衆議院選挙が終わりました。
政治的な駆け引きによる解散劇,小池都知事が率いる野望の党(希望の党)の設立,まさかの野党第一党の民進党が候補を出さずに野望の党代表の靴なめで全面屈服へ,排除された民進党議員による立憲民主党設立からの健闘,野望の党の急失速,など政治ショーとしては非常に面白いものでしたが,政治的駆け引き意外のテーマなき選挙でした。
そんな衆議院選挙を受けて,「投票したい候補がいない」「こんなくだらない選挙棄権でよし」といったような論調も聞こえてきました。
が,それっていいんでしょうか?
勉強してから言えというコメントあるけど勉強はしない。勉強してない興味ない人の声をあの場に届けるため。わからない人のために説明してることがわらかない人もいる。ほんとにわからないおれがあの場でわかるまで聞く必要がこの投票行かなかった人が多数いる日本には、ある。
— 村本大輔(ウーマンラッシュアワー) (@WRHMURAMOTO) October 23, 2017
声を大にして言う。僕は今年は選挙に行かなかった。全国民で選挙に行かなかったやつの方が多い。多数決の多数が国民の総意なら、選挙に興味なかった俺たちが国民の総意。わがままを言う。台風の中、選挙にいかせるぐらい政治に興味をもたせろ。
— 村本大輔(ウーマンラッシュアワー) (@WRHMURAMOTO) October 23, 2017
ちょっとこの村本氏のツイートを引用して,今回の話をしていきたい。
「勉強はしない」「全国民で選挙に行かなかったやつの方が多い。多数決の多数が国民の総意なら、選挙に興味なかった俺たちが国民の総意。」のコンボは,あえて言うなら「糞」。
今回の選挙の投票率は53.6%と有権者の過半数は投票に言っています。それなのに「選挙に行かなかったやつの方が多い」なんて発言はどういうことでしょう?
一つ考えられるのは「全国民」という言葉から選挙権のない赤ん坊なども母数に加えているという可能性。これはまさに暴論。有権者以外も母数に加えだしたら外国人参政権を訴える人たちは外国人も含めれば…とか無限に広がってしまう。
もう一つ考えられるのは無知。
たまたま選挙特番のチャンネルをいろいろ回していたらこの村本氏が出ている番組にチャンネルがあいました。
その時に村本氏は「今回の選挙で投票に行った人は少ない。午後7時時点の投票率が35%程度で……」のようなことを言いました。そこを司会の田原総一朗氏に「いや,前回の選挙からは増えている」のようにツッコまれていました。
このやり取りと上のツイートから「この人,午後7時時点の投票率が35%だから終了時点でも40%程度だったと勘違いしてんじゃね?」というのが私の推測です。実際には期日前投票なども加えられるというのにそれを知らずにいたと推測です。
で,実際の投票率も開示されたと言うのに"勉強しない"村本氏は,そこらのニュースを見ればそこら中に書いている53.6%という得票率の情報すら知らなかった。
お前みたいにバカじゃないよ。こうみえても政治プランナーと週一で議論して新聞も一応、朝日読売日経は社説込みで読むようにしてる。代弁してくれるコメンテーターは選べよ。おれの意見に少数はそうだそうだと言ってくれてる。おれがそこ代弁してもいいと思ってる。 https://t.co/GJTh8RoW2X
— 村本大輔(ウーマンラッシュアワー) (@WRHMURAMOTO) October 23, 2017
ちなみに僕個人は政治を扱う番組もやってるし朝生もバカ晒してでも知りないので出たいし政治のことでわからないことはジャーナリストの友人や政治プランナーの知り合いを呼んで、朝まで議論するぐらい関心はあります。だから個人的にはまた別の理由。これをツイートした意図は、選挙前に、 https://t.co/2bDa2732Kl
— 村本大輔(ウーマンラッシュアワー) (@WRHMURAMOTO) October 24, 2017
この村本氏,最初は自分は無知というスタンスだったのに,そのツッコミが多くなると,急に方向を変えてちゃんと勉強しているかのようにツイートしだしました。しかし,普通は「朝日読売日経は社説込みで読むようにしてる」と言うなら投票率が5割を超えたということくらい知っているでしょう。
何誌も新聞を読んでいるのに,この程度も理解していないならどんなに新聞を読んでも無駄です。
立憲民主は民主って名前がついてんだなら民の主でしょ。なら主人らしく、選挙に行かなかった人の気持ちを考えろよ。民衆の声が、刃になって暴走した与党を冷静にさせるんだから。刃を大きくする、つまり国民に政治に関心をもたせろ。
— 村本大輔(ウーマンラッシュアワー) (@WRHMURAMOTO) October 23, 2017
他にも民主は「民が主」ではなく「民の主」であると言ってみたりメチャクチャ。
……とこの村本氏のことを語るともっと書けるのですが,本題へ。
「国民」と「国」は分断された別の存在ではなく,国の最高権力者が国民
上記の村本氏に限らず「政治家が悪い」「国が悪い」といったように「国」と言ったものに責任の所在を求める人がいますがそうでしょうか?日本は国民主権の国です。国民主権ということは,国民が国家における最高権力者になります。
日本の国会議員は全員が日本国民の18歳以上(20歳以上)の有権者によって選ばれる(選ばれた)人たちです。「3割は軍から」といった国ではありません。国会議員はあくまで直接政治が無理なので関節政治をするための国民の代理人に過ぎません。
代理人はあくまで代理人に過ぎず,国民こそがその裏にいる最高権力者です。
代理人の活動の成否を決めるのは委託者の意志であり、指示
政治家は国民の「代理人」ということで,ちょっとスポーツ選手の代理人の話をしてみましょう。プロサッカー選手になったとしてクラブとの交渉のために大輪を雇おうと考えます。その時に「この人こそ運命の出会いだ!」と呼べるような人がいなかったらどうします?
