「最近の日本の若者は内向きだ」
「いや、日本の若者が内向きというのは嘘だ。」

という議論もあります。


これは物事の捉え方の違いからきているようにも思います。
見方によって内向きになっている、であり、見方によっては内向きになっていないと言えそうです。

データとしては首相官邸の政策会議に「グローバル人材育成推進会議」という会議があり、この第2回の配布資料が参考になります。
※参考資料:関連資料・データ集


●若者は内向きになっていない説
資料の4枚目のグラフがいいデータです。
ryugaku01

若者内向き論者はよくアメリカへの留学者数をデータとして使っていますが、これはアメリカ以外の国への留学の割合が増えたことが大きな原因です。
2004年は海外への留学者数が最高の8.2万人であり、2008年は減ったとは言え6.7万人です。少なくとも20世紀の留学者よりは数が多い。
留学者数がピークの2004年より減っていても、そもそも若者が減っています。18歳人口千人あたりの留学者数は、ピークの2004年とほぼ同じです。

このように、データから外向きの拡大は止まったと言えそうですが、決して内向きにはなっていないと言えそうです。


●若者は内向きになっている説
資料の7枚目のグラフがいいデータです。
ryugaku02

今度は日本国内の絶対数の話ではなく、他国との比較を考えてみます。何故なら相手のいる競争の結果は、自分の能力の絶対値ではなく相対的に相手を上回っているかで決まるからです。

このグラフでは日本のデータはつぶれてしまっていますが、先の4ページのグラフで見たように2004年にかけ上昇し、そこからやや減少です。一方、注目されるべきは中国、インド、韓国というアジアの3カ国です。この3カ国は2000年代で急激に海外留学者数を増やしています。

つまり、日本の留学者数は減っていないのですが、他国の留学者数が増えているので相対的に日本人の存在感が薄まっています。
アジア諸国で外向き化が進んでいる中で、日本は外向き化が止まっています。これを「日本人が内向き化している」と言えるかもしれません。(本来ならば「日本人が停滞していて置いていかれている」という方が正確かもしれません)


日本人の若者内向き論では、「アメリカへの留学者数」「海外で働きたくないという若者の増加」などのデータが使われますが、これは後付けで極めて説得力の弱いデータです。
「アメリカへの留学者数」はアメリカ以外への留学が増えたことで説明がつきます。
「海外で働きたくないという若者の増加」は海外勤務の中身が変わってきたことの影響も無視できません。昔の海外勤務は先進国の海外支店でお客様扱いでの勤務が多くありました。しかし、今の海外勤務はお客様扱いではありません。海外で戦ってこいと言われます。しかも先進国とは限らず新興国へ放り込まれることすらあります。海外で働くイメージが「お客様」と「武者修行」では回答に大きな違いが出てもおかしくありません。

若者内向き論は、「昔の日本人の若者と今の日本人の若者の比較」ではなく、「アジア等の成長著しい新興国の若者と日本人の若者の比較」という意識からきているのではないでしょうか。

参考: 「若者の内向き志向」に感じる論点のズレ (統計学+ε: 米国留学・研究生活)