吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



毎月分配

毎月分配型投信は筋が悪い理由 〜投信に余計な機能を持たせちゃいけない

毎月分配型投信の是非についてはいろいろな意見があります。そして、私は否定派です。

ちょっと考えてみてください。(法律上OKかという話は無視してください)

 (A) tsurao厳選ジャパン株式ファンド
 (B) tsurao厳選ジャパン株式ファンド(毎月積立型)


上記の2ファンドは共に「tsurao厳選ジャパン株式マザーファンド」に投資するファンドです。
違いはBには強制積立機能が備わっていることです。
Bファンドを購入すると解約するまで強制的に毎月tsurao厳選ジャパン株式ファンド(毎月積立型)を購入させられます。また、その金額は運用会社が運用実績に応じて決定します。


さて、どちらかのファンドを買うとしたら、どちらを買いたいですか?
(B) tsurao厳選ジャパン株式ファンド(毎月積立型)を選ぶ人はほとんどいないんじゃないでしょうか?
追加投資するか、いくら追加投資するかは投資家が自分に合った額を決めればいい話です。
自動積立したければ、販売会社が提供している積立購入サービスを利用すればいい話です。
その毎月の買付機能をファンドの中に持たせる必要は全くありませんし、運用会社が勝手にその金額を決めるという仕様もいただけません。

上の話の強制的な買付機能強制的な払い戻し機能に置き換えてみてください。


運用会社が勝手に決める強制払い戻し機能なんて必要ですか?

いくら払い戻す(解約する)かは投資家が決めればいいことです。勝手に運用会社に決められてもたまりません。
また、自動的に払い戻しをしたければ、販売会社の自動解約サービスを利用すればいい話です。

運用会社の裁量で勝手に毎月追加購入させられたり、勝手に毎月払い戻しされたりするファンドなどいりません。


ファンドは投資信託に求められる基本的な運用を行っていればよく、いくら購入するか/払い戻すかといった投資信託の外にある投資家が決めるべき事項はファンドの中に持たせる必要はありません。
それは自動積立や自動解約サービスのように販売会社側で各顧客向けに提供すればいいサービスです。


どこの販売会社もそういう自動解約機能を取り扱わないから仕方なく投資信託の中に包含させたというのならまだしも、そうではなく投資家の選択肢を狭めて自由な裁量を奪うだけの毎月強制買付/毎月強制払戻(毎月分配)投信は非常に筋が悪い


最近はさすがに分配金の多さをアピールするだけの売り方は減ってきましたが、分配金健全性のように安定した分配金余力があるから大丈夫そうとか目先を変えて、結局は毎月分配型投信を売ろうとする勢力がいますが止めてほしいものです。







「毎月分配投信の信託報酬は高いのか」をデータで比較

毎月分配型のファンドの信託報酬は高い傾向がある。なぜなら分配金の支払いにはコストがかかるので、それが信託報酬引き上げ要因になっているから」という話があります。

実際の投資信託のデータを使って比較してみます。

同じようなことはKapokさんもやっております。参考にしてください。→Kapokさんの比較

 
Kapokさんもやっているのに、何故自らやったのかというと…アセットの違いという要因を考慮して少し違う比較をしてみたかったからです。

リターンやリスクでもそうですが、平均的な信託報酬の水準はアセットによって違います。
一般的に国内より先進国、先進国より新興国の方が信託報酬が高くなります。また、普通株式/国債/高格付債よりもハイ・イールド債や複雑な証券の方が信託報酬が高くなります。

「毎月分配のエマージング株式ファンド10本」と「1年決算の国内債券ファンド10本」を比べて後者の方が信託報酬が低くても「1年決算の方が信託報酬は安い」という結論には結びつけられません。この信託報酬の差はエマージング株式と国内債券というアセットの違いと考えられます。


今回の比較ではデータをモーニングスターから貰うこともあり、モーニングスターで採用しているアセットカテゴリーごとで分けて比較してみることにします。

○ソースデータは2012年11月8日時点のモーニングスターに登録されているファンド
○ファンドタイプのカテゴリーは以下の4つを選択
  ・国内株式型
  ・国内債券型
  ・国際株式型
  ・国際債券型
○決算頻度は「毎月」と「1年ごと」
○DC区分のファンド、SMA区分のファンド、ETFを除外
○分析は35のサブカテゴリー(国内株式大型グロース等)で実施
○コストは「信託報酬等(税込)」の数字を利用 ←追記


