吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



通貨選択型

3,4階建て投信とは、投資先の価値が上がっても儲からないのに価値が下がると損する商品

option

3階建てや4階建てと呼ばれるような投資信託があります。
これらの商品は複雑であり、投資信託ブログ等で分かりやすく解説されていることもありますが、元が難しいだけに分かりやすく説明されても分かりにくい。(私も説明を書いてみましたが、うまくまとまらないので没にした経緯があります)

そこで、少し変化球で説明してみます。

解説の例として登場いただくのは4階建て投資信託の代表ともいえるアルファ・カルテットです。
アルファ・カルテットとは【当ファンドはわが国の株式への投資に加え、「高金利通貨戦略」と「株式カバードコール戦略」および「通貨カバードコール戦略」を組み合わせることで、インカムゲインとオプションプレミアムの確保、ならびに中長期的な信託財産の成長を目指します。】というファンドです。

アルファ・カルテットが4階建てと言われるのは以下の4要素からです。
    1. 株式の配当
    2. 高金利通貨
    3. 株式のコールオプションの売り
    4. 通貨コールオプションの売り

ここで通常の解説なら一つ一つを丁寧に説明していくのでしょうが、少し変化球で解説します。

株式のコールオプションの売り = 株価が上がると損する仕組み

株式のコールオプションの売りというのは「株価が上がると損し、株価が下がっても儲からない」という仕組みです。

株式のコールオプションの売りを図式化すると以下のようになります。
アルファカルテット 4階建て投信 コールオプション


これだけ見ると「上がったら損するし、下がっても儲からないしダメじゃないか!!」となります。ですから、コールオプションを売った人は、コールオプションを売ったお金を貰えます。このオプション料がプレミアムなどと呼ばれているものになります。
オプション料が儲けの上限となり、株価が上がるほど青天井で損をするというのがこの正体です。
ですので、オプション料も含めた損益は以下のグラフの緑線になります。
アルファカルテット 4階建て投信 コールオプション

アルファ・カルテット 4階建て投信 コールオプション


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通貨選択型投信の販売規制を強化?

金融庁、「通貨選択型」投信の販売規制を強化(ロイター)
金融庁は、金融機関が「通貨選択型」投資信託を販売する際の規制を強化する。関係筋が5日、明らかにした。投資家が商品のリスクを理解しているかどうか書面での確認を金融機関に求める。監督方針に沿った措置で、年内にも監督指針の改正案を取りまとめる。

金融機関が販売する際、運用する債権などの価格変動だけでなく為替変動のリスクについても投資家が理解しているかを書面で確認させる。


金融庁が通貨選択型投信販売の規制強化に乗り出しました。
具体的には金融庁の「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)の公表についてにある『「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)(新旧対照表)』に書かれています。

これを見ても、根本の欠陥を直さないとあまり意味は無いという印象。

・顧客カードに基づいて販売せよ
・通貨選択型ファンドの商品・リスク特性を理解したという確認書を取れ
・相場が大きく変動したら情報提供したり、レポートを出したりしろ
・元本の安全性を重視する顧客に通貨選択型を売る時は、管理職の承認など慎重に販売管理しろ


通貨選択型について要約するとこんなところです。(他にも「分配金は元本の払戻しになることもあると説明せよ」とももある。こんなことを分かっておらずアタフタする顧客が多いということでしょうが・・・)

あまり実効性があるとは思えません。
「管理職の承認など慎重な販売管理をしろ」と言っていますが、そもそも元本を重視する顧客に対して巷にあふれている通貨選択型を売ること自体が疑問です。(円への為替ヘッジならいざ知らず)
本来なら顧客がリスクを取ってもかまわないと宗旨替えをしてから売るべきものでしょう。元本の安全性を重視する人には上司が承認しても売ってはダメですよ。


また、顧客カードに従って・・・・という指針はむなしく響きます。
日本証券業界が定めている顧客カードの項目は以下の通りです。

【項目】
1 氏名又は名称
2 住所又は所在地及び連絡先
3 生年月日(顧客が自然人の場合に限る。次号において同じ。)
4 職業
5 投資目的
6 資産の状況
7 投資経験の有無
8 取引の種類
9 顧客となった動機
10 その他各協会員において必要と認める事項

