少し古い話になりますが,GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が定期的なポートフォリオ見直しを実施し,2020年4月1日からはそのポートフォリオが基本ポートフォリオとして適用されています。
●基本ポートフォリオの変更について(詳細)
●基本ポートフォリオの変更について(概要)
乖離許容幅はアセット毎に違いますが,構成割合が1/4ずつという非常に興味深い数字になりました。
国内外の株式と債券を1/4ずつにしておくというのは,非常に原始的なポートフォリオです。
GPIFのポートフォリオを考えるにあたってはリスクやリターン,そして相関係数などを考慮して決めます。さらにはその前提となる数字を導き出すためにはさらに細かい数字も使っています。その結果導き出された答えが,これです。
一周回って原点に戻ってきたというところでしょうか。
たまにポートフォリオをどう考えればいいか悩んでいる人に「世界最大のポートフォリオ運用しているGPIFを参考にしてみたら」というアドバイスがされることもありますが,今後はこの1/4ずつという非常にシンプルな構成になりますね。
また,このポートフォリオ決定までの議論でも少し面白い内容があったのでご紹介。
【興味深い議論1】国内・国外という区分の廃止GPIFのサイトには,この基本ポートフォリオ策定までの経緯を記録した資料がありますが,一つ白熱したテーマとして「株式は国内・外国という区分止めちゃっていいんじゃね?」というものがありました。
企業活動はグローバル化しているために、カントリー別に分けてもあまり意味がなく,むしろインダストリーの方が影響あるのではないか,等々の議論がされていました。
諸々への影響が大きすぎるということで撤回されましたが,このような内外区分撤廃という考え方もありでしょう。
【興味深い議論2】積立金の取り崩しはいつから?
「問題:年金積立金は株式や債券で運用されていますが,いつから取り崩しが始まるのでしょうか?」
■参考資料:厚生年金の財源の内訳(平成26年財政検証)
年金財政における積立金の役割から
長くなりますが,面白い質疑なので基本ポートフォリオ策定に係る経営委員会議事概要から引用します。
委員A 委員から 50 年ぐらいは取り崩さないという説明があったが、業務概況書に掲載している図は実質ベースなので 20 年になっているということなのか。
委員B そのとおりである。
委員A 業務概況書の図はもう少しで残高を取り崩すと国民に誤解を与えるため、今回の議論とは関係ないが工夫したほうがいいと思う。
理事 もともとは国民の間に GPIF がロスを出したら年金をもらえないという誤解があったので、財源としては GPIF の積立金は 10%ぐらいであるということを説明してきており、一定の効果はあったと思う。GPIF の株式運用については、もう数年のうちに売らなければならないという誤解もあったので、基本ポートフォリオと合わせて 50 年先までは基本的には取り崩す必要がないというメッセージを出していきたい。
委員A すぐ取り崩さなければならないと思っていたので、相当な危機感を持っていた。50 年先までは基本的には取り崩す必要がないというメッセージを打ち出したほうがいいと思う。
委員B 社会保険料の設定などの制度を考える場合は実質ベースでの検討が必要だろうと思うが、資産運用という観点では名目ベースで業務概況書などでも説明したほうがいいのではないか。
基本ポートフォリオ策定の委員たちの間でも認識に違いがあったようです。
質疑の中でも言及されていますが,実質と名目には共にメリットとデメリットがあって,目的によって使い分けた方が良さそうです。
委員B そのとおりである。
委員A 業務概況書の図はもう少しで残高を取り崩すと国民に誤解を与えるため、今回の議論とは関係ないが工夫したほうがいいと思う。
理事 もともとは国民の間に GPIF がロスを出したら年金をもらえないという誤解があったので、財源としては GPIF の積立金は 10%ぐらいであるということを説明してきており、一定の効果はあったと思う。GPIF の株式運用については、もう数年のうちに売らなければならないという誤解もあったので、基本ポートフォリオと合わせて 50 年先までは基本的には取り崩す必要がないというメッセージを出していきたい。
委員A すぐ取り崩さなければならないと思っていたので、相当な危機感を持っていた。50 年先までは基本的には取り崩す必要がないというメッセージを打ち出したほうがいいと思う。
委員B 社会保険料の設定などの制度を考える場合は実質ベースでの検討が必要だろうと思うが、資産運用という観点では名目ベースで業務概況書などでも説明したほうがいいのではないか。
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これですが、僕は認識が違います。
例えばN225は【内部留保ぶち込み太郎】って言ってもいいぐらい、内部留保をぶちこむ企業が多く、米国企業は内部留保して再投資をした方が利益成長率が高ければ内部留保し(例えばAMZNがその良い例)、内部留保してもROEが下がってしまうのならば配当を厚めに出す企業が多い感じです。
そうなると、日本と米国はグローバルに営業していても、考え方の違いで分けられないと考えています。
ただ、GPIFは個人投資家と違って、基本は分散投資なので、国内・国外と言う区分の廃止は分からない話ではありません。
そこは個人とGPIFの違いだろうなぁって思います。