吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



ウォール街のランダム・ウォーカー

乖離が出ている<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドってどうなのよ?

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また最近一部界隈で<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドが他の同じインデックスに連動するインデックスファンドと比較して動きが乖離しているということが話題に上がりました。

具体的に起きている現象は日次の基準価額の値動きでニッセイだけが他の先進国インデックスファンドと騰落率が離れていることがあるという話です。


以前には2016年11月にも同じようなことがありました。この時には、この乖離に対する臨時の説明も発行されました。(内容は読んでもよく理解できないものでしたが)


インデックスファンドの運用は「インデックスにできるだけ連動することが良い」とされおり,この基準で評価をするとニッセイアセットマネジメントの外国株式インデックスファンドの運用は他の運用会社に比べて下手と言えるでしょう。
どうしてこうなっているのかは分かりませんが、<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドは上にも下にも他のファンドと少し違った値動きをすることがあるようです。


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パッシブ投資(インデックス投資)を始めるためにお勧めの2冊 -本格編

先のパッシブ投資(インデックス投資)を始めるためのお勧めの3冊 -入門編では、入門編として『内藤忍の資産設計塾【第3版】』『投資信託にだまされるな![新版]』『超簡単 お金の運用術』の3冊を推奨しました。

とはいえ、「入門編」と書いたように全てではありません。

入門編の本に書いてある内容でパッシブ投資(インデックス投資)を始めることは十分に可能です。しかし、裏付けが弱い(『超簡単 お金の運用術』がありますが)。

裏付けなしにパッシブ投資(インデックス投資)を始めることはできますが、パッシブ投資(インデックス投資)のポイントは継続することです。その時に「何故パッシブ投資(インデックス投資)しているのか」という自信がないと継続が怪しくなることがあります。
2007年から2009年にかけての下落相場で離脱していく仲間が何人もいました…


そんな時、パッシブ投資(インデックス投資)について骨太の説明をしてくれるのが、次の2冊。


この2冊を読んでおけば、どんなことがあってもパッシブ投資(インデックス投資)継続に問題なし!(かもしれない)


(1) 敗者のゲーム

ウォール街のランダム・ウォーカー』と双璧の古典です。
投資で勝つためにいろいろ頑張るのではなく、何故負けないためのパッシブ投資(インデックス投資)が良いのかということを深く明確に書いてある素晴らしい本です。改定に改訂を重ね、最新版では昨今の金融危機を受けた内容になっています。
本書は分厚いながらも文章は読みやすく、すらすらと楽しんで読める本です。


(2) ウォール街のランダム・ウォーカー

パッシブ投資(インデックス投資)のバイブルとも言える本です。
いろいろな投資本がありますが、パッシブ投資(インデックス投資)家なら最終的に手元に残すならこの1冊と言う人も多いのではないでしょうか。
本書も改定を重ねています。そして、幾多のバブルや危機があってもBuy&Holdのパッシブ投資(インデックス投資)が優れた投資手段である(他に特別に有効な手法がない)ということを説いています。
パッシブ投資(インデックス投資)をするなら必読の1冊と言ってよいでしょう。


この2冊は古典中の古典であり、パッシブ投資(インデックス投資)を知りたいなら目を通しておきましょう。


そして、最後の番外編に続く…



何故、投資信託でコストを重要視するのか

投資信託の特徴的な点として保有している期間に保有コスト(信託報酬)がかかるという特徴があります。

そして、一部の投資信託を使った投資家やFPや評論家からは「コストは重要だ。コストが高い投資信託は良くない」という声が聞かれます。
これは何故か? それはコストが投資家の利益に直結するからです。

投資信託において、投資家のリターンは以下のようになります。
 ・[投資家のリターン]=[コスト控除前の投資信託の利益]-[コスト]

つまり、[コスト]が増えると[投資家のリターン]は減ります。それで「コストは重要だ。コストが高い投資信託は良くない」という意見が出てきます。


上記の説明で納得されたでしょうか?


そうだとすれば問題ありです。


上の議論には致命的な欠点があります。

単純に右辺の[コスト]だけ増加する場合を考えて[投資家のリターン]が下がるとしており、[コスト控除前の投資信託の利益]を無視しています。
一般的な世の中の商品(例えば家電/家具など)を見ると[コスト]の増加は[商品の性能/品質]の上昇に繋がります。つまり、[コスト]が増えても、それによって[商品の性能/品質]がそれ以上に増加すれば、[消費者の利益]は向上します。

投資信託のコストにおいても同様に、高いコストが、それ以上のリターンを生み出しているのであれば高コストは善です(少なくともマイナス要因ではない)。



では、コストが高い投資信託はそのリターンを高めているのでしょうか?

