
積雪記録の観測史上最高を更新した地域が多数あります。甲府などでは大きな騒ぎになりました。
天下の上杉隆御大が山梨の大雪災害がぜんぜん報じてられていないとも書いていますが、今回の大雪でこのような「ちゃんと報道されていない。しっかり報道せよ。」という意見は散見されます。
※上杉隆大先生の立派な活躍はこちらなどをご参考に ⇒ 前代未聞の過去記事の一括訂正
しかし、これは「取材して放送すればいい」とそう単純な問題ではないでしょう。
以下に報道すべきか悩ましい理由を挙げてみます。
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投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。
公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は6日、2010年度の運用で2999億円の赤字が出たと発表した。
「がんワクチン臨床試験」をめぐる記事で朝日新聞が最も伝えたかったことは、薬事法の規制を受けない臨床試験には被験者保護の観点から改善すべき点があるということです。
記事で取り上げた臨床試験では、ワクチンを使った膵臓(すいぞう)がん患者で消化管出血が起き、輸血されました。入院期間が延び、医科研は「重篤な有害事象」として扱いましたが、医科研が提供した同種のワクチンで臨床試験をしている他の施設には情報を伝えていませんでした。
医科研によると、患者はその後、いったん退院しました。問題の根幹ではないので記事では詳述しませんでしたが、がんワクチンの臨床試験では必ず消化管出血が起きる、あるいは、命にかかわる副作用が出ると、報じようとしたわけではありません。
自分が治験・臨床試験の対象だったら、「副作用とは断定できないが消化管出血が起き、入院期間が延びた患者がいる」という情報は、参加を考える上で一つの重要な判断材料になります。病院外で家族とともに過ごせる貴重な日々が短くなるかも知れないからです。
現在の患者の利益を損なわず、新しい薬や治療を一刻も早く実用化するにはどうしたらいいか。その知恵が問われています。今回の報道がそのための重要な一石になると信じています。
東京大学医科学研究所(東京都港区)が開発したがんペプチドワクチンの臨床試験をめぐり、医科研付属病院で2008年、被験者に起きた消化管出血が「重篤な有害事象」と院内で報告されたのに、医科研が同種のペプチドを提供する他の病院に知らせていなかったことがわかった。医科研病院は消化管出血の恐れのある患者を被験者から外したが、他施設の被験者は知らされていなかった。
このペプチドは医薬品としては未承認で、医科研病院での臨床試験は主に安全性を確かめるためのものだった。こうした臨床試験では、被験者の安全や人権保護のため、予想されるリスクの十分な説明が必要だ。他施設の研究者は「患者に知らせるべき情報だ」と指摘している。
医科研ヒトゲノム解析センター長の中村祐輔教授(4月から国立がん研究センター研究所長を兼任)がペプチドを開発し、臨床試験は08年4月に医科研病院の治験審査委員会の承認を受け始まった。
朝日新聞の情報公開請求に対し開示された医科研病院の審査委の議事要旨などによると、開始から約半年後、膵臓(すいぞう)がんの被験者が消化管から出血、輸血治療を受けた。医科研病院はペプチドと出血との因果関係を否定できないとして、08年12月に同種のペプチドを使う9件の臨床試験で被験者を選ぶ基準を変更、消化管の大量出血の恐れがある患者を除くことにした。被験者の同意を得るための説明文書にも消化管出血が起きたことを追加したが、しばらくして臨床試験をすべて中止した。
開示資料などによると、同種のペプチドを使う臨床試験が少なくとも11の大学病院で行われ、そのすべてに医科研病院での消化管出血は伝えられていなかった。うち六つの国公立大学病院の試験計画書で、中村教授は研究協力者や共同研究者とされていたが、医科研病院の被験者選択基準変更後に始まった複数の試験でも計画書などに消化管出血に関する記載はなかった。
厚生労働省の「臨床研究に関する倫理指針」は「共同で臨床研究をする場合の他施設への重篤な有害事象の報告義務」を定めている。朝日新聞が今年5月下旬から中村教授と臨床試験実施時の山下直秀医科研病院長に取材を申し込んだところ、清木元治医科研所長名の文書(6月30日付と9月14日付)で「当該臨床試験は付属病院のみの単一施設で実施した臨床試験なので、指針で規定する『他の臨床研究機関と共同で臨床研究を実施する場合』には該当せず、他の臨床試験機関への報告義務を負いません」と答えた。
しかし、医科研は他施設にペプチドを提供し、中村教授が他施設の臨床試験の研究協力者などを務め、他施設から有害事象の情報を集めていた。国の先端医療開発特区では医科研はペプチドワクチン臨床試験の全体統括を担う。
厚労省は朝日新聞の取材に対し「早急に伝えるべきだ」と調査を始め、9月17日に中村教授らに事情を聴いた。医科研は翌日、消化管出血に言及した日本消化器病学会機関誌(電子版)に掲載前の論文のゲラ刷りを他施設に送った。論文は7月2日に投稿、9月25日付で掲載された。厚労省調査は今も続いている。
清木所長は論文での情報提供について「朝日新聞の取材を受けた施設から説明を求められているため、情報提供した」と東大広報室を通じて答えた。(編集委員・出河雅彦、論説委員・野呂雅之)