吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



分配金利回り

毎月分配型ファンド自身を潰す分配金競争

先のその高分配の毎月分配型投信、基準価額は元に戻らないし分配金は減りますよの続編です。この時は純資産総額トップのフィデリティ・USハイ・イールドFの基準価額及び分配金の推移を見ました。

今回は純資産総額第2位の新光 US-REITオープン 『愛称:ゼウス』でも同じようなグラフを作ってみました。
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アメリカのREITとアセットは違いますが、基準価額及び分配金についてはフィデリティ・USハイ・イールドFと同じような傾向です。(低分配⇒分配金増額⇒基準価額大幅低下後にさらに大幅に分配金増額⇒分配金減額)

しかも、今の新光 US-REITオープンは基準価額が4500円程度に対して分配金が月75円ですので、フィデリティ・USハイ・イールドFよりも基準価額低下圧力は強くなっています。

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その高分配の毎月分配型投信、基準価額は元に戻らないし分配金は減りますよ

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毎月分配型投信の分配金で将来設計をしているブログなどをときどき見かけます。その場合、高い分配金を出す投資信託に投資していて、その受取分配金の金額を将来のインカムゲインとして想定していることが多い。

具体的な例の一つとしては「Aファンドに投資していて今の分配金は毎月5万円。将来的には投資額を増やしていって分配金を毎月30万円にしてリタイア…」のようなものです。


しかし、この皮算用はまずい。
分配金が多い投資信託は基準価額がどんどん下がるし、想定している分配金はもらえなくなります。



現在の毎月分配型投信で純資産総額トップはフィデリティ・USハイ・イールドFです。このファンドの基準価額と分配金の状況をグラフにしてみました。(データはモーニングスターから)

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高分配金利回り ≠ 成績が良いファンド

先の『投資信託の分配金=自動解約』というエントリーでは分配金利回りは自動解約率と同じだと書きました。
これに対して、「分配金が解約金と同じようなものでも、分配金利回りを高くできるファンドは儲かっているから多く分配できる。だから、高い分配金利回りのファンドを選ぶことは悪くない」という反論があるかもしれません。

しかし、これは違います。「高分配金利回り ≠ 成績が良いファンド」です。

【分配金利回りの計算式】 分配金利回り = 1年間分の分配金の金額 ÷ 基準価額

分配金利回りが高くなるには...
 (1)分子の「1年間分の分配金の金額」が大きくなる
 (2)分母の「基準価額」が小さくなる
のどちらかです。

「分配金利回りが高い=儲かっているファンド」という発想は、計算式の分子だけに着目した考え方です。しかし、現実には分母の基準価額も含めた2つの要素によって分配金利回りは決まります。

投資信託の運用成績が悪くて基準価額が下がれば分母が小さくなって分配金利回りが上昇します。つまり、運用が下手で基準価額が低迷しているファンドほど分配金利回りか高くなるとも言えるのです。

それでは現実的にはどうなっているのでしょうか?
具体的にファンドを見てみます。
 ※具体例を見るのが面倒くさい人は以下の比較は飛ばして【まとめ】までいってください

●総資産額1位のグローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)
最近(2011/7/19)の分配金は35円です。その時の基準価額は5079円です。この数字を使って分配金利回りを計算すると8.27%です。
なお、2年程前(2009年7月17日)には分配金は30円で、その時の基準価額は6319円でした。この数字を使って分配金利回りを計算すると5.70%です。
それ以前のグロソブは分配金が40円の時代が長く続きましたが、この時の基準価額は7000円台後半〜8000円あたりのゾーンにあり、分配金利回りは6%強でした。
 ・基準価額5079円:分配金利回り8.27%
 ・基準価額6319円:分配金利回り5.70%
 ・基準価額8000円弱:分配金利回り約6%

●総資産額2位の短期豪ドル債オープン(毎月分配型)
最近(2011/07/07)の分配金は100円で、基準価額は7911円です。
第1回(2003年6月9日)の分配金は35円で、基準価額は10650円です。
 ・基準価額7911円:分配金利回り15.17%
 ・基準価額10650円:分配金利回り3.94%

