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一般的に販売手数料・信託報酬などのコストは,インデックスファンドは低くて,アクティブファンドは高いという傾向があります。
その説明として「インデックスファンドは指数に連動を目指すだけなので銘柄選定の調査などがいらず、アクティブファンドは銘柄選定のための調査などが必要だから」といったように言われることもあります。

一読するともっともらしい説明にも聞こえますが,私はこの説明は違和感を持ち続けていました。
また,このような説明が意図していない誤解を生みそうな気もします。

かかるコストを積み上げて価格を決める原価積み上げ方式の考え方ですが,投資信託のコストは必ずしもそのように決まっているわけではありません。

例えば、「ワールド・ゲノムテクノロジー・オープン」というファンドがあります。このファンドは「世界主要市場のバイオテクノロジー関連企業の株式を実質的な主要投資対象」ということです。
簡単に言ってしまえば,株式のアクティブファンドでバイオテクノロジー企業の中から銘柄選定するというファンドです。
このファンドの信託報酬は税抜き1.90%(税込み2.052%)です。

税込みで2%超えの信託報酬ということで結構高いのですが、実際にそれだけ他のファンドよりコストがかかるものでしょうか?世界中にある無数の株式から銘柄選定するとなればものすごく膨大な銘柄から絞り込みを行うので大変かもしれませんが,すでにバイオテクノロジーと領域が非常に狭く絞られています。

そう考えると外国株式に投資するアクティブファンドの中でも比較的コストはかからない方だと思うのですが,実際は高めの信託報酬になっています。

他にもインデックスファンドでもニッセイなどが従来の同社のインデックスファンドよりも低信託報酬のインデックスファンドを出してきたりしていますが、これは従来のインデックスファンドよりも特別にコストが安いというわけではありません。古くからあるインデックスファンドと新ブランドの信託報酬の差は,原価積み上げ方式では説明がつきません。


値付けは企業の販売戦略しだい

端的に言ってしまえば,商品価格は企業の販売戦略で決まります。
その中で個々の商品の原価を意識することもあるのでしょうが,「ある商品では損をしてもトータルで儲けられればよい。損している商品は広告料みたいなもの。」という考え方もあるでしょう。つみたてNISAなどは儲からないけど宣伝(や顧客のことを考えているというブランドイメージを守るための)コストといったところも多いでしょう。
保険の世界でも学資保険はほとんども儲からない保険料設定にしていますが,それも顧客を呼ぶためのドアノック商品という位置づけとしているからです。

各投資信託の販売手数料・信託報酬もこのような各企業の販売戦略の思惑があって決まっているわけです。ある商品は赤字覚悟だが宣伝効果のため、ある商品は顧客からお金を巻き上げるため,といろいろな思惑があって値付けがされています。

単純な原価積み上げ方式の説明だけだと「信託報酬が高い=調査などに費用をかけている,信託報酬が低い=調査などにお金をかけていない」といったような誤解も招きかねないと思う次第です。



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