サンプルのフォーマットは協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則の21ページ目にありますが、ほとんど価値は無さそうです。
このようなカードに従ったところで通貨選択型が適切かはほとんどわからないでしょう。

「確認書を取れ」はただのアリバイ作りです。

情報提供やレポート発行は「一時的に外的要因で混乱しましたが、ファンダメンタルは依然として良好で長期時な見通しは変わりません。」のようなポジショントークが繰り広げられるだけでしょう。もしくは"より良い商品"への乗り換えを勧めるか。


そんなことよりも、「高金利通貨が必ずしも有利とは限りません。高金利通貨はその分だけ通貨安になりやすいという購買力/金利平価説という有力な説もあります。」のような情報提供をせよと言った方が効果的だと思います。そのようなことがわかった上でもレアルが有利と思えばレアルの通貨選択型を買えばいい。
うん、実現すれば効果はありそうですが、実現することは難しそうです。



2011年12月時点で最も複雑な投資信託

最も複雑な仕組みを持っている公募投資信託はどのようなものでしょう?
スノーボードのハーフパイプでどんどん難易度の高い技が増えていくかのように、投資信託も複雑な商品が増えています。

投資対象は先進国の株式や債券のみならず、商品や新興国債券やCBなどにも拡大しました。
為替ヘッジプレミアムを利用した通貨選択型という2階建ての仕組みも生まれました。
そして、今ではオプションの売りを使ったカバード・コール戦略を組み合わせた商品まで出ています。

1,2年前ならば2階建て商品で勝負になったのですが、今ではレベルが上がって3階建てでないと勝負にならないレベルです。
そんな中で、私が選ぶ現時点の候補は以下4つ。


●エントリーNo.1 : 野村グローバル高配当株プレミアム
新技開発といえば何をおいても野村AMです。野村AMから候補を出さないわけにはいきません。その野村AMを代表する最高難易度商品として、このファンドをとりあげたい。
「高配当株」+「通貨選択型」+「カバード・コール戦略」としっかりと3階建ての基準はクリアしています。
さらにこのファンドには凄い点があります。それは為替ヘッジプレミアムをかける通貨を、ファンドマネージャが何十の通貨の中から5つを選ぶということです。
ファンドマネージャが選択し、選択通貨の候補が多い(野村AMの資料によると2011年8月末時点で、以下の30通貨)というのは際立った特徴です。
[対象通貨] カナダ、米国、ブラジル、チリ、コロンビア、メキシコ、ペルー、中国、韓国、香港、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、日本、タイ、チェコ、ポーランド、デンマーク、ロシア、ユーロ圏、スウェーデン、ハンガリー、英国、オーストラリア、ニュージーランド、イスラエル、南アフリカ、トルコ


●エントリーNo.2 : ダイワ米国株ストラテジーα(通貨選択型)
野村に続くのはダイワでしょう。ダイワからはNo1の野村のファンドと類似コンセプトのこのファンド。
「米国割安株」+「通貨選択型」+「カバード・コール戦略」という3階建てです。
こちらは野村の商品より王道です。為替ヘッジ通貨選択は投資家自身が選びますし、円・豪ドル・レアル・米ドルの4通貨と選択肢も少なくなっています。
特徴といえるのかはわかりませんが、ドイツ銀行グループが独自に開発したクロッキーモデルなる分析手法で割安と判断される40銘柄を選定するそうです。


●エントリーNo.3 : 楽天USリート・トリプルエンジン
ネット証券で人気の3階建て商品です。楽天証券に限らずSBI証券でも売上ランキングの上位に顔を出してきます。
「米国REIT」+「通貨選択型」+「カバード・コール戦略」の3階建てです。3階建ての特徴は先に語った2つのファンドと同じです。
このファンドの場合は、米国REIT部分がリンク債を使って投資している点がちょっとしたポイントでしょうか。


●エントリーNo.4 : T&D通貨トレード新興国社債
先の3つは全て3階建てファンドでしたが、このファンドは通貨選択型の2階建てです。しかし、ここで候補に出すくらいですので普通の2階建てとはわけが違います。
≪ここが凄いよT&D通貨トレード新興国社債≫
 1. 投資アセットが新興国の社債
 2. 米ドルとユーロはブルだけではなくベアも選択可能
まず、新興国の社債というアセットがすでに高難易度です。高配当株、米国株、US REITなどとはわけが違います。
次に通貨選択型でベアがあるのは初めてではないでしょうか?
2階建てではありますが、それぞれのフロアに際立った特徴があるファンドです。