まずは4つの大カテゴリで分けた場合、毎月分配ファンドと1年決算のアセット分布に大きな違いがあります。国際債券がほとんどを占める毎月分配と国内株式(を含め株式)が多い1年決算。だいぶ、ファンド構成が違います。
これはアセット毎に分けて分析する価値があるというものです。
bunpai_asset



まずは大カテゴリで信託報酬の平均/中央値を計算した結果が下記。
bunpai_Houshu_asset

平均値/中央値共に、国際株式クラスは毎月分配の方が信託報酬が低く、他3つは1年決算の方が安くなっています。(国際株式については後でまた触れます)。



大カテゴリで比較しましたが、大カテゴリでもまだ偏りがあります(例えば国際債券カテゴリーでは毎月分配型は「ハイイールド債」が多く、1年決算は「グローバル・除く日本」のように)。このようなアセットの違いが信託報酬に影響を与えている可能性も十分にありますので、次にサブカテゴリ単位で分析します。
世間一般でリスク、リターン、信託報酬などを比較する時には大体この単位で評価するのが一般的でしょう。

しかし、サブカテゴリーまで細分化すると、「毎月決算の国内株式中型グロース = 0本」のようにファンドが存在しないカテゴリーもあります(サブカテゴリーにどちらかのファンドが存在しなかったのが11カテゴリー)。ファンドがあっても数本のように統計データとして扱うには非常に心もとない本数しかないカテゴリーも多数ありました。
そこで、35カテゴリーのうち「毎月分配」「1年決算」共に10本以上あるカテゴリーのみを抜き出して信託報酬の平均/中央値を比較したのが以下の表です。
bunpai_Houshu_category


詳しくは表で比較してほしいのですが、敢えて下記にコメントを付けます。

●国内株式
「国内株式型大型ブレンド」しか残らなかったのですが、面白い結果です。
平均は1年決算の方が0.21%安いが中央値では毎月分配の方が0.32%安いという大きな逆転現象が起きています。
これは毎月分配型には2.31%というべらぼうに高い2ファンドがあって平均値を引き上げる一方で、1.15%〜1.16%と比較的低い水準の日経225通貨選択型が2シリーズで9本(4本+5本)入っており、この9本の後ろの2つが中央値に引っかかって中央値は低く抑えられています(1.16%の次は1.4%)。

●国内債券
これは両者ともにファンドの本数が少なく、そのほとんどが中長期債だったため、中長期債カテゴリーのみです。毎月分配に至っては17ファンド中17ファンド全てが中長期債カテゴリーです。
ここは1年決算の方が安くなっています。元々の信託報酬が低い分、大きな絶対値の差はありませんが、0.50%前後という水準で0.17%/0.06%というのはそれなりの差です。

●国際株式
国際株式型の各サブカテゴリーは4カテゴリーが残りました。ここは評価が難しい。
共に50を超えるというサンプル数で比較できた「国際株式型グローバル・含む日本」などはほぼ誤差の範囲ともいえる互角の水準です。
その一方で、「国際株式型グローバル・除く日本」は1年決算が大きく差をつけており、残りの2つではやや毎月分配の方が安いか…というところです。

●国際債券
ここは3カテゴリー残りましたが、全てで1年決算が圧倒です。毎月決算ファンドの約80%を占める国際債券ですが、信託報酬は高めな傾向のようです。



【総括】
基本4資産における「毎月分配vs1年決算」という比較をしてみました。これを見る限りは毎月分配の方が安い場合がありますが、やや1年決算の方が信託報酬が安く設定されている傾向があると言えそうです。(もちろん、運用スタイルの違いなどの要因もあるので、これで決定的なデータということは言えませんが、データ上は)

さらに深掘りするならば、2か月/3か月毎はサンプル数が少なすぎて比較に使いにくい(特に2か月はほとんどない)ですが半年決算を加えても面白い。基本4資産で500ファンド超と何とか使えそうな本数はありそうです。



【おまけ】 ←これが一番の大作
10本以下だったために比較対象から漏れたカテゴリーも含めた35カテゴリーの結果を以下に貼っておきます。これを見ると面白い分布の違いが見えてきます。
Bunpai_Houshu_fulllist

例えば、BRICsとしてもてはやされた4か国の株式に投資するファンドを見ると圧倒的に1年決算で設定されています。
これらBRICsに投資するファンドの信託報酬は1年決算の国際株式型ファンドの信託報酬平均より高くなっており、これが国際株式型で毎月分配型の方が安くなる一因ともなっています。
また、国際債券の分布も面白い。「グローバル・含む日本」となると毎月分配は92本に対して、1年決算は2本しかありません。「グローバル・除く日本」になると毎月分配は88本、1年決算が31本となっているにもかかわらずです。



