吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



格付

国家の格付は有用?

格付け会社は国家(国債)への格付けも行っています。

S&Pがアメリカの格付けをAAAから引き下げた件はニュースになりました。
日本最大のグロソブは投資するソブリン債の基準に格付を利用しています。

そんな格付ですが、どれほど役に立つのか?

2011年8月と少し古い記事ですが、以下のWall Street Journalの記事は興味深い
格付け会社、国債デフォルトをほとんど予想できず=WSJ分析
今回の分析で、ソブリン債格付けに関しては、ある国が債務不履行を起こすかどうか、格付けがほとんど予想に役立っていないことがわかった。格付け会社が特に予想を誤りがちなのは、ソブリン債がデフォルトする前の12カ月間、つまり投資家が最もガイダンスを必要としているときだ。
S&Pの格付け対象だったソブリン債のデフォルトは1975年以来15件あったが、同社はうち12件について、デフォルト1年前にシングルB以上の格付けを付与していた。同社はこうしたケースの80%について、1年以内にデフォルトする確率を低くみていたことになる。S&Pは、シングルB格付けのソブリン債が1年以内にデフォルトする確率について、歴史的には平均2%にすぎないとしている。
同様に、ムーディーズ・インベスターズ・サービスの格付けから1年以内にデフォルトした13政府のうち、11政府はB以上の格付けだった。うち3政府に与えられた「Ba」(ダブルBに相当)は、1年以内にデフォルトする確率が0.77%とされている。

記事中にもありますが、企業の格付けはある程度信頼できる精度ですが、国家に関する格付けは怪しい感じです。

国家の破綻に関しては、データが少ないこともあり、格付け会社もノウハウがありません。企業評価のノウハウはありますが、いろいろな意味で国家は企業と異なります。
その際たるものは通貨の発行権を持つことでしょう。企業は自分でお金を刷ることはできませんが、国家(+中央銀行)は可能です。また政治リスクも大きく、企業の評価モデルがそのまま通用しません。

同じ会社が発行する格付けなので、つい同一視しがちですが、企業と国家の格付は別物だと思った方が良さそうです。







格付とデフォルト確率

さて、ここ数年は1年満期で利率1.8〜1.9%のSBI債が人気です。

とはいえ、社債は企業のリスクもあります。
元本保証がある同じSBIグループの住信SBIネット証券の1年定期預金がキャンペーンなどを含めると0.5%前後というところでしょうか。
元本保証の預金より1.3-1.4%高い利回りを得るために、企業のデフォルトリスクをそれをどう考えるべきか。格付から少し考察してみます(というか提案まで)。


SBIホールディングスはR&Iが格付けを発表しており、BBBとなっています。このR&IのBBBという格付がどれほどの安定度があるのでしょうか?

R&Iのサイトにはデフォルト実績関連データという情報があります。
ここでは2011年5月27日現在では、2010年6月29日現在のレポートが最新として掲載されています。

以下はその最新資料に書かれていた1年後のデフォルト確率を抜き出したものです。これを見ると面白い。2つの考え方ができそうです。
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10年全体を見ると2000年〜2005年の6年間はほとんどBBB格はデフォルトしていません。デフォルトしたのは2001年コホートの0.39%(1社)のみです。
この10年で単純平均すると、BBB格の1年後のデフォルト確率は0.32%というところです。(本当は全体のデフォルト数÷全体のサンプル数の方がいいのでしょうが面倒くさいので省略)
これだと、0.32%の確率で発生する1年後のデフォルトリスクで1.3-1.4%のプレミアムを引き受けていることになります。


もう1つの見かたとして、SBI債が発行されだした2006年からのデフォルト率を見てみます。2006年からのBBB格のデフォルト率は以下のようになります。
2006年:0.51%
2007年:0.00%
2008年:0.58%
2009年:1.73%

サンプル数の都合などもあるのでしょうが、0%〜1.73%とけっこうなばらつきがあり、2000年〜2005年と比較するとだいぶデフォルト率が上がっています。
4年間の数字を単純に平均すると1年後のデフォルト確率は0.705%です。0.705%の確率で発生する1年後のデフォルトリスクと1.3-1.4%のプレミアムをどう考えるか。この条件で考えると、危険な投資なにおいがします。


SBI債は人気の債券ですが、悪くはないが別に取り逃がしても惜しくはない債券というのが私の印象です。

格付けが必ずしも債券の信用度を正しく表しているわけではありせんが、このように考えてみるのは面白いところです。



格付は急速に進行中の事象では使えない

社債などはS&Pやムーディーズのような格付機関が、信用度を格付けしています。
しかし、急速に事態が進行しているときには格付は余り役立ちそうにありません。

今世間で注目の的の東京電力の格付を見てみます。

ムーティーズは3月18日に東京電力をA1へ引き下げ、3月31日にBaa1と引き下げています。4月23日現在ではこの水準のままで、4月になってからは変更がありません。
その4月の東京電力は、連日のように将来を左右するような情報が出ています。株式市場ではそのような情報をふまえて東電の株価は大きく上下しています。株価の上下は該当企業の信用度の変動に大きく影響されます。格付=信用度というならば、4月の株価のダイナミックな値動きを見れば、格付が変更されてもいいはずです。しかし、3月31日以降、格付は変更されていません。

マイカル倒産でマイカルに高い格付を与えたことで有名な日本格付研究所(JCR)は、今日時点でも東京電力の格付をAAとしています。(参考:日産がA、伊藤忠商事や東急電鉄はA+、三菱重工や三井不動産はAA-)

このように、急激に事態が進行する中で格付の信用度はかなり怪しくなります。
ある程度落ち着いた環境の中でゆっくりとその会社の信用度を測る場合には役に立っても、短期的な変化を評価することには向いていないのでしょう。格付は信用度を示す指標のひとつですが、万能ではなく、得意なパターンと苦手なパターンがあることも知っておいた方が良さそうです。



日米「AAA」企業数

日経新聞4月28日朝刊から

『日米「AAA」企業の変遷』(一目均衡)
 米ゼネラル・エレクトリック(GE)が先月、五十年以上保持した最上級格付け(AAA)を失った。
 米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)によると、GEの格下げで米国の非金融企業のAAAは一九八〇年の六十一社から五社(エクソンモービル、マイクロソフト、ADP、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ファイザー)に激減した。
 日本の格付け会社の草分けである三国事務所がAAAを与える日本企業は現在九社(信越化学工業、花王、武田薬品工業、ファナック、トヨタ自動車、ホンダ、キヤノン、大日本印刷、セブン&アイ・ホールディングス)で、八三年の二社(日立製作所、パナソニック)から大幅に増えている。

格付け機関の違いがありますが、非金融企業のAAAはアメリカでは5社のみで日本は9社ですか。基準の違いがあっても日本の方がAAA企業が多いというのは少し意外でした。


わずか5社のトリプルA企業(日経ビジネスオンライン)
 もう1社、米医薬品大手ファイザー(PFE)もトリプルA格付けを維持しているが、S&Pは1月26日、ファイザーが同業の米医薬品大手ワイス(WYE)買収の資金として225億ドル(約2兆2000億円)を借り入れると発表した後、ファイザーの格付けを見直す可能性があることを明らかにした。
しかも、アメリカは現在5社と言えども、ファイザーに関してはS&Pは引き下げを検討中とのことですし、フィッチなどはすでに格下げをしているので、実質4社!?

こんなにアメリカ企業のAAAは減っていたとは・・・
もっと多いと思っていました。ディズニーもウォールマートもP&GもAAAでは無いんですね。



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