吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



GDP

債務のGDP比は国家のデフォルトリスクの指標になる?

「日本の国家債務残高はGDP比170%」

このように国家債務残高のGDP比が財政危機の指標としてよく使われます。
しかし、この「債務残高のGDP比」はそれほど当てになるのでしょうか?

≪1990年〜2007年のデフォルト国家とその債務残高/GDP比≫
・メキシコ : 47%
・タイ : 58%
・インドネシア : 83%
・韓国 : 40%
・マレーシア : 52%
・ロシア : 59%
・ブラジル : N/A
・トルコ : 83%
・アルゼンチン : 60%

≪現在の主要国の債務残高/GDP比≫
・日本 : 220%
・ギリシャ : 143%
・イタリア : 119%
・シンガポール : 97%
・アメリカ : 93%
・ポルトガル : 93%
・カナダ : 84%
・ドイツ : 83%
・フランス : 82%
・イギリス : 80%
・スペイン : 60%
・インド : 69%
ブラジル : 66%
・スイス : 55%
・フィンランド : 48%
・アルゼンチン : 48%
・ノルウェー : 45%
・デンマーク : 44%
・インドネシア : 43%
・スウェーデン : 40%
・南アフリカ : 36%
・韓国 : 31%
・オーストラリア : 22%
・中国 : 18%
・ロシア : 9.9%
・チリ : 8.8%
・エストニア : 6.6%
・香港 : 4.8%
・アルジェリア : 1.2%
 -参考:TradingEconomics.com (2011年10月17日確認)


過去の国家デフォルトの債務残高/GDP比では、それほど債務の比率は高くありません。60%程度でも破綻しています。

債務残高/GDP比が国家デフォルト指標」という仮定で過去のデフォルト水準と今の国を比べてみます。
シンガポール、カナダ、ドイツあたりはかなり危機的な水準のようです。北欧諸国もかつて債務危機を起こしたメキシコや韓国の水準ですから危険なようです。そして、アルゼンチン、インドネシア、韓国あたりは優秀、ロシアやチリは10%を切っており非常に優秀です。

・・・このデータを見ると、国家のデフォルトを語る時に債務残高/GDP比を振り回すことがふさわしく見えません。債務残高/GDP比も国家デフォルトの要因なのかもしれませんが、説明力はそれほど強くなさそうです。

「日本の債務残高/GDP比が●●●%になった。デフォルト危機だ」のような主張は疑いたいですね。
債務残高/GDP比が高くても全く構わないとは思いませんが、国家のデフォルトを考える時には対外債務など別の指標が適しているのではないでしょうか。







増税、補助金の削減、政府支出圧縮などはGDP対比の債務を増やす

『日経ビジネス 2011年5月23日号』のNouriel Roubini氏とStephen Mihm氏の寄稿から
個人貯蓄を増大させるために民間消費と公的支出を抑制すること及び、民間と公的債務を減らすために緊縮財政を実施することも、選択肢に入らない。民間部門は消費を控えて貯蓄を増やすことはできるが、これは「ケインズの倹約のパラドックス」として知られている現象をただちに引き起こす。
 つまり、生産賞が低下し、GDP対比での債務が上昇する、というものである。IMFなどの最近の研究によれば、増税、補助金の削減、非効率的なものも含めた政府支出の圧縮は、短期的には成長を妨げ、債務問題を悪化させると見られている。
(欧州各国の債務の増加がテーマ)

政府の債務問題(債務の対GDP比)と倹約のパラドックスを結び付けて考えたことはありませんでしたが、確かにその通りです。政府が支出を減らせば、GDPは落ち込みます。そうすると「債務/GDP」で表される債務の対GDP比は、分母のGDPが小さくなるので上昇します。
さらに非効率なものも含めた政府支出の圧縮でも債務問題を悪化させるというのは面白い示唆です。

日本も債務の対GDP比が大きくなっており、財政危機が叫ばれています。これに対応しようとする場合にはこの倹約のパラドックスによる債務/GDPの増加には注意が必要でしょう。
これを意識せずに単純に「支出を圧縮すれば債務が減るから債務の対GDP比が減るはず」という思惑でいると面倒なことになりそうです。



「日本のGDP世界3位転落」の本質は中国に抜かれたことにあらず

先日、中国のGDPが日本を抜き世界第2位になったということが大きく報じられました。
多くの報道において(特に見出しは)「中国が日本を抜き第2位。日本は3位に転落」という論調になっています。これは読者をひきつける為には正しい切り口です。

しかし、問題の本質はそこではないでしょう。国別GDPの順位が上下することはそれほど問題ではありません。

過去のGDP2位と3位の入れ替わりは1968年です。日本がドイツを抜いて2位になりました。その後日本は成長を続けドイツとの差を広げてきました。IMFによると2009年時点の日本とドイツの名目GDPは下記の通り、日本は約1.5倍の差をつけています。
 ・日本:5,068.89億ドル
 ・ドイツ:3,338.68億ドル

このように日本はヨーロッパ諸国を追い抜き突き放してきました。しかし、この順位や差にどれほどの意味があるのか。
日本人が幸せでドイツ人が不幸なのか?
日本経済とドイツ経済はどちらが健全か?
日本経済とドイツ経済はどちらが競争優位か?

国別GDP順位はあまり関係ありません。

日本が直面している問題は中国に追い抜かれたことではありません。中国などが成長する中で日本の成長が停滞していることそのものが問題なのです。

ドイツは日本に追い抜かれ1.5倍もの差をつけられました。GDPの順位や差が国の経済の状況を反映するならば、1968年から1.5倍もの差をつけた日本が経済的に困っていればドイツは悲惨なはずです。しかし、現実は違います。GDPの順位や差は大きな問題ではありません。
重要なのは成長があるかです。



経済見通しの精度って

各国政府、各シンクタンク、世界銀行、IMFなどが経済見通しを出しており、よく「○年のGDP成長率の予想を上方修正」のような話を聞きます。

どれだけあてになるのでしょう?少し気になったので2006年以降のIMFの経済予想のデータを見てみました。
参考元はIMFのPublicationsにあるWorld Economic Outlook Reports

●世界経済見通し
IMF_WEO_World

●先進国見通し
IMF_WEO_Advanced

●新興国見通し
IMF_WEO_Emerging


予想通りな結果ですが、見事に後追いです。
最近の急激な景気悪化には後手に回るように下方修正の連続。そして、2009年3月近辺の株価の底以降の回復を受けての度重なる上方修正です。



私の著書 - ズボラ投資
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