億ドル)。小国のシンガポールが2.3%を占めており、シンガポールの2倍強程度に過ぎない。そして、日本以外のTPP交渉参加国の合計は日本より大きい。
また、アメリカの輸入先として日本のシェアは1205億ドルで6.3%。マレーシアが259億ドル、シンガポールが174億ドル、ベトナムが142億ドル。これにオーストラリアやニュージーランドなども加わる。
アメリカの輸出を見ても輸入を見ても日本のシェアは単独国としては最大だが、日米FTAと言えるようなものではない。
GDP比で語ることは極端に日米以外の国を過小評価することになる。
⇒アメリカがTPPを対日本の道具として考えているというのは、日本の自意識過剰と言えそう。


●「TPPは例外なき自由化である」

これは最近払拭されつつありますが、TPPは完全なる自由化ではありません。
アメリカがニュージーランドを恐れて乳製品を除外したがっていますし、P4時点でもブルネイがアルコール・酒を除外しているように例外は十分に考えられます。


●「日本が交渉に参加するのにアメリカ議会の承認が必要。アメリカの言うなりだ。」

11月2日の報道で騒がれだしたが、「日本の参加には米議会の承認が必要」について誤った情報が広まっています。
TPPへの参加に関してはP4のArticle20.6に参加国の承認が必要と定義されています。
アメリカはTPAが失効し、通商交渉権は議会が持つために議会の承認が必要。日本の参加が承認されるには同様に他参加国の承認も必要なわけで、アメリカが支配しているわけではありません。
日本で全く取り上げられていないブルネイやチリが承認しなくても参加できないのです。


●「TPPを脱退するには他国の承認が必要」

TPP参加へ承認が必要というニュースが出たせいか、脱退にも承認が必要ではないかという意見が出ています。しかし、脱退には他国の承認は必要ない。これはP4のArticle20.8に規定されている。


●米韓FTAのISD条項(毒素条項)

TPPとは直接関係無いが参考となりそうな米韓FTAが話題となっています。特にISD条項が注目です。
拙い英語力で米韓FTAの条文を読んでみましたが、ISD条項は「韓国のみに適応」と規定されていません。米韓FTA上では、アメリカ政府を韓国の投資家が訴えることができます。
ただし、アメリカ側の履行法(United States-Korea Free Trade Agreement Implementation Act)にて米韓FTAと米国内法の関係が記載されており、そこでアメリカ外の人はアメリカ政府を訴えることができないと書かれていることが問題なのです。
⇒このやり方がTPPで通用するのであれば、日本側もアメリカと同様な制度を設けることでISD条項をかわせそうです。

【参考:アメリカと日本における条約の位置づけ】
・アメリカ合衆国憲法第6条
この憲法の確定以前に契約されたすべての債務及び締結されたすべての約定は、連合規約の下におけると同じく、この憲法の下においても合衆国に対して有効である。
この憲法、これに準拠して制定される合衆国の法律、及び合衆国の権限をもってすでに締結され、また将来締結されるすべての条約は、国の最高の法規である。これによって各州の裁判官は、各州憲法又は州法の中に反対の規定がある場合でも、これに拘束される。
・日本国憲法第98条
この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。


アメリカの輸出統計(国・地域別)
TPP条文(P4)
「大統領貿易促進権限(Trade Promotion Authority)」について (外務省)
アメリカ合衆国憲法 Article 6
米韓FTA本文
United States-Korea Free Trade Agreement Implementation Act



TPP交渉参加反対の怪

野田総理がTPP交渉への参加を言及してからまたTPPが賑やかになってきました。
このTPP交渉への参加へ反対する意見が多いのですが、不思議です。

交渉は抜けられる

あくまでTPP交渉への参加です。
中国や韓国はいなくてもアジア数カ国とアメリカやオーストラリアが参加する外交上の大きなテーマです。その交渉の場に参加する権利を自ら放棄していいのでしょうか?

交渉の場ですから、さまざまな交渉をすればいいのです。その結果、日本にとって不利益だと思えばTPPを批准しなければよい。
日本はアメリカやアジア諸国にとって美味しいターゲットで日本市場こそがTPPの最大の目的だという反対派の意見もあります。各国がそれほど日本に参加して欲しいと思っているのであれば、日本がわがままを言うチャンスです。
「市場を開放しろって?ただではできないなー?この条文を追加して、あの条文は削除してよ。」と言ってもいいはずです。

交渉の結果、日本にとって有利な条件を引き出せなければ抜ければいいのです。
参加の意思を示しながらも決裂はあっていい話です。


交渉力の弱さは理由にならない

これに対しては「日本の交渉力が弱いから、参加すれば食い物にされる」という意見もあるでしょう。しかし、この考え方ではいずれにしても日本は食いモノにされます。
日本は交渉が下手だから外交交渉はしないとなれば、それこそ日本の危機です。
G8で日本の存在感はありません。オバマ、メルケル、サルコジなどの前にかすんでおり、彼らが多くのルールを決めています。日本は追従するだけのようなところです。だからと言ってG8から離脱するべきではないでしょう。その場にいることに十分な意義があります。

「交渉をしながらも決裂」は良くあることです。交渉に参加したら契約締結・条約批准が当然かのような考えを日本人が持っているのだとしたら、その発想が危険です。


アメリカも無茶はできない

TPPはアメリカが一方的に要求を突きつけてきた従来の日米交渉とも違います。
相互的な条約なのでアメリカも下手なことはできません。日本以上の世界一の市場ですから、下手をすればアメリカの市場を食われます。
アメリカは食料自給率が高いことなどから、日本やアメリカがTPPを批准した場合、日本は輸入が増えて、アメリカは増えないという意見もあります。しかし、話はそう簡単ではありません。
欧米では補助金漬け農業がトレンドであり、アメリカの農業には莫大な補助金が支払われています。

TPPを批准して関税が撤廃されても日本の農業を守るには補助金を出せばいいのです。
TPP反対派からは補助金さえも撤廃されるかのような議論がありますが、そうなればアメリカの農業もピンチです。補助金が無くなったアメリカの農産物の価格は上がって日本に輸出するどころではなくなるかもしれませんし、食料輸入国になるかもしれません。
また、アメリカはポスト中国の1国であるベトナムからの工業製品の輸入をも覚悟する必要があります。日系企業も多く東南アジアに進出しており、日本企業からの輸入が増える可能性すらあります。


TPPは積極的に参加して駆け引きをして不利ならば離脱こそが外交の王道ではないでしょうか。



私の著書 - ズボラ投資
「毎月10分のチェックで1000万増やす! 庶民のためのズボラ投資」
連絡先
私への連絡は下記メールアドレスまでお願いします
tsurao@gmail.com

tsuraolife_banner_s

follow us in feedly

にほんブログ村 株ブログ 投資信託へ


Recent Comments
ブログ内記事検索
PR
お勧め銀行・証券会社
■証券会社■
○SBI証券

○セゾン投信


■銀行■
○住信SBIネット銀行


■401k(確定拠出年金)■
○SBI証券
タグ
Archives