吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



食料安全保障

食料の世界では「卵は一つの籠に盛れ」?

TPP交渉参加で、農業/食料問題がまた注目を集めています。
そこで場末のブロガーとしては流行に乗って食料安全保障に触れてみます。

【参考資料】


投資の世界には「卵は一つの籠に盛るな」という格言があります。多くの資産に分散しておくことで特定の資産(例えば日本株)がダメでも他の資産(例えば外国株式など)のパフォーマンスが良ければ救われるという発想です。投資先を分散することでリスクを低減します。

また、工業の世界でも特定のサプライヤーに依存している企業が、災害(タイの洪水や東日本大震災)でサプライヤーがやられて生産計画を見直したこともありました。

何かあった時、「リスクを回避するには一か所に集中するのではなく複数に分散させろ」とはよく言われることです。

この考えを食料の世界に当てはめると「食料の安定確保のためには調達先を一部の地域や国に依存するのではなく分散した方がいい。」となりそうです。

しかし、日本の食料安全保障を語る中では分散ではなく集中を推進する声が多くあります
農水省はFOOD ACTION NIPPONという活動を推進して、なるべく国産品を食べることを推奨していますし、自給率100%の米は素晴らしい食料として褒め称えられていますし、米輸入への抵抗は非常に強い。

高い自給率及び国産への集中は食料安全保障になるのでしょうか?

米と言えば、思い出すのは1993年の米不足騒動です。米不作によって店頭からコメが消え、慌ててタイやアメリカからコメを輸入する事態にもなりました。我が家でもタイ米などを買ってきて調理して…という記憶があります。自給率ほぼ100%の米でこのような騒ぎが起きています。

一方、米食が減る中で人気を集めつつある小麦の自給率は10%程度ですが、特に小麦危機といって騒がれたこともありません。

一つの作物で比較することが適切かという点はありますが、以下のような構図です。
 ・米 = 自給率が100%近い/ほぼ輸入無し = 食料危機有り
 ・小麦 = 自給率が低い/ほぼ輸入 = 食料危機無し


卵を一つの籠に盛ることが食料安全保障につながるのかは、冷静にもっと深く議論されてほしいですね。


・過去エントリー:食料自給率向上は無意味







食料自給率向上は無意味

●参考資料:


厚生労働省が煽っている「食料自給率向上」は意味がありません。特に食糧安全保障には何の役にも立ちません。意味があるとすれば一部の人の既得権の維持と古き良き日本への懐古のノスタルジーでしょう。

そもそも食料自給率問題とは何なのだろうか。
厚生労働省の旗振りの元に動いているFood Action Nipponという組織があり、ここに「日本の食料自給率問題とは」というページがあります。以下のような問題が述べられています。

1. 世界的な水資源の消費やCO2排出量増加
2. 日本の農業や食糧供給基盤の衰退
3. 今、世界は食料価格高騰の時代へ
4. もしも世界的な食料危機がおきた場合、日本は食糧を輸入できなくなる

全くロジカルでない主張です。

1. 世界的な水資源の消費やCO2排出量増加
「食糧を輸入する=食料を生産する=水資源を間接的に使う⇒だから水資源を消費している」というロジックですが、日本国内で作っても水資源は消費します。屁理屈にもなっていません。
CO2は輸入にかかる運送で排出量が増えると言っても微々たる物です。この理屈だと国内でも各都道府県で各自生産しろとでもいうのか?

