吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



雇用

続・無理をしてまで日本国内雇用を守る必要は無いと思ふ

無理をしてまで日本国内雇用を守る必要は無いと思ふにhideさんからコメントをいただきました。

以下がhideさんのコメントです。
海外出張に平社員でもビジネスクラスのチケットを用意してくれるような会社に勤めている人ならではの発想ですね。
マリ―アントワネットのパンがだめならケーキほどではないのでしょうけど、自分は安全地帯にいてこその目線と思ってしまいます。円高の状況でどれだけ困っている人がでているか考えたことがありますか?
私自身は輸入業者ですから今の円高は追い風です。それでも日本の今後を考えると心配になります。
管理人さんがおっしゃるように変化に対応できる人ばかりではないのですよ。そういう出来ない人は管理人さんの会社にはいないのでしょうけれど。

これに対して少し補足をさせていただきます。
まず、先のエントリーは「国が国内雇用を守るべきか」という問いかけに始まり、「国内雇用だけではなく、国外でも日本人が働けるように働きかけるべき」という結論を出しています。
円高の状況で困っている人がたくさん出てしまっているからこそ、国が変化へ対応できるように支援すべきと考えています。

製造業の輸出産業はレッドオーシャンです。
かつて日本は先進諸国の同業他社と戦いました。初めはトヨタの車がGMにはるかに及ばなかったように品質で劣っていました。しかし、その後の追いつけ追い越せの努力の結果、安いのに高品質という日本ブランドを確立し、その後は価格が高くなっても世界一という地位を勝ち取りました。
しかし、今では日本がかつてのアメリカです。韓国や中国のような近隣諸国の製造業がかつての日本のように急激な勢いで成長してきています。少し前には安かろう悪かろうだった中国製も今では十分な品質を持っています。
このようなことを考えると、かつては日本の発展を大いに支えてきた製造業はレッドオーシャンであり、日本が武器としていた競争優位性が失われています。
さて、その分野に資源を投入すべきでしょうか?

企業が自社の中心事業であったが競争優位性が失われつつある分野に資源を投入すべきでしょうか?その事業部で働いている社員の雇用はこれで守れるでしょうか?
それよりはその企業が持っていて将来性があると思える事業に資源を移して、現在の中心事業部で働いている人材をそちらに移すべきではないでしょうか。

私が国に期待したいのもこれです。


(やり方があまりにも露骨で方々から非難の声も上がっていますが、)一つ参考になるのは中国の事例です。
アフリカ諸国へ中国がODAで支援し、事業は中国企業が引き受けて労働者も中国からやってくる中国人というやり方です。中国でも稼げなくて困っている人がいます。そのような人がアフリカで仕事にありつくことができます。このやり方だと国内に需要が無くても国外で雇用な場を作ることができるのです。
しかも、これをある程度大きな規模で長期的に行うとさらなる波及効果があります。そこで働く中国人たちを目当てに自力でアフリカにわたる中国人も出てきます。
昔であれば、独力でアフリカに行くのは困難であり、行ったとしても成功は困難でした。しかし、現地に多くの同国人がいて彼らの助けを借りることができます。彼らに対する商売のメドが立ちます。そうすることで正のスパイラルが発生します。中国のやり方を完全にまねるべきではないですが、十分に示唆を与えてくれます。

今の日本では、一般の日本人が独力で海外に出て仕事を見つけるのはハードルが高すぎます。hideさんも言われているように、そんな大きな変化に自力で対応するのは難しいという人が多数でしょう。言語の壁、文化の壁、仕事が見つかるかの不安、etc。
だから、政府がそれを助けるべきなのです。自分で海を渡って仕事を見つけるのが難しいのだから政府が支援すればいいのです。これだけで仕事を見つけられないという不安は除去できます。

このようにレッドオーシャンでの消耗戦は避けて、新たなブルーオーシャンに飛び出す手助けをしてあげることは政府として意義のあることではないでしょうか?
また、このブルーオーシャン戦略によって外に出る人が増えることによって国内にとどまる人にもメリットが生まれます。今までは多くの人数で限られた国内雇用を争っていましたが、数も減るので競争が弱まります。

国内で現在の産業で雇用を確保するのが大変ならば、外部や違う産業で雇用を確保しようとするのは、戦略の王道だと思うのですが・・・







無理をしてまで日本国内雇用を守る必要は無いと思ふ

・円高が進んで日本の輸出企業が為替でダメージを受けている
・企業が日本から出て行くと国内の雇用が減ってしまう

⇒日本の雇用を守るために何とかするぞ



このような意見を聞きます。確かにある程度はやるべきだと思います。

しかし、何が何でもやるべきかと言うと疑問を感じます。自然の流れに反して無理やり通貨安に持っていくことが正しいことなのでしょうか?2007年まではデフレにも関わらず通貨安という好条件が重なって輸出企業が史上最高益をたたき出しましたが、それを目指すべきでしょうか?
雇用を守る企業に湯水のごとく補助金をつけてまで雇用を確保させるべきなのでしょうか?

