tsumitateNISA_fes2017

つみたてNISAについてはいろいろな意見があります。非課税期間,投資額,投資対象商品,税制,他制度との兼ね合い,etc…

様々な意見がありますが,ここでは私の考えるつみたてNISAの方向性を少し書かせていただきます。(ぼくのかんがえるさいきょうのつみたてにーさ?)

なお,これを書くにあたっては先日金融庁主催で開かれた「つみたてNISAフェスティバル」であった,つみたてNISAへの改善要望を軸にして話をしてみます。
つみたてNISAフェスティバルでは,個人投資家からの税制改正要望 ベスト5として,つみたてNISAに対する改善要望トップ5が公開されたようです。

スイッチングはやるなら強い制限とセットが良さそう

第5位はスイッチングでした。
20年という投資期間でリバランスもなしにずっと単一商品を持ちっぱなしでないといけないというのが気持ち悪いというのはよくわかります。しかし,単純にスイッチングを認めるというのは非常に恐ろしく,短期売買の導入商品にされてしまいそうです。

私が金融機関の営業なら「●●さん,今成長が見込めるのはブラジルを中心とした新興国ですよ,つみたてNISAを新興国ファンドにしましょう。」「●●さん,△△法案が通ったので,今年中はバイオがチャンスです。」のように短期的に乗り換える売買の練習をさせるなどを考えます。
ノーロードのつみたてNISA内の回転売買で儲けることはできませんが,仮にこのタイミング売買が上手くはまれば通常の口座(特定口座)にてブラジル株ファンドやバイオベンチャーファンドなどを買わせます。
投資に興味のないような一般ピーポーを取り込もうというつみたてNISAを回転売買まがいの導入商品とさせるようなリスクは取りたくないですね。

スイッチングを可能とするなら,iDeCoの拠出金額見直しのように年に1度などと決めるべきかもしれません。

投資対象商品はガッチリ絞ってよし

第4位はつみたてNISA対象商品の見直しでした。
インデックスファンドの信託報酬上限をもっと下げて欲しいという声もありますが,よりインパクトがあるのはアクティブファンドの要件の単純化でしょう。アクティブファンドの条件が複雑かつ難しいので,アクティブファンドが少なくなっています。

これに対してもっと自由でいいのではないかという声が上がっていますが,私は厳しく絞っていいと思っています。
つみたてNISAは,私のような投資マニア向けの制度ではなく,コアターゲットは素人の方々でしょう。アクティブ運用の枠を広げてしまうと,おかしな商品が入ってくる危険が高くなります。
仮に信託報酬条件のみにすると,信託報酬0.95%程度の4階建て投信を投入して買ってもらい,「実はつみたてNISAは信託報酬の制限があったので入れられなかったのですが,もっとお勧めの4階建て商品があります」などと言って売買手数料がかかって信託報酬も高いファンドをつみたてNISA外で営業するという方法も考えられそうです。

もちろん,絞ってしまうことで本当は優れていた商品が排除されるかもしれません。しかし,それでも構わない。素人対象なら,仮に100点満点の最高の商品を取り逃がしたとしても,30点のような赤点商品を排除する方が大事です。70点や80点くらいで満足しちゃっていい制度ではないでしょうか。

もっといろいろ自由な投資をしたいという方は,つみたてNISAの外でやればいいのです。つみたてNISAは強制されているわけではありませんから特定口座で自由な投資はできます。

NISA, ジュニアNISA、つみたてNISAの一本化は進めるべし

第3位はNISA制度の一本化でした。
来年からは「NISA」「ジュニアNISA」「つみたてNISA」と3つのNISA制度が並行して動くことになります。この制度の違いを理解して利用するのは難しい。投資マニアでもこれらの違いを正しく説明できる人は多くないと思えます。