結論を言えばNoです。多くの実証研究で否定的な結果が出ています。

その一つとして竹中正治氏の分析(2007, 日経ビジネス)があります。
2007_Takenaka_fund_analysis
上の図表は竹中氏の分析から引用したものですが、表に注目です。年率コストで2%未満と2%以上の二群に分けて比較するとコストが高い群のリターンが1.27%も低い結果になっています。コスト差が1.14%なので、このパフォーマンス差のほとんどはコスト要因になります。
また、竹中氏は2007年だけではなく、その後も同じように分析をしています。2011年12月時点のデータで分析した結果は竹中氏のブログに公開されており、ここでも高コスト→低パフォーマンスという傾向が出ています。(コストが高ければ必ずしもパフォーマンスが悪い、というわけではない)


さらに竹中氏は、私のお気に入りである『インデックス・ファンドの時代』の著者でありバンガードの創設者であるボーグルがアメリカの株式ミューチュアルファンドについて調べたデータも示しています(下記)。ここでも、四分位で分けて、高コスト群→低パフォーマンスという傾向が出ています。
bogle_fund_analysis

ボーグル氏は10年以上前の1999年に出版された『インデックス・ファンドの時代』の中でもアメリカのミューチュアルファンドのリターンをコストで四分位に分けて分析しており、ここでも高コストになるとパフォーマンスが悪くなるという傾向が出ています。

他にも今も輝く名著である『ウォール街のランダム・ウォーカー』でもそのような話が出ていますし、そのランダム・ウォーカーで参考資料として示されているM.Carhartの『On Persistence in Mutual Fund Performance』でもコストはパフォーマンス低下要因という結果が出ています。


電化製品のようにより高い金を払ったんだから、より良いものを提供してくれることを投資信託にも期待したいものです。しかし、実証研究は残念なことにそれを支持してくれません。

 ・コストが高いファンドはパフォーマンスが悪いという傾向
 ・世の中の多くの凡人投資家が将来に成績の良いファンドを今時点で当てることは極めて困難
この2点を前提にすると、コストが高いファンドを避けることは将来の高パフォーマンスの可能性を高めることになります。だから「コストは重要だ。コストが高い投資信託は良くない」と言うのです。


もちろん「コストが高くても成績がいいファンドがあって、そういうファンドを買えばいい」と、将来の結果を見ることができる稀有な人には当てはまらないので、そういう投資の才能のある方は凡人と同じ運用をする必要は全くないでしょう。



「本気の失敗には価値がある」「失敗を知って乗り越えたモノならそれはいいモノだ」

「本気の失敗には価値がある」
「失敗を知って乗り越えたモノならそれはいいモノだ」

失敗することは決して良いことではありません。最初から成功するに越したことはない。しかし、現実は失敗せずに成功できるような道が簡単に見つかるようにはできていません。

資産運用について、私が古典3部作としている下記3冊のように低コスト長期分散投資の指南本も数多く出ています。
ウォール街のランダム・ウォーカー
敗者のゲーム
インデックス・ファンドの時代

しかし、本を読んで低コスト長期分散投資を始めても皆が続けられるわけではありません。
2007年→2009年の下落相場では多くの人が消えていきました。本の教えの通りであれば、そのような相場の中でも投資を止めないことが重要なのですが、それを続けられなかった。(相場は回復した)
一方、同じような状況でも投資を続けられた人もいます。

この違いはどこから来るのか?
全員に当てはまる話ではありませんが、生き残った人の多くに過去に株式投資等で失敗してきた(上手くいかなかった)人たちがいます。資産を増やそうと頑張って数々の失敗等を通って低コスト長期分散投資にたどり着いたというパターンです。
本気でやって失敗し、それを知って乗り越えた末にたどり着いた低コスト長期分散投資は、1,2冊の本を読んで分かったつもりになってやる低コスト長期分散投資とはワケが違います。見た目は同じでも中身の強度は違います。

「本気の失敗には価値がある」 (by 南波六太)
「失敗を知って乗り越えたモノならそれはいいモノだ」 (by 南波六太)


   



インデックス投資への批判はOK、でも少しは知識をつけてからお願いします

先の過去の栄光しか語らない人に注意で、愛読者さんから以下のようなコメントをいただきました。
本文とは関係ありませんが、下記のウォール街のランダム・ウォーカーに対するエントリーに対し、何か意見があるようでしたら、ご教示いただければと思います。
http://blogos.com/article/43175/


このリンク先は「マルクスが資本主義に対して加えた批判の全ては正しかった。問題は……」 『ウォール街のランダム・ウォーカー』 という広瀬隆雄氏のインデックス投資とマルキール氏を批判する記事です。

これが典型的な誤解に基づいた批判です。
ウォール街のランダム・ウォーカー』を表紙すら読んでおらず、インデックス投資家の実像も勘違いした批判になっています。

広瀬氏が書かれた文章を引用しつつ、ツッコんでみます。


ウォール街のランダム・ウォーカー―株式投資の不滅の真理

この本のサブタイトルに「株式投資の不滅の真理」という言葉があります。
僕はこの時点で、この本は「終わっている」と思います。

なぜなら長年、投資をやってきて、株式投資に「不滅の真理」など無いと痛感するからです。

それを軽々しくそう言い切るところに、この本の傲慢さがあるし、罪があるのです。

この書き出しで始まりますが、いきなり噴飯ものです。

「株式投資の不滅の真理」は日本語訳版で勝手についたタイトルです。マルキール氏が出した原書にはこのサブタイトルはありません。原書のタイトル/サブタイトルは"A Random Walk Down Wall Street: The Time-Tested Strategy for Successful Investing"です。
あくまで「長年の間の実績がある戦略」としか言っておらず、「不滅」とも「真理」とも言っていません。
また、私の手元には1973年発行の初版もありますが、初版は"A random Walk Down Wall Street"だけであり、マルキール氏は長年の実績があるとも言っていません。サブタイトルも実績が出てから付加されたものであり、一体どこが「軽々しく言い切って傲慢」なのだろうか。

