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財務省の福田事務次官がセクハラをしたとして報道され,辞任するといった話がここ数日いろいろと報じられてきました。これについて思うところがあるので書き留めておきます。

■Aが悪いのか,それともBが悪いのかと悪者を一つにしたがる傾向

ツイッターなどを見てみると,

「セクハラをした福田氏が悪い」
「いや,夜に女性記者を1人で派遣した上に、女性記者の被害申し出を無視したテレビ朝日が悪い」
「そんなこといってセクハラを容認するのか」

みたいな話を聞きますが,悪者を一つに決めようとしすぎじゃありませんかね?世の中はもっと複雑です。
酔っぱらい同士の喧嘩のようにどっちもダメってこともあるでしょうし,関係者がもっと多ければ,この部分はAが悪く,この部分はBが悪く、こことここはCが悪い,みたいなこともあるでしょう。

■テレビ朝日は会社としてどうなのよ

まず自らが認めているという点でテレビ朝日についていえば,明らかに会社としての対応はまずいでしょう。

記者に対して犯罪行為を行うものがいたら,それはその犯罪行為を行ったものが悪いのは当然です。しかし,会社であれば社員が犯罪行為に簡単に巻き込まれないようにする対策はとらないとダメでしょう。
麻薬密売組織へのインタビューを若い女性記者一人で行かせるかといえば,たぶん「NO」でしょう。犯罪行為に巻き込まれる可能性大です。複数人でいって男性スタッフやその組織とのパイプになれるような人も入れて……とある程度の対策を講じるのではないでしょうか。
さすがに事務次官と麻薬密売組織を全くの同列とは言えませんが,それでも男性相手の夜の取材で若い女性記者を1人で行かせるというのはちょっとわきが甘いんじゃないと思うわけです。

泥棒をする奴が悪いのですが,だからといって家の玄関を開けておいていいという話ではありません。そりゃ盗むやつは悪いのですが,「ドアが開いているからといって盗んじゃいけないんだ。盗むやつが悪いんだ。だからドアは開けっぱなしでもいいのだ。」というわけではなく,最低限自衛のためにもドアは締めておきましょう。できれば鍵もかけておきましょう。

普通の企業でもこのような配慮はしています。
治安が悪い地域に夜間に外を出歩くような仕事のさせ方をしない,宿泊は安全なホテルでなど当たり前です。目の前の相手がルールを守ってくれる人間ならいいのですが,そうとは限らないのです。
暴力を働いてきそうな事務所に行くときはその対策を講じるべきですし,セクハラしてきそうな取材対象の場合はセクハラ対策をすべき。

で,こういうことを書くと「女性記者は取材駄目で男性記者だけが取材できるのか」という反論もありそうですが,この反論も2つの意味で違うでしょう。

別に女性記者が取材してもいいのです。でも男性スタッフをアシスタントにつけるなり,安全に配慮しましょうというだけです。(もちろん男性記者でも単身で行くと危険な場合にはサポート必要)
また,男性の取材対象に女性が一人で行くのが…という話は,裏返せば女性の取材対象に男性が行くのがどうなのかという話なので,「性別の異なる取材対象に1:1で会うのは好ましくない」というのは必ずしも女性だけを差別しているわけではありません。(これを適用すると女性が活躍することが多い分野では男性記者が不利になるのかも)

■麻生財務大臣,上から圧力かけちゃいけないし,被害者への配慮を

で,次に財務大臣の麻生氏ですが,これへの対応は良くない。
テープだけ聞かされても本当に被害者がいるのかわからないから財務省に名乗り出てこいみたいなことを言っていました。これはだめでしょう。
性的な被害を訴える人に対して相手の組織に名乗り出てこいっていうのはまずいです。被害者が本当にいるのかという確認は重要です。しかし,それは財務省に名乗り出る必要はなく,信頼できる第三者が調査して調べればいいのです。

性被害の裁判だって被害者が余計な二次被害を受けないようにプライバシーには配慮しています。名乗り出ろというのは過剰な要求であり,恫喝です。

■容疑の段階でクロ扱いはやめようよ…

最後に本丸の福田事務次官ですが,これはまだよくわかりません。というのもセクハラがあったのかが確定していません。
テレビ朝日側がセクハラはあったといってもあくまでこれは一方の主張です。加害者とされる側は否定しています。このような場合,本当にあったのかという事実確認がされるまで判断は保留したい。
逮捕されると即犯罪者扱いされる風潮もありますが,その場合もあくまで容疑者です。
松本サリン冤罪事件,三鷹バス痴漢冤罪事件のようなこともあります。仮に「そうっぽい」と思っても事実と確定していない時点で断じるのは早計でしょう。

私自身も警察にお世話になったことがあります。
私の荷物を置き引きした犯人を見つけて蹴倒して荷物を取り返しました。するとそこにたまたま警察官がいて,私が蹴倒したということをもって警察署へ……この時点では私が一方的に暴力をふるって逮捕みたいなことですが,事実は異なるわけです。そのあとの事情聴取や一緒にいた友人や他のお客の証言などで私が被害者側であるということが理解され,無事に釈放されました。そして相手が窃盗容疑で起訴ということで私の調書も被害者側の調書となりました。
こんな自らの経験もあるので,事実認定あるまでは軽率に判断したくないところです。

セクハラはダメで相応の罰を受けるべきですが,セクハラ容疑はまだ容疑です。しっかり事実認定をしてセクハラの事実が認められたら,その際にしっかりと厳罰を食らわせればいいのです。



与野党は疑惑の段階ではとりあえずは責任を追求したり批判したりするのはやめ,事務次官のセクハラ疑惑という自体だったのですから真相究明につとめ,事実が明らかになり次第,その事実に基づいて処分をすればいいと思うんですが,なかなかそうはいきませんね。



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