これはNoだと思います。
そんなことを言うと「輸出企業の支援をやめてどうするんだ?内需だって増やそうと思って増やせるものではない。国内の雇用が失われるぞ」という反論もあるでしょう。

でも、それでもいいと思います。

日本という国家が成すべきことは何でしょうか?
世界平和とか大きな夢も語れますが、国の存在意義の根本は国民の幸せ、日本の場合は日本国民の幸せでは無いでしょうか。(一部の国のように支配者層の幸せが最優先という国もあります)

日本国民の幸せを目的とした時に、日本国内の雇用を守ることは必ずしも目的に達する道とは限りません。Out of Boxの考え方をしてみましょう。


質問:日本国民が幸せになるためには日本国内に雇用がある必要はあるのか?
この質問を少し変えると「国内で国民の雇用を確保できない国の国民は不幸か?」とも言えます。
私はNoだと思います。日本国民は日本国内で雇用されなくても幸せになれます。従来の枠を取り払って考えれば、国内に雇用が無いならば、海外での雇用を増やせばいいのです。

「今後の輸出企業は厳しい。内需も簡単には増えない。日本人1億2000万人を支える雇用は国内で確保できない。」
いいではないですか。日本では1億人を支える雇用しかなくても残り2000万人が海外の雇用で支えれていて幸せならいいでしょう。世界には自国で自国民の雇用を確保できない国はあります。その国は自国内で雇用を生み出せない限り国民が不幸かというとそんなことはありません。他国で就職して幸せになっている人もたくさんいます。

日本人がアメリカで就職すればいいのです。カナダで就職すればいいのです。ヨーロッパで就職すればいいのです。シンガポールで・・・
強制移住させる必要はありませんし、そんな権限は国にはありません。ただ、日本人が海外で働きやすくなるようにしましょう。自国で雇用が無い国の国民は他国で働くためのスキルを身につけます。そして、国内で雇用されるより幸せな人生を得る人がたくさんにいます。国家はそのスキルアップの支援及び諸外国との交流の上での障壁を取り除くことに尽力すればいいのです。
アメリカで雇用されて幸せに暮らしているインド人はいます。最近だと日本に来ている人もいます。私の家の周りにも多くのインド人がいます。けっこういい給与はもらえています。
日本人も彼らと同じく海外でで雇用されるようになればいいのです。もちろん、これで全員を救えるわけではありません。雇用されたいと思えば全員が雇用されるわけでもありません。また、国内にとどまりたい人もいるでしょう。だから内需拡大にも努めるべきです。「輸出企業を取るか、内需を取るか」のような二者択一ではありません。
輸出企業を支援するわけではないが、特別邪魔をするわけでもない。内需も増やそうとする。国外での雇用を増やそうとする。全方位的に日本人が幸せになれる道を探すべきだと言うことです。これらは共存可能です。全部やっても全てが救えるわけではありませんが、それでも効果はあります。
日本国内の輸出産業だけに特化してそこで雇用を確保しようとする、旧来の古き良き時代を維持しようとすることが正しいことなのでしょうか?
昔で言えば、日本では政府がさまざまな支援を駆使して石炭から石油という流れに抗って炭鉱労働者を守るべきだったでしょうか?日本政府がさまざまな支援を駆使してコモディティ製造業は先進国から新興国へという流れに抗って製造業の輸出企業を守るべきでしょうか?
いきなり全部を切るようなハードランディングはやる必要はありませんが、そこまでして古き良き時代を守るべきではないでしょう。強いストレスは伴いますが、環境の変化に合わせて変わるべきではないでしょうか。


日本での雇用が減れば税収が減る、という意見もありますが問題ありません。海外で暮らしている人が増えれば、支出も減ります。仮に6000万人が日本で暮らして、6000万人が海外で暮らしていれば、日本国内の支出は6000万人分です。

もう、日本は国内だけで日本人を満足させるだけの雇用を確保できない国になりつつあるのです。それを受け入れて、日本人が他国でも満足のいく雇用を確保できるような政策も平行的に行うべきではないのでしょうか?日本の労働・雇用問題はそこまで来ていると思います。



日本のモノづくりには未来があり、日本のモノづくりには未来が無い

日本の国際競争力、6位浮上…技術革新に高評価 (Yomiuri Online)
世界経済フォーラムの評価を鵜呑みにするわけにはいきませんが、日本の国際競争力は高い順位を獲得してます。


民間部門では「製造物の付加価値」「流通支配力」「生産工程の先進性」「顧客重視」などが1位だった。「技術革新力」「特許数」などでも2位となるなど、日本の「ものづくり」の底力が高く評価された。
(日経新聞)

日経新聞によると、この高い順位は上記のように日本の製造業の素晴らしさが認められた結果の順位とのことです。さすがは"ものづくりの国"日本。
日本のモノづくりの技術は日本の武器であり将来にわたっても磨き続けていくべき分野かと思います。これは日本の強い武器になり、日本のモノづくりには未来があります。