広瀬氏はハリウッド映画の邦題が変(例えば、Jerry Maguire→ザ・エージェント)だと、ハリウッド監督たちにタイトルをつけるセンスがないとか、あんなんで「ザ・エージェントとは傲慢だ」とか怒るのでしょうか…


マルキールが「投資のプロ」の意見のいい加減さを証明するために行ったひとつの実験に、次のようなものがあります。

それはコインを何回も投げて、表が出たら上、ウラが出たら下という風にプロットしてチャートを作りました。次にそのチャートをテクニカル・アナリストに見 せて、「このチャートは買いですか、それとも売りですか?」とお伺いを立てたわけです。するとテクニカル・アナリストは「この株は、ガンガンの買いだ!」 と言ったそうです。

マルキールはそれを見て、チャート分析は無意味だという結論に達しました。

このようにマルキールはそれまでウォール街で額面通りに受け止められてきた投資理論やテクニックの限界を次々に指摘したのです。

マルキール氏が、コイン投げチャートでテクニカルアナリストが買いだと騒いだことで投資理論やテクニックの限界を指摘したですか?嘘です。

マルキール氏は、個々のテクニカル戦略 vs バイ&ホールドで優位性があるかという比較をしています。そして、様々な投資理論やテクニックがバイ&ホールドに対して優位性を示せないことを示して、限界を次々に指摘しています。(フィルター法、ダウ理論、レラティブ・ストレングス法、株価-出来高法、チャート・パターンを読む)
コイン投げだけで無意味という結論に達していません。

さて、そのマルキールですが、今年になって「どのアセット・クラスが最も見込みがあり、どのアセット・クラスが最も駄目かの予想リスト」を公表し、米国の投資コミュニティで語り草になっています。

その中で何と彼は:
 
「債券は駄目だ。特に10年債は絶対損するだろう」
「新興国株式がベストだ」
「不動産もいい」

などの御神託を披露したのです。

ガチガチのランダム・ウォーク理論の信奉者で、マルキールの熱烈なファンたちは、このマルキールの発言に目が点になりました。なぜなら、「未来は予見できない」と言った本人が、しゃあしゃあと推奨リストを掲げたからです。

目が点になったマルキール氏の熱烈なファンを私は知りません。
そもそも「ガチガチのランダム・ウォーク理論の信奉者」「マルキールの熱烈なファン」は一致しません。

1973年の初版発行時からマルキール氏の態度は一貫しています。以下は初版からの引用です。
 Now, in fact, the stock market does not quite measure up to the mathematician's ideal of the complete independence of present price movements from those in the past. There have been some very slight dependencies found.
If the narrow form of the random-walk hypothesis is a valid description of the stock market, then, as my colleague Richard Quandt says, "Technical analysis is akin to astrology and every bit as scientific."

読んでの通り、マルキール氏は市場に弱いトレンドが存在することを認め、ウィーク型のランダムウォークの話をしています。
「ガチガチのランダム・ウォーク理論の信奉者」はマルキール氏の教義に反します。
ですから「ガチガチのランダム・ウォーク理論の信奉者で、マルキールの熱烈なファン」という存在が嘘です。

でもCAPMをはじめとする、諸々の投資理論をちゃんと勉強するなら、『ウォール街のランダム・ウォーク』で上っ面だけをサラッと見てわかったような気分になるのではなく、個々の理論の原書(例えば『Portfolio Theory & Capital Markets』William Sharpe)をちゃんと当たる方が、よっぽど勉強になります。

「原書をちゃんと当たる方が勉強になる」はまさに今回の広瀬氏自身に当てはまってしまうのでは。
上っ面(表紙)くらいは『ウォール街のランダム・ウォーカー』の原書を…


別に投資に限らず、どの世界でも:

「これさえやっておけば、OK」

という安易なアドバイスを、素人は求めやすいものです。

これが野球なら、『練習しなくて、イチローのようになれる方法』という本を出せば、まちがいなく世間の笑い物になるでしょう。
良くある誤解です。
株式の素晴らしいところは資本と実務の分離です。ですから実務(野球のプレー)は他人(イチロー)に任せて自分は資本提供側に回れます。自分が野球をプレーできなくてもいい選手に資金を投じることでワールドシリーズを勝つことは可能なのです。


この広瀬氏のような批判は、典型的なインデックス投資への誤解に基づいた批判の一つです。


※参考1:アクティブ vs パッシブ (実力で決まるとしたらどっちが有利)
※参考2:アクティブ vs パッシブ (実力で決まるとしたらどっちが有利) 2



私の著書 - ズボラ投資
「毎月10分のチェックで1000万増やす! 庶民のためのズボラ投資」
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