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NISA関係では新設されそうな積立NISAが話題になっていますが,今回は現行のNISA(年間拠出限度額120万円,非課税投資期間5年)の話です。

NISAはメリット・デメリットの両方が語られていますが,デメリットの筆頭は,非課税期間終了時に損失で終わった場合に税金面での救済が一切無いことでしょうか。

具体的には,100万円投資して非課税期間終了時に80万円まで減っていてNISA非課税口座から課税口座へ吐き出されると,80万円が評価元本とされてしまい,また100万円に値上がりして売却した場合に,損益0のはずなのに利益20万円として計算されてしまいます。(100万円→80万円→100万円で損益0なのに,80万円→100万円の+20万円という扱いに)

NISA外の通常の投資の場合には,ある投資信託や株式の損失は他の投資信託や株式の利益と相殺できますし,損失自体は最大で3年間繰り越すことができ,翌年以降の利益との相殺ができます。

つまり,「NISAは儲かれば非課税で嬉しいけど,損した場合にはNISA外の通常の投資口座よりひどい制度」ということです。
このデメリットに注目してNISAは使えない…という声もありますが,バイ&ホールド派はそんなに気にする必要はないのでは。
    1. NISAは10回勝負,トータルで勝てばOK
    2. 1回負けたってことは,次は勝ちやすいということでは?


NISAは10回勝負,トータルで勝てばOK

NISAの拠出可能期間は2014年〜2023年であり,10年間あります。勝ったら5年後まで持ちっぱなしというバイ&ホールドを取るのであれば,100万円×10年間の10本勝負とも言えます。

「株や債券の期待リターンが仮にプラスだとしても5年という短い期間じゃ,大きな相場変動でマイナスになることだってけっこうあるだろう」というのは真です。バブル以降低調な日本株だけでなく好調なアメリカ株や他の国々の株価指数などを見ても,投資期間を5年で切ると損して終わることは結構あります。

しかし,相場にそのような波があるとした場合,10年間の勝負のすべてが波の高いところで買って波が崩れたところで売るってことはないでしょう。
  • 2014年が相場が高めのところで,2018年が相場低迷期
  • 2015年が相場が高めのところで,2019年が相場低迷期
  • 2016年が相場が高めのところで,2020年が相場低迷期
  • 2017年が相場が高めのところで,2021年が相場低迷期
  • 2018年が相場が高めのところで,2022年が相場低迷期
  • 2019年が相場が高めのところで,2023年が相場低迷期
  • 2020年が相場が高めのところで,2024年が相場低迷期
  • 2021年が相場が高めのところで,2025年が相場低迷期
  • 2022年が相場が高めのところで,2026年が相場低迷期
  • 2023年が相場が高めのところで,2027年が相場低迷期
こんな現象は起こらないでしょう。

2001年のITバブル崩壊,2008年のリーマン・ショックなどの直撃を受けたタイミングで売却となった場合には,大きなマイナスです。しかし,毎年その状況ではありません。相場に波があるのであれば,別のタイミングで買ったモノの売却タイミングは別のタイミングであり,10本勝負全体を見ればそう悲劇的な状況にはならないのでは?

1回負けたってことは,次は勝ちやすいということでは?

上でも少し触れましたが,相場に波があって負けることがあるということであれば,勝ちやすい局面もあるとも言えます。過去の相場の値動きを参考にして考えてみます。(実際のNISAは2014年開始ですが,昔にその制度があったと仮定して)

2005年に購入した場合,リーマンショックを受けて相場が暴落していた2009年が5年目にあたるので2009年末で課税口座に移った際には,通常の投資信託をバイ&ホールドしていた場合はまずマイナスでしょう。2005年投資枠分は負けです。
その一方で,2009年投資枠分はその暴落タイミングで買えています。2013年末売却では利益もでます。翌年の2010年投資枠も2014年売却なら利益でしょう。

10年というある程度の相場循環がある期間で投資すれば,10打数のうち「高く買って安く売ることもあるでしょうし,安く買って高く売ることもあるでしょう」という話であり,そんなに1打数1打数で必ずヒットを打たないといけないと思う必要はありません。


シミュレーション: ここで効いてくるのは期待リターンがプラス(という仮説)

でも,うまくいく場合もあれば,失敗する場合もあるでは,トータルでも損して終わることがありえます。その場合にはトータルでもNISAなど使わずに特定口座でやっておけばよかったということになりかねません。
これはその通りなのですが,トータルで負ける可能性は高いのでしょうか?

ここで効いてくるのは「期待リターンがプラス」です。シミュレーションしてみます。
期待リターンとリスクを想定して,X年間持った場合のシミュレーション…という場合,ファンドの海の連載シリーズが思い浮かぶ私としては,そのシリーズを参考にしてみます。

【参考】ファンドの海の連載:リスク資産の複利確率(21)〜新しいシミュレーションを試してみるでは,年率の期待リターン5%,リスク30%という商品を10年間保有した場合のシミュレーションをしています。

では,5年ならどうなるのかやってみました。

1回限りだと,期待リターンは+30%,元本超えは53%

期待リターンは+30%程度ありますが,元本以上で終わる確率を求めると53%といったところです。大きく損失を出した場合にはリカバリーが難しいということで,期待リターンの数字と比較して勝率は低く見えます。しかし,それでも53%と5分5分以上の勝率があります。

5年間投資10本勝負の勝率は8割

そこで「期待リターン5%,リスク30%の投資商品を5年間バイ&ホールドで10本勝負」を1000回ほどシミュレーションしてみました。
    • 元本を以上で終わった回数: 868回
    • 元本を下回って終わった回数: 132回
シミュレーションを再度行うと多少誤差は出ますが,8割程度は元本を上回って終わりました。

8割は元本を上回って終わる(=特定口座で損益通算より有利)のであれば,結構分がいい賭けではないかとも思うのです。しかも買った場合の勝ち幅の期待値は大きい。それなりの妙味はあるのでは。

※実際の投資環境では期待リターンとリスクも違います
※実際のNISA投資環境では投資期間が重なるので,完全独立した10回の試行とは異なります


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