●総資産額3位の野村 G・ハイ・イールド債券(資源国通貨)毎月
最近(2011/7/15)の分配金は140円です。基準価額は8631円。
第1回(2010/6/15)の分配金も140円で、基準価額は8581円。
 ・基準価額8631円:分配金利回り19.46%
 ・基準価額8581円:分配金利回り19.58%

●ランキングでは6位ですが、大人気なREITの中で総資産額1位のラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)
最新の運用報告書(第77期〜第82期)を見ると、第53期〜第82期までの分配金が載っています。この数字を見ると第53期は基準価額10482円で分配金が100円です。第82期は基準価額4366円で分配金は70円です。なお、設立初期の頃は分配金は40円で基準価額は10000円〜12000円くらいでした。
 ・基準価額10482円:分配金利回り11.4%
 ・基準価額4366円:分配金利回り19.2%
 ・基準価額10000円〜12000円:分配金利回り4.5%程度

【まとめ】
基準価額が低いほど分配金を多く出しているファンドすらあります。
基準価額が低いほど分配金利回りが高くなる傾向があることが分かると思います。
このように分配金利回りが高いファンド=運用成績が低迷して基準価額が低迷しているファンドとも言えます。ラサール・グローバルREITが顕著なように、基準価額が一気に60%も減れば分配金利回りが高くなる道理です。

「高分配金利回り ≠ 成績が良いファンド」です。

むしろ、分配利回りの高さは最近の成績が悪いファンドを選別するための指標にもなりそうです。分配利回りの高さを逆張り指標として使うのは面白いかもしれません。



分配金利回りが高い投資信託は悪い投資信託と思うが無難

分配金利回りの高さをセールスポイントにする投資信託のセールストークが良くあります。

しかし、誤解を恐れずに言えば分配金利回りが高い投資信託は良くないファンドであるケースが多い。あえて「分配金利回りが高い投資信託は悪いファンド」と言っておきたい。
中にはいいファンドもあるようですが、多くの個人投資家はそう思って敬遠した方が無難でしょう。

分配金利回りという不思議な数字はいくつか計算方法がありますが、基本的には「(前回や直近1年の)分配金の実績」÷「現時点や直近1年の平均)基準価額」で求めます。
つまり、分配金利回りが上がるのは、分子の数字が増えるか、分母の数字が減った時です。これは「分配金の実績が増える」、もしくは「基準価額」が下がった場合を意味します。

成績が好調だからこそ分配額が増えることが多く、分配金の額が多いから悪いとは断定できません。(ここでは分配金を出すことそのものが良くないという批判には目をつぶります)

問題は、基準価額の低下が分配金利回りを向上させることであり、分配金利回り向上はこのケースが多いことです。

毎月分配型投信の代表格はグローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)、通称グロソブです。このファンドを見てみます。
2006年頃は基準価額は8000円前後で毎月40円の分配金を出していました。年480円の分配金(40円×12ヶ月)を8000円の基準価額で割ると分配金利回りは6%です。
その後の金融危機でグロソブの成績は低迷します。今では基準価額が5300円前後で分配金は毎月35円です。年420円(35円×12ヶ月)を5300円の基準価額で割ると分配金利回りは7.9%です。
投資信託の運用成績が悪い方が基準価額が下がって分配金利回りが高くなっています。分配金が40円→35円と引き下げられたのにもかかわらずです。
何も事情を知らない普通の人は「利回りが高い」という言葉から運用成績が良いという印象があるかもしれませんが、上のグロソブの事例では反対の結果になります。2006年の好調時に分配利回りが低く、リーマンショック後の不調時は分配利回りが高くなります。

この傾向はグロソブに限りません。他の毎月分配型ファンドでも同じ傾向があります。リーマンショックと呼ばれた2008年からの厳しい相場環境では、投資信託の運用成績の悪化に伴って分配金利回りが高くなった投資信託が多数あります。

本来、分配金利回りだけで投資信託の運用巧拙を決められませんが、あえて分配金利回りの高さからパフォーマンスを推測すれば、世間一般のイメージとは逆の「分配金利回りが高いとパフォーマンスが悪い」と考えた方が実情に近い。

