「老後に必要なお金はXXXX円」
「老後までにYYYY円のお金を作る」


こんな話をよく聞きますが、名目価値でしょうか?実質価値でしょうか?


もし、名目価値で考えているなら問題になりかねません。


今30歳の人が60歳以降に欲しい金額を考えます。これは現在の価値相当での金額とします。

そして、そのお金の一部を変額年金保険(年金原資最低保証付き)で用意しようとしたとしましょう。
「全部で3000万円欲しいから、そのうちの1000万円は変額年金にしよう。年金原資最低保証は1000万円だから、1000万円はこれで良し」なんて考えたとします。

これは危険な考え方です。
仮に30年の平均インフレ率が2%だと、30年で物価は1.81倍になります。インフレ率を1%としても物価は1.35倍になります。それだけ実質価値は下がります。
インフレ率2%のケースでは、現時点で1000万円あればできたことが、60歳の時には1810万円必要になるのです。しかし、1000万円しか用意していませんので、いざ60歳になってみるとお金が足りないことになりかねません。



上では変額年金を取り上げましたが、投資信託・株式・債券・銀行預金等の運用でも同じです。

過去のデータから過去のアセットの期待リターンなどを算出して、そのリターンを前提にして運用目標額を試算している人はいるかと思います。ここで利用しているリターンは名目ですか?実質ですか?

日本において直近のデータを使っていれば、インフレ率がほぼ0のために名目リターン≒実質リターンとなり、名目で計算してもほとんど問題はありません。(データ数が少なすぎるという問題はあります)
しかし、ある程度長い期間をとった場合は、インフレ率が高い時に名目利回りは高くなり、通算での名目リターンと実質リターンは無視できないくらいに乖離します。

そんな名目リターンを実際リターンと勘違いして「老後までにYYYY円のお金を作る」と考えてしまうと、リスク資産の期待リターンを大幅に過大評価していることになり、目標とする生活を送れなくなります。


30年後の実質価値を分かっての上で名目の金額を掲げているならいいでしょう30年間のインフレ率を見通している人がいるとは思えませんが)。
実質リターン3%+想定リターン2%=名目リターン5%のように、想定インフレ率を設定して名目額を書いているならいいでしょう。
しかし、そのような考えが無く名目リターンを使って考えていると、大きな痛い目にあいそうです。