貿易赤字「陰の主役」は薬 輸入超過、10年前の5倍 (日本経済新聞)
日経新聞の記事によると「医薬品の輸入超過額が1兆3660億円で、2.5兆円の日本の貿易赤字の隠れた主役だそうです。
1兆3660億円÷2.5兆円と計算して「日本の貿易赤字に占める割合が50%超と巨額→主役」ということでしょうか。へー、凄い。
本当に医薬品の輸入は陰の主役と呼べるようなものなのでしょうか?
以下にJETROで公開されているデータを元に2011年の日本の貿易収支情報をまとめてみました。(通貨はドル)

輸出-輸入の貿易収支は320億ドル(約2兆5千億円)の貿易赤字となります。
そして、注目の医薬品は45億ドルの輸出に対し、216億ドルの輸入なので、差し引き171億ドル(1ドル=80円だと1370億円)の輸入超過です。
このデータを見ても確かに医薬品の輸入超過額は全体の貿易赤字額の1/2以上の数字です。
しかし、他の項目の数字を見ると違った光景が見えてきます。
非常にわかりやすいのが鉱物性燃料。何と鉱物性燃料は医薬品の約15倍の2577億ドルの輸入超過です。日本の貿易赤字全体額と対比すると798%です。
他を見ても、食料品は688億ドルと医薬品の4倍以上の輸入超過です。原材料も538億ドルの輸入超過と医薬品の3倍以上です。
他にも衣類など輸入超過額が大きい項目は多数あります。
さて、医薬品の3倍や4倍や15倍という輸入超過になっている項目があるにもかかわらず、医薬品が陰の主役と言えるのでしょうか?
「主役」を作ろうとするなら、どう考えても鉱物性燃料であり、医薬品と同じレベルまで細分化してもその中の原油及び粗油です。医薬品は赤字項目ではあっても主役クラスには到底及びません。
日経新聞の陰の主役という呼び方は非常に残念なデータ解釈の典型例です。
2.5兆円が売上のような全てプラス方向の数字を積み上げる性質のデータであり、全ての項目の数字が正で合計が100%になります。その中で1兆3千億円超と約半分なら主役と言えます。
しかし、貿易収支のようなプラスマイナスがあるデータでは、合計金額に対する比率で主役/脇役を語るのは大きな間違いです。
このようなデータの読み方の残念な間違いは、以前も紹介した吉本佳生氏の数字のカラクリを見抜け!
でも紹介されています。
[Note] 私は製薬関連の業界にいる人間です
医薬品の輸入が拡大している。新薬開発で米欧の後手に回り、海外から高額な抗がん剤などを買う必要があるためだ。輸入が輸出を上回った額(輸入超過額)は2011年には10年前の5倍の1兆3660億円で、日本の貿易赤字(2.5兆円)の隠れた主役になっている。40兆円規模に膨らんだ日本の医療費を支える税金と保険料は、海外に流れ出ているのが現状だ。
日経新聞の記事によると「医薬品の輸入超過額が1兆3660億円で、2.5兆円の日本の貿易赤字の隠れた主役だそうです。
1兆3660億円÷2.5兆円と計算して「日本の貿易赤字に占める割合が50%超と巨額→主役」ということでしょうか。へー、凄い。
本当に医薬品の輸入は陰の主役と呼べるようなものなのでしょうか?
以下にJETROで公開されているデータを元に2011年の日本の貿易収支情報をまとめてみました。(通貨はドル)

輸出-輸入の貿易収支は320億ドル(約2兆5千億円)の貿易赤字となります。
そして、注目の医薬品は45億ドルの輸出に対し、216億ドルの輸入なので、差し引き171億ドル(1ドル=80円だと1370億円)の輸入超過です。
このデータを見ても確かに医薬品の輸入超過額は全体の貿易赤字額の1/2以上の数字です。
しかし、他の項目の数字を見ると違った光景が見えてきます。
非常にわかりやすいのが鉱物性燃料。何と鉱物性燃料は医薬品の約15倍の2577億ドルの輸入超過です。日本の貿易赤字全体額と対比すると798%です。
他を見ても、食料品は688億ドルと医薬品の4倍以上の輸入超過です。原材料も538億ドルの輸入超過と医薬品の3倍以上です。
他にも衣類など輸入超過額が大きい項目は多数あります。
さて、医薬品の3倍や4倍や15倍という輸入超過になっている項目があるにもかかわらず、医薬品が陰の主役と言えるのでしょうか?
「主役」を作ろうとするなら、どう考えても鉱物性燃料であり、医薬品と同じレベルまで細分化してもその中の原油及び粗油です。医薬品は赤字項目ではあっても主役クラスには到底及びません。
日経新聞の陰の主役という呼び方は非常に残念なデータ解釈の典型例です。
2.5兆円が売上のような全てプラス方向の数字を積み上げる性質のデータであり、全ての項目の数字が正で合計が100%になります。その中で1兆3千億円超と約半分なら主役と言えます。
しかし、貿易収支のようなプラスマイナスがあるデータでは、合計金額に対する比率で主役/脇役を語るのは大きな間違いです。
このようなデータの読み方の残念な間違いは、以前も紹介した吉本佳生氏の数字のカラクリを見抜け!
[Note] 私は製薬関連の業界にいる人間です