日本ユニセフ協会に対する批判は根強くあり、特に災害毎に盛り上がっています。しかし、この手の批判は事実誤認からくるものが多く、あまりにも酷いので少し勝手に答えてみたい。
東日本大震災の寄付が必要額を超えたら全額被災者に使われないのはおかしいという間違った批判
東日本大震災の際にあった話です。日本ユニセフ協会は東日本大震災に際して、通常の募金とは別の緊急募金として募金をしました。その募金は全額被災者に届けるという性質のものでしたが、「なお、当緊急・復興支援に必要な資金を上回るご協力をいただいた場合、現在行われている他の緊急・復興支援に活用させていただくことがありますので、ご了承願います」といった注記が他の用途に転用するとは何事だと叩かれました。
しかし、この注記はおかしなものではありません。記載が無い場合には別の問題が起こりえます。
青天井で「全額渡します」と言って仮に必要額以上集まったらどうしましょう。
「難病手術のために1億円必要」のような募金があります。1億円を超える金額が集まったらどうしますか。5億円集まっても「僕たちのお金はその手術を受ける子のために払ったのだから余剰の4億円もその子にあげる」でいいのでしょうか?
そうなったら今度は「足りないから足りない分を埋めるために払ったのだ。その人が金持ちになるために払ったのではない」という批判が出てきますよね。
義捐金が集まりすぎて、被災者1人当たり1億円集まって被災者が全員義捐金富裕層になったとしても「義捐金が全額被災者にわたるのは正しいことだ」でしょうか。例え特定の用途に集められた資金であっても、必要額以上の部分まで使えという話はまたおかしな話かと思います。
なお、被災者に全額送られなかったという批判もありますが、それは更に大きな間違いです。結果的には全額が使われました。
熊本の災害で寄付しても25%中抜きされて被災者には75%しか届かないという頓珍漢な批判
被災地募金 ユニセフの場合、募金の最大25%程度が活動費に使われ、子供を対象とした活動のみ 日本赤十字は全額被災者と自治体に渡ります。 1000円募金すると、日赤なら1000円が被災者に ユニセフでは750円が被災地の子供のために どちらが正しいか
— 渡邉哲也 (@daitojimari) 2016年4月17日
熊本への募金検討中の方は日本ユニセフに募金してはダメ。寄付金の25%をピンハネする日本ユニセフは、都内一等地に寄附金から25億円を使い協会ビル、ユニセフハウスを建設。
— kami_joe (@kami_joe999) 2016年4月16日
募金は黒柳徹子さんが親善大使の「ユニセフ」を通しましょう
「ユニセフ」 と「 日本ユニセフ」 は全くの別物
これは複合的な勘違いがありますが、最悪なのは熊本の災害で日本ユニセフ協会を攻撃していることです。
過去に、アディダスの店員が、有名サッカー選手を中傷するコメントをTwitterに載せて炎上した事件がありました。
その際、【頭に来たから電凸してやったら「当社は関係ありません」の一点張りだよ ほんと糞みたいな会社だわナイキジャパン】というネタがありました。
これに通じるものがあります。
ユニセフは世界中の子どもたちの命と健康を守るために活動する国連機関であって、そもそも災害復旧を支援する組織ではありません。東日本大震災がそうだったように世界的に大きな災害の場合には緊急支援として別枠で募金を募ることがありますが、原則は違います。日本ユニセフ協会経由のユニセフだろうが、ユニセフに直接だろうが、熊本の災害向けの話ではないのです。
アディダスの問題をナイキに文句言うのはおかしいのですが、それに気づかないような人がいるのが残念です。