いい代理人がいないと思っても自分の人生の針は止められません。クラブとの交渉はやってきます。その場合には,納得していなくてもマシな代理人に依頼するものではないでしょうか(自分でやるという選択肢はひとまず置いておく)。これをやらないと代理人もいないままに交渉という現実はやってきます。自分に不利な条件に気づかないままにおかしな契約を結んでしまうかもしれません。
議員選挙も同じです。政治はまさに自分の日々の人生がどうなるかに影響を与えます。「分からない」「興味ない」「いい人がいない」とか言っている場合ではありません。明日からの自分の人生をどうするかという局面でそんなことを言っている余裕はありません。
また,自分が明確な意思を示さなくては代理人が良い活動をしてくれるはずもありません。村本氏のように代理人(国会議員)が興味を持たせろというのは無茶苦茶です。
代理人は,専門知識がなかったり,そのために時間を使えない依頼人/委託者のために活動する人です。そもそもの依頼人がどうしたいかを示さないと代理人も良い活動はできません。
「欧州ビッグリーグのチームに移籍したい」「出場時間とかこだわらないからとにかく給与のいいことが大事」「出場時間の確保が大事」「大都市のチームがいい」「英語の通じるチームが良い」など依頼人が自分の意思を示すことで,代理人はその依頼人に応える活動を行います。
もし,代理人が依頼者にそぐわないことをやれば解任されてしまいます。
これも国会議員に当てはまります。
国会議員の前にまずは委託者である国民がどんな政治がいいのかという意思表示を持たなくてはいけません。依頼人である国民の信任を得ないと代理人の地位を得られない政治家は依頼者の声に答えようとするのです。
依頼者がろくに意志も持たずに「ねー,よくわからないけどなんかいい提案ちょうだいよー」「おれ,よくわからないからいいや。とりあえず任しとく」なんて言っているようじゃ代理人のいい仕事は期待できません。
一国の政治は、国民を映し出す鏡に過ぎない。 (サミュエル・スマイルズ)有名なこのセリフが表すように代理人達がろくな活動をしないのであれば、それ最高権力者である国民が無能だからでしょう。
勉強する時間がない?ベストパートナーがいない?幸せの青い鳥がいない?
「政治 is 自分の人生」です。目の前から石が転がってきている時に最高の盾がないとかそういう文句を言う余裕はありません。走って逃げるなり,受け止めようとするなり,ダメージを小さくするために丸まってみるなり,何か一番マシだと思われる行為を取らなけば正面衝突でオシマイです。
国家における最高権力者の一端である自身の生活である政治に対してはぬるいことを言っていたら良くなるものも良くなりませんよ。
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スポーツ選手の場合は、文字通り法的な代理制度の範疇の問題だからです。一方、国会議員と国民との関係は、法的ではなく政治的な代理関係に過ぎないからです。
具体的には、前者は、スポーツ選手の訓令に拘束され羈束される強制委任です。一方、後者は、民意に拘束されたり民意に反すると召還されることなどない自由委任なのです。
これで十分ご理解いただけるかと存じます。
なお、国民が主権者であることは自明ですが、だからといってすべての大衆が賢人である必要はありません。政治は、選挙にいくいかない、国(政府)のせいにするしない、政治家が悪いと思う思わない、といったことすべてに寛容であるべきです。
政治が「糞」ではない賢い有権者や大衆を所与とするならば、大半の者にとって、本当に生きにくい世界となることでしょう。