ここ数日、各所のブログにて、あるトピックについて、いくつかのコメントをさせていただきました。


そのトピックとは、以下のトピックです。
学力テスト、世帯年収で成績格差 小6調査、文科省公表(NIKKEI NET)

各新聞社の記事には文科省のどの専門家会議の話か書かれていなかったが、文科省で耳塚教授が所属している専門化検討会議を探すと『国学力・学習状況調査の分析・活用の推進に関する専門家検討会議』があった。
   *名簿
そこで、この専門家会議関連の調査なんだろうなと思ったのだが、ニュース記事が出た時点では、文科省のページにも調査結果は公表されていなかった。

そんな中、各ブログではその調査結果がアップされる前にさまざまな意見が書かれていた。(中には教育関係者などならば、調査結果をHP以外で入手されて読んでいた人もいるかもしれないし、元々ブログは速報性が大きいので当然とも言えるが)
それ自体はいいのだが、学力と経済格差を結び付けるかのような論調になっているブログの記述が極めて多かったのが非常に気になりました。

私がこの調査から受けた印象は全く違いました。学力と経済力に限っていえば、むしろ多くのブログ記事を書かれた方々が感じた印象と逆で、学力と経済力に関係はあるがその関係性は強くないと主張しているようにさえ感じます。
それを強く感じさせたのは、約4ページもわたる【(5)家庭環境と学力との関係についての総合分析】の最後を締めくくる以下のパラグラフ。
 ここでの重回帰分析は決定係数が低く、いずれのモデルもわずかしか学力の分散を説明できていないという点にも注目しておく必要があろう(決定係数が最大の国語A でも16%程度しか説明できていない)。これは、ここで投入された変数以外の「何か」が子どもの学力の大部分を規定していることを意味する。その「何か」に働きかけることによって家庭環境による学力差の克服に結びつくという可能性を示唆するものといえよう。むろん、それが何であるかは今後解明せねばならない課題であるが、ここでの分析から見る限り、世帯年収のみに学力が規定される割合はさほど大きくはないのかもしれない。
投入されたどの変数も学力差をあまり説明できないと言っています。経済力は統制の材料として使われていて16%が最大と言っていることから、このスコープには含まれていないようですが、それでも経済力の決定係数は高くない。
そして、最後の一文で明確に「世帯年収のみに学力が規定される割合はさほど大きくはないのかもしれない」と締めています。

さらに最後の【分析結果のまとめ】でも、「世帯年収の高い家庭ほど子どもは高学力である」と書いてありますが、それと同時に「保護者の子どもへの接し方や教育意識は子どもの学力と関係している」「保護者の普段の行動もまた子どもの学力と関係している」「世帯年収を考慮しても、保護者の行動と学力との関係は残る」ともあります。

上記のようなことなどを考えると、この調査では「学力差=親の経済格差」という短絡的な結論は導き出していないように思えてしまいます。


私も文部科学省のことは決して好きではなく、おかしなことがあれば異議をとなえさせてもらいます。でも、今回の件で文科省が言われなき非難(と私は感じる)を受けるのは何かおかしいと思うのです。非難するという結論ありきで内容は濡れ衣でもすり替えでも構わないと言うような(テレ朝の報道ステーションなどに代表される)やり口は嫌いです。
嫌いな人・モノ・組織でも正しいことをしたら好き嫌いは別にして認めたいのです。



To: 私がコメントした方々
挑戦的なコメントですみませんでした。
ただ、どうしても文科省が言われなき批判を受けるのは見逃せませんでした。そんなことで、各ブログにはいろいろコメントさせていただいた次第です。





本エントリーの副題の≪ソースの確認は?≫に戻ります。

いくつかのブログのエントリーを読ませていただいたのですが、文科省公表の資料へのリンクはありませんでした。文科省の資料が出る前にエントリーを書いた場合は当然リンクを貼ることはできませんが、それをフォローするような記事は見当たりませんでしたし、ソースの内容を踏まえての上での発言と思えるような記述は私が見た限りは見当たりませんでした。
皆さん、あまりソースは読まないのでしょうか・・・
これだけマスコミがマスゴミとまで揶揄されるような時代なのですから、マスコミの記事で判断せずにソースを当たる人がもう少し多くてもいいような気がするのですが・・・


文科省の発表資料はこちら