投資信託の自動解約サービス

先のエントリーで投資信託の自動解約サービスに触れました。
そこで、今の日本の証券会社で提供されている投資信託の自動解約サービスについて簡単に紹介します。

●野村證券 : 定時受取りサービス (公式ページはこちら)
●SMBC日興証券 : 定期引出サービス (公式ページはこちら)
野村證券、日興証券共に
 ・換金月は毎月偶数月奇数月から選択できます
 ・金額指定口数指定から選択できます
毎月も隔月も選べ、金額指定も口数単位も選べるので、非常に使い勝手が良い仕組みです。この仕組みそのものは非常に素晴らしいものです。
しかし、対象銘柄に制限があります。
野村証券が12銘柄、SMBC日興証券が11銘柄の取り扱いです。どんなに素晴らしい制度でも対象商品が無いようでは宝の持ち腐れです。
これが拡大されることに期待もしたいですが・・・その前にネット証券が同様のサービスをより多くの投資信託に適用してくれることにも期待したい。


●ありがとう投信 : ライフサポートサービス (公式ページはこちら)
 ・換金月は指定できます
 ・解約方法は金額指定のみです
ありがとう投信の取り扱いファンドはありがとうファンドだけなので、対象商品は1本限りですが、100%のカバー率とも言えます。
なお、ありがとう投信のライフサポートサービスの少し変わった制限として、サービスを利用できるのは「満60歳以上」もしくは「障がい者」に限られます。


この自動解約サービスが広まれば、毎月分配型ファンドを駆逐が駆逐されるかもしれません。
分配型ファンドは無分配型ファンドと投資効率を比較されるよりも自動解約サービスの導入の方が脅威ではないでしょうか。なんせ、今の制度下では、顧客の立場から考えれば自動解約サービスは毎月分配型より全てにおいて優れています。
しかし、売り手側が困るのでなかなか広まらないでしょうね。



「レアルヘッジ」 元本を分配原資にロンダリングする魅惑の錬金術

為替ヘッジで、一方が有利で一方が不利ということはありません。どちらもフェアな条件で取引します。

高金利通貨は高金利であるぶんだけ為替レートで不利になっています(高金利ほど為替レートは下落しやすい)。だから、高金利通貨でヘッジしても期待リターンは増えません。高金利のインカム-為替のマイナスで±0です。

ブラジルレアルでヘッジをしても期待リターンは同じ(コスト等除く)なのに、どうして高金利通貨を対象とした通貨選択型がたくさん開発されて売られているのでしょうか?

分配金原資を確保するためです。

投資信託では顧客から預かった金をそのまま分配金として出すことは禁じられています。分配金は収益金からしか出すことができません。
普通に日本株を運用して利益を出せるかというとそう簡単ではありません。そこに登場した錬金術が通貨選択型の高金利通貨ヘッジです。

高金利通貨でヘッジすると、FXのスワップのように、ほぼ金利差分をヘッジプレミアムとしてファンドの収益に入ってきます。もちろんそのぶんだけ為替レートでは不利になってトータルでのリターンは±0かもしれませんが、それは関係ありません。
ここが投資信託の会計上の不思議で、損益を合算せずにヘッジプレミアムを分配にまわすことができるのです。

日本国新興国株に投資していて、損益±0の時、非ヘッジ型ではほとんど分配できません。しかし、ブラジルレアルでヘッジしておけば元本の一部をヘッジプレミアムという名目にロンダリングしたので、分配できます。

高分配金でお客を釣る分配型ファンドにとっては、安定的に分配原資を確保することは至上命題です。
そこで、投資信託を販売(運用)する側は、多くの分配原資を獲得するために、ジャンク債も活用します。
ジャンク債は利回りが高い代わりにデフォルト確率も高くなっています。デフォルト分の損失を無視して、受け取った高金利分を分配原資に組み込めます。
そこに高金利通貨のヘッジプレミアムも上乗せするのです。
新興国社債+高金利通貨という2つのエンジンで元本をどんどん分配金原資にロンダリングしているのです。

これが通貨選択型ファンドが取り入れている元本を分配原資にロンダリングする錬金術です。



(今の)毎月分配型ファンドの何が悪いか

・毎月分配型の投資信託は人気があります(良く売れています)
・毎月分配型の投資信託は投資信託マニア達から悪い仕組みだと非難されています


そんな毎月分配型投資信託ですが、私は今の毎月分配型ファンドには問題があると考えています。それについてつらつらと。


(1)資産運用の非効率性という構造上の問題
まず、多くの毎月分配型投信否定派が言うように、毎月分配という仕組みそのものが資産運用を非効率にする構造を抱えています。
毎月分配は銀行預金の利子のようなものではなく資産の取り崩しであり、これが非効率です。分配金という形で投資家の手元にお金が渡されますが、これは無分配で毎月解約しても全く同じです。(譲渡所得か配当所得かの違いはありますが、本質に違いはありません)