特に「分配金利回りランキング」のようなもので上位に来るファンドは注意です。基準価額の15%相当の分配金を出すようなファンドもありますが、明らかに期待されるリターン以上の分配金を出しています。
このようなファンドは無理をしているか、一時的に好調な成績分を吐き出しているかのどちらかです。投資信託の運用がずっと好調ということはありませんので、好調時に稼いだ資産を吐き出してしまっては不調時に資金が枯渇します。不調時に分配金を0にできればいいのですが、毎月(隔月)分配型として顧客にセールスしているとマーケティング上の理由からできません。現に基準価額が下がったから分配金を0にした多分配ファンドは聞きません。


「分配金利回りが高い≒パフォーマンスが低下している、だから反騰がある」とその投資対象のリターン・リバーサルに期待して投資するのはアリですが、分配金利回りが高い投資信託を良いファンドと考えるのは間違いです。



『分配金利回り』 これを売り手側が使うのは反則

『分配金利回り』

これに関しては先のエントリーでも書きました。

その実態を知っても知らずでも投資家側が使う分には構わないと思います。しかし、プロとされる売り手側が販売促進のためにこの言葉を使うのは反則ではないでしょうか?


投資信託の収益はキャピタルゲインとインカムゲインに二分されます。
 ・キャピタルゲイン:投資信託の基準価額の値上がり益
 ・インカムゲイン:投資信託から出る分配金

この2つを合わせたものが、投資家が得る投資信託の損益です。
ところが、『分配金利回り』では、キャピタルゲインが一切考慮されていません。『分配金利回り』を考える時には自動的に(1年間)基準価額が変動しないとするとということが前提とされています。
分配金は投資信託が保有している資産からの取り崩しであり、分配金を出しただけ基準価額は低下します。しかし、『分配金利回り』の計算をする時はこれが考慮されていません。
そんな都合がいいことがあるのでしょうか。


シティグループ世界国債インデックスに連動する2つのファンドがあったとします。今は共に基準価額は1万円としましょう。
 ・Aファンド:毎月10円(1万口当たり)の分配金を出します
 ・Bファンド:毎月100円(1万口当たり)の分配金を出します

分配金利回りの計算だと・・・
 ・Aファンドは1年で120円の分配金が出る予想になるので、分配金利回りは1.2%です
 ・Bファンドは1年で1200円の分配金が出る予想になるので、分配金利回りは12%です

分配金利回りの計算では基準価額が1年間変わらないという前提になっています(だから1万円で割る)。その結果、この分配金利回りの計算で想定された1年後の両ファンドの結果は大きく異なります。
 ・Aファンドは基準価額が1万円で分配金が120円
 ・Bファンドは基準価額が1万円で分配金が1200円

同じ対象に投資して同じ計算方法を取っているのに、注意書きに小さく"基準価額は1年間変わらないものとする"と書くだけで、一見Bファンドのリターンが凄いかのように見せることができます。


また、先のエントリーの2番で書いた直利を使う計算方法でも簡単に『分配金利回り』を上げることができます。ジャンク債や高金利国の債券を組み入れれば、債券の表面上の利回りは高くなります。いつ潰れてもおかしくないような企業の債券なら年利回り10%超なんてものはあります。それを組み入れて「分配金利回り15%!¥なんていっても無意味です。それだけ危険な企業が多ければ、いくつかの企業は潰れるか業績悪化で債券本体の価格が下がります。
高金利国の債券の場合も同じです。高金利にはインフレ率が高いか信用度が低いのような理由があります。債券の利回りが高い分だけ為替リスクや信用リスクで損する可能性が高くなっていて、総合的に見ると決して有利ではありません。


●まとめ
基準価額が変わらないという前提があまりにも無茶なのです。ドラえもんのもしもボックスの世界です。
株式投信で「株価が下がらないならば儲かる」とかレバレッジをかけたFXの円売りスワップ運用で「為替が1年間同じ水準だったら儲かる」なんてのは馬鹿にされます。そんな都合のいいシナリオどおりに動けば儲かりますが、それはただの楽観的シナリオです。それどころかただの個人的願望です。

しかし、何故か『分配金利回り』の世界では、これが許されているように感じます。販売・運用側もその確率に触れずに基準価額が不変だとすれば、と言っています。基準価額が下がらない可能性も0ではないが、それでいいのだろうか。


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