その一方で日本のモノづくりには未来が無いと感じています。それは国内雇用という意味でのモノづくりです。

日本企業の研究開発部門で先進的な技術が生み出されても、雇用を増やすとは言えません。それを日本の工場で生産するとは限らないからです。
中国製の品質も上がっています。タイはアジアのデトロイトと言われるようにもなっています。これらの国に革新的な製品を生み出す力はまだありませんが、作り上げる技術力はつけてきました。今後は他のアジアやアフリカの国々もそういう力をつけてくるでしょう。そうなった時にモノづくりそのものを日本で行う理由がなくなります。
生産コストが安い他国で作れるなら生産はそちらに回すのが企業の選択です。製造そのものに先進的なスキルが必要な製品は日本で製造するかもしれませんが、これは多くの雇用は生み出せません。
日本が誇る技術企業のコマツは世界各地に工場を持ち、従業員の半分以上は外国人だったかと思います。日産も外国人比率が50%程度。これが日本が誇るモノづくりを生かした経営方針です。


この流れを無視して旧来からの製造分野を日本に残そうとするのは経済の摂理に反しています。
日本は製造業が牽引エンジンとなって経済発展を遂げました。その過程で多くの人が製造業の現場で働くことになりました。今でも製造業の現場で働く人はたくさんいます。日本政府として彼らの雇用政策を放棄してはいけません。しかし、その雇用対策は製造業の現場を守ることとはイコールではないはずです。自然の流れに反して今を温存しようとしてもそれは無理です。

今のままの環境で今の仕事を続けられて雇用を守れるなら最高です。これに期待したい気持ちも分かります。しかし、現実問題としてそれが厳しい以上、変革をせざるを得ないでしょう。
生産工程の先進化や技術革新などはこだわり続けるべき日本のモノづくりでしょうが、雇用という意味のモノづくりにこだわるのは間違いかと思います。


P.S.
国際経済フォーラムのレポートはこちら。
The Global Competitiveness Report 2010-2011



[メモ/JETROのレポート] 『欧州の雇用制度一覧』、『欧州フロンティア諸国の投資環境比較』 by JETRO

欧州各国の雇用制度一覧
欧州フロンティア諸国の投資環境比較

これらは興味深い資料ですので、メモ。

労働問題などを語る時によく「欧米は〜」などと書かれていることは多いが、実際にその内容が示されていることは少ないので、特に上の資料は使えます。
下の資料もなかなか情報が出てこない欧州のフロンティア諸国の環境の概要を知る基礎資料としては非常に使えそうです。



以上、メモでした。



らしくなってきた - 「4月の完全失業率5.0% 有効求人は0.46倍、10年ぶり低水準」

2009年4月1日の『有効求人倍率0.59倍。6年ぶりの水準。 』というエントリーの中で、「しかし、(有効求人倍率は)6年ぶりの水準ということですから、6年前はこれくらいの状況だったんですよね。そう考えると実はまだまだ大したことはないとも言えるのかもしれません。」と言っておりましたが、以下のニュースが出ました。


4月の完全失業率5.0% 有効求人は0.46倍、10年ぶり低水準(NIKKEI NET)
 総務省が29日発表した4月の完全失業率(季節調整値)は5.0%となり、前月に比べ0.2ポイント上昇した。5%台となるのは、2003年11月(5.1%)以来、約5年半ぶり。
 厚生労働省が同日朝発表した4月の有効求人倍率(季節調整値)は0.46倍となり、前月比0.06ポイント低下した。1999年6月以来、約10年ぶりの低水準。

完全失業率はまだ2003年11月以来程度ですが、有効求人倍率はついに就職氷河期の谷の時期の0.5倍割れに突入しました。これで雇用の方も麻生総理やマスコミが「100年に1度の経済危機」というような状況になってきましたね。


「今春入社できて幸運」7割超、「今年の就活だったらダメだったかも」4割――新社会人意識調査(Business Media 誠)
 2008年から続く世界的不況については、「今春入社できたことを幸運と思う(そう思う+どちらかといえば)」が75%に達した。
なお今年でも「入社できたと思う(できたと思う+おそらく)」は49%だった一方、「できなかったと思う(おそらく+できなかったと思う)」も40%となった。
マクロミルの調査で、今春に入社した新社会人の意識調査でこのように「今春でラッキーだった」が75%、「今年が就職活動だったら就職できなかった」が40%という回答もまあ妥当と思えるような雇用情勢の悪化です。


今秋からの就職活動を控えている(と思う)弟の就職活動はどうなるんでしょう。



とはいえ、先輩の代からして就職氷河期真っ只中で、自分も就職氷河期真っ只中だった吊られた男としては、体感的には就職活動が厳しいのは当たり前という意識です。実体験としてはバブルを知りませんからね・・・



私の著書 - ズボラ投資
「毎月10分のチェックで1000万増やす! 庶民のためのズボラ投資」
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