2. 日本の農業や食糧供給基盤の衰退
食糧は日本から供給される必要性はありません。外国産の小麦でいいのです。

3. 今、世界は食料価格高騰の時代へ
確かに食料価格が上がっていますが、だから何です?
日本では外国からの輸入品に数百%の関税をかけている食料品が多数あります。海外の食料価格が高騰したといってもまだまだ日本産に比べれば遥かに安い水準です。
「食料価格高騰などの影響は、私たちの生活にもすでに大きな影を落とし始めています」と書いていますが、これは、安い外国産に高い関税をかけて、高い関税のかかった外国産or生産コストが高い国産しか買えないように国が価格統制をしているという要因が強い。輸入品を減らして生産コストが高い国産を買うことになれば、国内の食料価格は高騰しかねない。

4. もしも世界的な食料危機がおきた場合、日本は食糧を輸入できなくなる
参考の『「食料自給率」の罠』にも書いてありますが、食糧危機はまず起きません。世界の人口が増えているといいますが食料生産力には余剰がたくさんあり、生産力は年々向上しています。
さらに食料生産力はあっても輸送や保管インフラがないために腐らせているケースもあります。これらが向上すれば簡単には食糧危機は起こりません。



このように食料自給率向上は無意味なのですが、ここからが一番の本題である「食料自給率向上が日本の食糧安全保障の役に立つのか?」です。

世界的な食糧危機が起こるのは世界的な未曾有な大災害などでしょう。
その時に日本だけが世界的危機を免れていると考えるのは楽観的過ぎます。日本の自給率を高めていても日本も一緒に大災害の影響を受けていれば食糧安全保障にはなりません。
また、特定の国が自国が食糧難になると輸出制限して日本に食料が入ってこなくなるという意見もありますが現実的ではありません。『「食料自給率」の罠』で川島氏も書いているように、食糧輸出を制限したのは元から食料生産力が低い国です。政治的な理由を除いて、不作が叫ばれるような時であっても食料輸出国が輸出を止めるようなことはありません。だから、これまでオーストラリアで大干ばつのようなニュースがあっても日本人は食料に困りませんでした。多少食料価格が上がる程度です。

太平洋戦争時と終戦直後の食糧難を例示する人もいますがこれも無意味です。
もし、日本が再び同じような状況になれば、その時に輸入が止まるのは食料に限りません。石油、石炭、鉄鉱石・・・といろいろなモノの輸入が同時に止まるでしょう。燃料無しでは国内の生産活動そのものが止まります。農業用機械が動きません。農業や漁業は継続できません。電力にも事欠けば貯蔵施設を維持できるでしょうか。ガソリン不足で輸送トラックが止まれば、東北などで生産した農作物は東京に届けられることはなくなります。
結局、日本が孤立した時には食料生産から輸送までが停止します。
平時に食料自給率が100%であっても食糧安全保障になりえません。異常事態への対応方法として、平時の食料自給率向上などは無意味なのです。


食糧安全保障で有効な方法は次の2つでしょう。
 (1)日本で農業を支えるエネルギーなどの基盤から自前で揃える
 (2)日本が世界から孤立しないようにする

1番は新エネルギーやリサイクルなどでまかなえるかもしれませんが未知数です。
現時点で現実的なのは2番でしょう。太平洋戦争で食糧難になったのは政治的理由で国際的に孤立したからです。これを避ければ食糧難になることはまずありません。
最大の食糧安全保障は「政治的に諸外国と上手くやっていきましょう」という国家安全保障の基本と同じです。決して食料自給率向上などではないはずです。


P.S. (1)
川島氏の著書ではこちらもお勧め


P.S. (2)
最後に:英国政府曰く
The self-sufficiency ratio is a poor, even misleading, indicator of food security.
These conclusions suggest that a discourse centred on 'UK food security' or 'UK self-sufficiency' is fundamentally misplaced and unbalanced.



私の著書 - ズボラ投資
「毎月10分のチェックで1000万増やす! 庶民のためのズボラ投資」
連絡先
私への連絡は下記メールアドレスまでお願いします
tsurao@gmail.com

tsuraolife_banner_s

follow us in feedly

にほんブログ村 株ブログ 投資信託へ


Recent Comments
ブログ内記事検索
PR
お勧め銀行・証券会社
■証券会社■
○SBI証券

○セゾン投信


■銀行■
○住信SBIネット銀行


■401k(確定拠出年金)■
○SBI証券
タグ
Archives