もし、毎月分配型投信が無分配型より有利でも不利でもないというのであれば、毎月解約しても有利でも不利でもないということになります。そんなことはありません。毎月一定額を解約することが資産運用において不利にならないというのはおかしな話です。それをうなら分かりますが、投資の場に残すのであれば、間違いなく非効率になります。
期待リターンが0で再投資コストが0なら話は別ですが、一般的に株式や債券の期待リターンはプラスです。


(2)今の毎月分配型ファンドは高コスト
これは毎月分配型という仕組みには直接関係ありません。しかし、今の毎月分配型ファンドを見渡すと、毎月分配型ファンドは高コストです。
例えば、先進国債券に投資するファンドを見てみます。
決算が年1or2回でほとんど分配しない方針のファンドを見ると、eMAXISやCMAMのように信託報酬が0.5%、0.6%台というファンドがあります。
しかし、毎月分配型ファンドを見ると、『三菱UFJ 世界国債インデックスファンド(毎月)』の0.79%が最低です。(ETFでは日興AMから低コストな毎月分配ETFがあります)
毎月分配型ファンドの中で人気の商品を見ても信託報酬が高いものが多い。ここには、毎月分配という餌で高い信託報酬を取ろうという売り手側の思惑が見え隠れします。
売り手側が信託報酬の安い毎月分配型投信を作れば解決する問題ですが、毎月分配を餌に高い報酬を分捕ろうと考えているうちは解決しなさそうです。


毎月分配という仕組みがお得ではないという勘違いはいきなりは無くせないかもしれません。しかし、「毎月分配のボッタクりを止めるには、低コストの毎月分配型投信を出して、コストを訴求するのが有効ではないだろうか」なんて考えてもいます。
STAM、eMAXIS、CMAMなどは何の面白みもないコア資産での低コストインデックスファンドで頑張っています。私も応援しています。しかし、なかなか資産が集まりません。それよりも短中期的には、低コストの毎月分配ファンドを出すのも資金獲得には面白そうに思うのですが、ダメでしょうか?

「XYZ新興国債券(毎月分配型)」
人気の新興国債券ファンドで待望の低コストな投資信託が登場!!
あなたは投資信託の保有期間中に支払っているコストを気にしていますか?投資信託は保有しているだけで毎日「信託報酬」という名の手数料を支払っています。

(1)当社のXYZ新興国債券(毎月分配型):信託報酬0.6%(税抜)
(2)A社の新興国債券投資ファンド(毎月分配型):信託報酬1.5%(税抜)

このファンドに100万円投資した場合、1年間で、当社のファンドの場合は6300円(税込)、A社のファンドの場合は15750円(税込)の信託報酬を支払うことになります(元本に変動が無い場合)。1年間で1万円弱も支払う手数料が異なります。
あなたは100万円あたりで1万円弱高い手数料を毎年支払いますか?それとも・・・


いくつか問題もありそうな表現がありますが、このようなコンセプトの商品設計はどうでしょう?

いきなり「低コストのなるべく分配が少ないファンドが効率的でいい」なんていってもポイントが低コストと少分配に分かれてしまい訴求力が弱いのかもしれません。
まずは投資教育その1として、信託報酬というコストを意識させるのも手かもしれません。そして、信託報酬というコストが十分に意識された後から「毎月分配or無分配」というステップを踏んだ方がゴールへの到達が早いかもしれません。

それに、資産形成世代に向けて無分配低コストファンドを提供してくれるのは嬉しいのですが、今度は資産取り崩し世代を軽視している気がします。定期的に資産を取り崩したい彼らに対して低コストファンドを提供してあげても良いはずです。低コストファンドを自分で必要なだけ取り崩せという意見もありますが、「手動買付は面倒だから自動で買える積立をしましょう」なんて自動積立を推奨している輩がそれを言うのはれは一方的な意見です。しかも資金を取り崩しのは高齢者が多いはずですから、若者は自動サービスで高齢者はマニュアルというのも酷い話です。
自分で解約する人がもいてもいいでしょうが、自動で取り崩す分配金や自動解約機能をもっと提供してあげてもいいはずです。



私の著書 - ズボラ投資
「毎月10分のチェックで1000万増やす! 庶民のためのズボラ投資」
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私への連絡は下記メールアドレスまでお願いします
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