これたのファンドを見ていても更なる進化が考えられます。野村とT&Dのファンドの考え方を組み合わせると面白いことになりそうです。
「新興国社債の劣後債を買い、豪ドル・ルーブル・ルピーをロングし、ペソ・レアルをショートして、何かのオプションを売る」なんてファンドもできそうです。こうなってくると、どんな値動きをするのかもはやよく分かりません。

2011年はまだ残っていますが、2012年にはどんなファンドが出てくるのでしょうか。



試される通貨選択型投信

2010年、2011年は通貨選択型投信が大人気でした。
その中でも高金利通貨筆頭のブラジルレアルは1番人気です。また、資源国通貨もブラジルレアルほどの高金利ではないものの複数通貨&高金利ということで大人気でした。

しかし、ここ最近はブラジルレアルも資源国通貨も大きく円高方向に振れています。
対米ドルも円高気味ですが、そのスピードは鈍化しています。
むしろ、今まで踏みとどまっていたブラジルレアルなどが安くなっています。少し前まで対円で50円台だったところが40円を割り込みました。
今までの異常なまでのレアルの強さを見ると妥当な調整とも言えそうですが、そういう考えが頭にないとパニックかもしれません。


最近のテーマ型投信である通貨選択型投信が試される時期がきたのでしょうか?

「ワールドカップやオリンピックを控えてこれからの発展が期待されるブラジル」
「中国など新興国の発展があり資源高が期待される中、豊富な資源があることでこれからの発展が期待されるブラジル」


このように通貨選択型でレアルに投資することは中長期的に高い成果が期待できるかのように宣伝されてきました。さて、どうなることでしょう?



「レアルヘッジ」 元本を分配原資にロンダリングする魅惑の錬金術

為替ヘッジで、一方が有利で一方が不利ということはありません。どちらもフェアな条件で取引します。

高金利通貨は高金利であるぶんだけ為替レートで不利になっています(高金利ほど為替レートは下落しやすい)。だから、高金利通貨でヘッジしても期待リターンは増えません。高金利のインカム-為替のマイナスで±0です。

ブラジルレアルでヘッジをしても期待リターンは同じ(コスト等除く)なのに、どうして高金利通貨を対象とした通貨選択型がたくさん開発されて売られているのでしょうか?

分配金原資を確保するためです。

投資信託では顧客から預かった金をそのまま分配金として出すことは禁じられています。分配金は収益金からしか出すことができません。
普通に日本株を運用して利益を出せるかというとそう簡単ではありません。そこに登場した錬金術が通貨選択型の高金利通貨ヘッジです。

高金利通貨でヘッジすると、FXのスワップのように、ほぼ金利差分をヘッジプレミアムとしてファンドの収益に入ってきます。もちろんそのぶんだけ為替レートでは不利になってトータルでのリターンは±0かもしれませんが、それは関係ありません。
ここが投資信託の会計上の不思議で、損益を合算せずにヘッジプレミアムを分配にまわすことができるのです。

日本国新興国株に投資していて、損益±0の時、非ヘッジ型ではほとんど分配できません。しかし、ブラジルレアルでヘッジしておけば元本の一部をヘッジプレミアムという名目にロンダリングしたので、分配できます。

高分配金でお客を釣る分配型ファンドにとっては、安定的に分配原資を確保することは至上命題です。
そこで、投資信託を販売(運用)する側は、多くの分配原資を獲得するために、ジャンク債も活用します。
ジャンク債は利回りが高い代わりにデフォルト確率も高くなっています。デフォルト分の損失を無視して、受け取った高金利分を分配原資に組み込めます。
そこに高金利通貨のヘッジプレミアムも上乗せするのです。
新興国社債+高金利通貨という2つのエンジンで元本をどんどん分配金原資にロンダリングしているのです。

これが通貨選択型ファンドが取り入れている元本を分配原資にロンダリングする錬金術です。



私の著書 - ズボラ投資
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