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先日,マーサー社が例年発表しているグローバル年金指数ランキングの2019年版が公表されました。
マーサー 「グローバル年金指数ランキング」(2019年度)を発表 - 家計債務と老後資産の高い相関関係を明確化 -

各国の制度の総合指数は、「十分性 (Adequacy)」、「持続性 (Sustainability)」、「健全性 (Integrity)」に大別される40以上の項目から構成され、この3つの項目指数を加重平均して算出している。
37ヵ国の年金制度を比較し,上記のように40以上の項目にそれぞれポイントを付けて総合評価を出しています。その結果,日本は37ヵ国中で31位でした。

さて,こう考えると「日本の年金はダメダメで,ほかの国の年金は日本より良い年金が多い」と思う人もいるでしょうが,いい年金とはどんなものでしょうか?

この40以上の個々の質問項目を見ると,この調査での評価軸と一般人の思っているいい年金には大きなギャップがあるように思えました。


良い年金制度は良い経済に宿る

・対GDP比の政府の正味の債務が少ない
・経済成長率が高い

このような年金制度の枠にとらわれない経済の状況も評価項目に入っています。
上記2つは「政府債務は0%以下」「経済成長率は5%以上」で満点になります。日本には厳しい項目ですね。

家計が好調なら年金なんていらないんじゃね?

・世帯の貯蓄率が高い
・世帯の債務が少ない
・持ち家率が高い

こんな家計に関する項目もあります。これらは年金の十分性を評価する項目です。

「貯蓄が多いなら年金に頼らなくていいよね?」「持ち家あるなら家賃かからないから年金頼らなくていいよね?」というところでしょうか。

確かに年金に頼らなくていいほど資産があるなら年金がショボくても十分ということですが,年金が十分という方向ではなく,「年金が少なくてもいいほどに資産が十分なら年金制度OK」というのは発想の逆転?

高齢者はなるべく長く働いて,年金を受け取れる年齢はなるべく高齢で,年金受給期間は短いほどいい年金制度

・65歳以上で働いている人の割合が高いとよい (30%以上で満点)
・年金に最低受給年齢が定められていて,その年齢が高いとよい (65歳以上だと満点)
・平均寿命-年金受給開始年齢が短いほど良い (13年以内だと満点)

上記3項目は一般人の感覚からすると真逆ではないでしょうか?

「65歳以上では働かなくてもよくて,年金は早期から受給できた方がよくて,受給期間は長い方がよい」ということを思っている人は相当数いると思われます。しかし,その逆の評価軸です。

特に平均受給期間(平均寿命-年金受給開始年齢)は日本はワーストの24年超となっており,「24年も年金払ってたらいけない,支給期間は半分近い13年以内にしなさい」と言われているようなものです。

これを実現するには,年金受給開始年齢を現在の65歳から74歳くらいまで引き上げる必要がありますね。
こんな提案をする政治家がいたら批判の声がものすごいことになりそう……

年金はちゃんとリスク資産で運用しましょう

何かとGPIFの株式などリスクアセットへの投資が悪いことのように言われたりもしますが,ここでは適切な水準の運用が推奨されています。
growthassets

45%-65%をGrowth Assetsに向けるのがベストな割合としています。そして,それよりもリスクとらなすぎもリスクとりすぎもダメとしています。0%の方が100%よりもダメという点も面白い。


年金制度がどうあるべきかは真剣に考えないといけないのですが,このレポートのように広い視点や論理的に考えた場合の良い年金と一個人の利益で考えた場合の良い年金の間に大きなギャップがあると,政治的な決断を下すのが難しい問題であることがわかります。


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