東洋経済7/5号『投資信託嘘と本当』の中の『投信の常識11のウソ?』に対する批判編その2 (その3?)です。

先のエントリーでは【1. 投資の鉄則、長期投資は儲からない?】について書きましたが、今回は【3. 分散投資ではもはやリスクは回避できない?】です。


これも酷いです。
記事をご覧になっていない方のために簡単に説明すると

○1995年-2007年の「TOPIXとハンセン指数」「TOPIXと韓国総合指数」の年毎の相関
○1995年-2007年の「S&P500とFTSE」「S&P500とMSCI新興国」の年毎の相関

これをグラフ化して相関が高まっているという主張です。


何が変か?


●ここが変だよその1:比較対象
何故TOPIXの比較対象がハンセン指数と韓国総合指数でS&P500の比較対象がFTSEとMSCI新興国なのでしょうか?
ひょっとしてTOPIXとFTSEを比較すると都合が悪いからその比較をやめたのかもしれません。またはS&P500とハンセン指数では都合が悪かったのかもしれません。

「昔は相関係数が低くて最近は相関係数が高い」と著者に都合のいい比較対象だけ選別しているように思えます。

いずれにしても、上の比較だと「TOPIXとハンセン指数」「TOPIXと韓国総合指数」「S&P500とFTSE」「S&P500とMSCI新興国」の相関性が高まっていると言っているだけです。
S&P500とFTSEの相関が高まっても、それらとTOPXとの相関が低くなっていれば分散効果アリですから、株式の分散効果が薄れていると主張するなら、世界中(せめて主要株式市場)に分散した時の分散効果が薄れていると主張しなくてはいけません。
企業研究では当然で、大学生の論文でもこんなデータで話をしたらF評価です。


●ここが変だよその2:比較期間
何故に1995年からのデータなのでしょう?
10、15、20年でもなく13年間という中途半端なデータというのは何故でしょう?ここにグラフ作成者の意図を感じます。1995年はちょうど相関係数が低い年で、都合がよかったのでしょうか?
1995年の相関係数は以下の通りです。
 ・TOPIXとハンセン:0.2
 ・TOPIXと韓国総合指数:0.2
 ・S&P500とFTSE:0.6弱
 ・S&P500と新興国:0.4弱

ちなみに1998年の相関係数は以下の通りです。
 ・TOPIXとハンセン:0.2
 ・TOPIXとKODAX:0.4強
 ・S&P500とFTSE:0.8弱
 ・S&P500と新興国:0.7弱

1998年-2007年の10年間で区切ってしまうと、2007年と比較されるべき1998年の相関係数が高く出てしまいます。(特にS&P500と新興国の相関は2007年より高い!!)
つまり10年区切りだと筆者に都合が悪かったようです。そう考えると15年区切りも都合が悪かった!?

だから、相関係数が低くて、それなりに長期と認められる都合のいい期間として1995年から13年間を比較期間に選んだのかな♪


●ここが変だよその3:相関性が上がっている?
なお、上の2つのことに目をつぶってグラフを見たとしてもおかしな点があります。グラフを見ると2007年のTOPIXとハンセンの相関係数が0.7台となって高くなったと言っていますが、以下のように2002年から2006年にかけてはほぼ一本調子で下落しており、2007年だけが異常値と見えなくもありません。
2002年:0.6弱
2003年:0.45程度
2004年:0.45程度
2005年:0.3程度
2006年:0.3強
2007年:0.7強

他の比較を見てもそうです。
S&P500とFTSEの相関なんていい加減です。
2006年、2007年の相関は0.8程度ですが、0.8前後なんて数値は1998年、2001年、2002年、2003年と何度もなっています。ここ10年で見ると、0.6前後〜0.8前後の間を行ったり来たりです。

結局、このデータから読み取れることは「相関係数は毎年上下している」ということだけです。
昔から上下動を繰り返していて、ここ2年くらいが相関の高い年だったというだけにも読み取れます。少なくともバラつきが大きく、サンプルが少なくて統計的に有意なデータではありません。


●ここが変だよその4:株式指数だけ
実はこれが一番おかしな話です。「長期・分散投資」という場合、「国内株、外国株、国内債券、外国債券」の基本4資産か、それにREITなどを加えたアセットアロケーションを指すのが一般的です。
しかし、この記事では株だけで比較しています。
これでは、話の中心である分散が成立していません。

『投資の常識 11のウソ?』などとほざいていますが、株だけで分散だなんて常識はそもそもありません。
あるあ○大辞典のごとき捏造ですね。

しかも、株式指数だけの比較で為替を思いっきり無視しているようです。外国の株式や債券への投資では為替が重要なのは言うまでもありません。ちゃんと投資信託のリスクの説明にもデカデカと「為替リスクがあります」という注意書きがあるはずです。

外国株式に投資する投信の基準価額は株価×為替で決まります。仮に株価指数の相関が強くなっても為替レートが逆相関であれば、投資信託同士の相関が低くなることはあります。

分散投資におけるリターンの分散効果という話であれば、為替レートは避けて通れない変動要因のはずなのですが筆者は為替というものを知らなかったようです。




続いては【8. バランスファンドの配分は理想的ではない】について書いてみます。


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@吊られた男


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