ここは一本化でいいように思います。そして,素人向け&長期投資による資産形成という意図を考えると,つみたてNISAでいいのではないでしょうか。

投資額の上限アップは……できるなら

第2位は投資上限額の拡大でした。細かく分けると現状の年40万円という投資上限については2つの要望があります。毎月積立のために12で割り切れる数字にしてほしい,もっと上限を増やしてほしいという声です。
両方の要望に応える金額を考えると「400,008円」ですね。これで毎月33,334円ずつ積み立てられます。

嘘です。この要望を満たすのは,48万円 or 60万円でしょう。私個人のポジショントークをすると60万円かもっと多い金額が望ましいのですが,年60万円を積み立てられる家庭もそう多くなく金持ち優遇になりかねないこと & 他のものへの税金などとの関係を考えるとせいぜい48万円というところが無難な落としどころであるように思います。

毎年の税制や社会保障制度の変更で,給与収入などに対する負担が増えていく中,証券投資での税負担を減らすというのは難しいところです。私の仕事のポジショントークをするなら,「その分を新薬創出加算(新薬創出・適応外薬解消等促進加算)に回してくれ」でしょうか。


つみたてNISA制度の恒久化は大賛成。だが時期尚早か。

第1位は2つあり,1つは制度の恒久化でした。
今の法律ですと、つみたてNISAは拠出可能な最終年が2037年,その最後の年の非課税期間が終わるのが2056年であり,ここで制度が無くなってしまいます。
ここは恒久的な制度にしてほしいものです。現在,20歳以上人は40万円×20回の枠を使えますが,5年後に20歳になる人は40万円×15回と投資回数が減るというのは合理的に説明できるものではないと思います。国民のQOLが上がる効果もあるので認めてほしいところです。

しかし,いますぐ恒久化でいいかというとちょっと微妙なところです。投資額上限でも書いたように財源の関係もあり,ここでいきなりこの制度を恒久的な制度始めると言った場合には,他の予算を削られている制度側などからの反対も強いでしょう。

その場合に明確に押し返せる理由もあればいいのですが,いかんせん実績もありません。制度が動いていて実績が上がっていれば「ほら,これはすごい制度なんだから次元措置は勿体無い,続けるぞ。」と言えますが,まだそこには至っておらず,実績を作ってから……でしょうか。

また,NISA導入前にあった証券税制の軽減税率(本則20%の税金を10%へ)などの事例も気になります。軽減税率は「貯蓄から投資へ」を推進するドライバーとして導入されましたが,イマイチその効果が認められずに廃止となりました。つみたてNISAも,机上の理屈ではいい感じですが,実際に始めてみたら全く思わぬ結果になるかもしれません。そのようなことを考えるといきなり恒久的な制度として始めてしまうと後戻りもできないリスクもあるでしょう。

つみたてNISAを恒久化してほしいなら,投資家が制度をどんどん利用して「貯蓄から投資へ」を進めて資産形成を図っていくことが一番の声になりそうです。

非課税保有期間の無期限化は……可能なら

第1位のもう一つは非課税保有期間の無期限化でした。
現在は最長で20年という非課税保有期間を無期限にしてほしいという声です。制度の恒久化と合わせて非課税保有期間の無期限化が入るとつみたてNISAはすごい制度になります。仮に40年間を年額40万円で運用すると,元本が1600万円で最初の投資枠は40年間運用され続けていることになります。
しかし、早急にそこまでやる必要があるのかというと疑問です。

長期投資が根付いていない現状においては,20年は一応は長期投資と言っていい期間です。投資をやったことがない人たちに訴求する時に20年でも十分に長期投資として訴求できそうな気がします。
確かに非課税で保有できる期間が無期限の方が長期投資家にとっては有利なのですが,やはり他税制などとのバランスを考えると実績もない中で一足飛びに無期限で保有できるというのは優遇され過ぎな気もします。現状の20年で実績が出だしたら…でいいですかね。

長期投資をしている立場からは無期限化は非常に美味しく,ポジショントークをするなら「実現して」と言いたくもなりますが,他の制度も金額を減らされたりしている現状を考えると実績待ちで。


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