吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



二上季代司

新興国ETFで最も組み入れられている株式は日本株

7月12日に滋賀大学経済学部教授 二上季代司氏の『金融システムと「合成」ETF』というレポートを紹介しました(当時のエントリー)。
ここで二上氏が紹介していたFSB、IMF,BISという3つの国際機関のレポートが面白いです。

(1)『Potential financial stability issues arising from recent trends in exchange-traded funds (ETFs)』(FSB)
(2)『Durable Financial Stability: Getting There from Here』(IMF)
(3)『Market structures and systemic risks of exchange-traded funds』(BIS)


1つご紹介したいのは、ETFの担保に差し出す証券の中身です。
 ※シンセティックETFは裏づけ資産が要求されます(基準は各国の法律による)。

BISのレポートにdb x-trackersのMSCI Emerging Index連動ETFを題材にした面白い比較があります。
ETFが担保にしている株式・債券、それぞれにおけるに国別の比率が掲載されています。

インデックスと担保の株式部分における各国の構成比率は以下の通りです。
ETF_collateral_stock
左側の円グラフは新興国インデックスに投資している人にはおなじみのグラフでしょう。中国、ブラジル、韓国、台湾・・・等々となっています。
興味深いのは右側で、何と日本が大人気です。担保の株式部分では日本株が50.1%ものシェアを占めています。
新興国株式における株式では日本株が圧倒的に買われているようです。


ちなみに担保の債券部分では、国別と格付別のグラフも載せられており、以下のようになっています。
ETF_collateral_bond
債券部門ではアメリカが圧倒的な75%超を占めています。

ここに債券と株式の比率まであるとなお良いのですが、それは無いとのことで残念です。しかし、これだけでも新興国株式ETFの中身を見てみるのも面白いものです。新興国株ETFの中身は日本株と米国債券なのです。
具体的に何がシンセティックETFの裏づけの担保になっているかが示されているデータを見ることはあまり無く、これほどまでに指数構成銘柄と担保の中身が違うとはという驚きです。
指数と担保の関連性が要求されていないEUのUCITS指令下で組成されているシンセティックETFというだけはあります。

このようなシンセティックETFはアメリカなど規制の強い国には上場できないのでしょう。







金融システムと(合成)ETF、そしてそのリスク

大阪証券取引所が発表している先物・オプションレポートの2011年6月に滋賀大学経済学部教授 二上季代司氏の『金融システムと「合成」ETFというレポートが掲載されていました。

この中では、以下のFSB、IMF,BISという3つの国際機関が金融市場とETFについて論じたレポートに触れておりますが、これらが面白いレポートです。
 (1)『Potential financial stability issues arising from recent trends in exchange-traded funds (ETFs)』(FSB)
 (2)『Durable Financial Stability: Getting There from Here』(IMF)
 (3)『Market structures and systemic risks of exchange-traded funds』(BIS)

この3レポートも面白いのですが、ここでは二上氏の金融システムと「合成」ETFに限って話を進めます。
このレポートではETF、特に合成ETFのリスクについて2点言及しています。

まずはカウンター・パーティーリスクです。
合成ETFでは担保を差し出しているので担保を売却すれば資金を回収できるはずです。これによってカウンター・パーティーリスクは無くなるはずです。しかし、担保が必ずしもETFが連動を目指す資産と関係なくてもいいので、いざ緊急時には損失をこうむる可能性もあるということを指摘しています。

次にはカウンター・パーティーが同じグループ内のような場合の利益相反です。
担保に差し出すものが投資銀行部門にとって不要な資産だらけという可能性を指摘しています。

これら2つの指摘は全くその通りです。平常時は担保で保障されるでしょうが、カウンター・パーティーが潰れそうになり、担保資産の流動性が枯渇した場合にはかなりの危機です。しかも、その担保には怪しい商品が多く入っている可能性も否定できません。
さらに、現物運用でも貸し株されている場合には類似のカウンター・パーティーリスクがある点も注意。


また、面白いのは合成ETF拡大の背景です。
規制が緩い地域(ヨーロッパ、香港、シンガポール)では合成ETFが広まり、規制が厳しい地域(アメリカ)では合成ETFが余り広まっていないとのことです。言われてみればその通りですが、このように制度の違いが与える影響は大きいことが再確認できます。

UCITS (EU)
 ・ファンドがヘッジ目的以外に投資目的として上場・店頭デリバティブを利用することを容認
 ・デリバティブ契約の担保物件がベンチマーク指数と合致することを求めない

投資会社法 (アメリカ)
 ・資産の80%以上はファンド名と合致する証券の組み入れを要求
SEC (アメリカ)
 ・デリバティブを投資目的利用するファンド新設には極めて慎重

このレポートだけでも一読の価値ありですが、二上氏が参考にしている3つの国際機関のレポートにも、二上氏のレポートには出てこなかった面白い情報がありました。それについては、できれば後日触れてみたいと思います。



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