年金損失5兆円追及チーム,覚えていますでしょうか?
2015年度の年金積立金の運用実績について一部で「5兆円超の損失」と報じられたことを受け、民進党は6日、「年金損失『5兆円』追及チーム」を発足させ、第1回会合を開いた党「年金損失『5兆円』追及チーム」が、運用比率を変えなければ損失なかったと試算 (民進党HP)
上記のように2016年4月に民進党が立ち上げたチームです。
その後,2016年第一四半期の5兆円の損失などもあって,いろいろ活動されていましたが,最後に公開されているのが,8月27日の公的年金「運用見直し後通年赤字」判明、年金損失5兆円追及チームが検証求めるです。
「1年3カ月で10兆円を超える国民の大切な年金が失われてしまったことになる。非常に由々しき問題。単に株が下がったからではなく、アベノミクスと称して一昨年10月に年金積立金の株式への運用比率を倍増したことが大きな原因となって10兆円を超える年金が失われた。さらに、そのことによって1昨年の10月以降通算で運用損益が初めてマイナスになってしまった。これはつまり株式運用比率を倍増したことが失敗だったのではないか。大切な年金が犠牲になっているのではないかという危機感を感じる」と語った。
「ポートフォリオを変えなかった場合の昨年度の損益」に関して示すよう山井議員が求めた
長妻代表代行は「ポートフォリオを変えなかった場合の損益がいくらだったかについて、われわれが政権をもっていたら間違いなく出した。検証を行わないのは国民軽視だ」としてデータの提出を強く求めるとともに、「経済の失速も懸念されるなかで、年金積立金で株価を買い支えたのではないか」と指摘し、引き続き追及していく考えを表明した。
いろいろ力強く宣言されていますが,大きな損失を出したという結果に対して追求しています。まあ,それはそれでいいのですが,以下のようなニュースも出ています。
GPIF:運用益2.4兆円、株価底入れと円高頭打ちで−7〜9月期 (ブルームバーグ)
さらに,直近(2016年11月末時点)では9月末よりも株高&円安が進んでいます。
為替もドル円が12.94%ほど円安に振れているように全体的に円安傾向なので,外国債券や外国株式の評価も上がっているでしょう。実際,先進国株式の投資するインデックスファンドの基準価額を見ると11%台の上昇です(たわらノーロード先進国株式が11.50%の上昇)。
GPIFのポートフォリオには国内債券が35%ほどあるので,こんなには増えていないでしょうが,かなりのリターンが出ているはずです。
結果重視の「年金損失5兆円追及チーム」ですが,この第二四半期や10,11月の株高・円安で運用成績がプラスの場合には何と言うのでしょうか。
上に引用した山井和則衆院議員の言葉を借りるなら「5カ月で10兆円を超える国民の大切な年金が増えてしまったことになる。非常に嬉しい問題。単に株が上がったからではなく、アベノミクスと称して一昨年10月に年金積立金の株式への運用比率を倍増したことが大きな貢献となって10兆円を超える年金が増えた。さらに、そのことによって1昨年の10月以降通算で運用損益がプラスになった。これはつまり株式運用比率を倍増したことが成功だったのではないか。大切な年金が増やされているではないかという危機感を感じる」ですかね?
大きな損失時に叩くなら大きな利益が出た時には称賛しないと,批判だけする政党になってしまいます。
GPIFの運用を政治の論点にするなら,結果に触れずにポートフォリオの決め方の筋が悪いという点で戦わないと厳しいのではないだろうか。
ここは「アベノミクスの株価対策に使われた」「(結果はともかくとして)リスク取りすぎ」という主張なら一定の理解は得られると思うのですが,損益という結果で勝負してしまうと,国内外の債券にバランスよく投資している現在のGPIFのポートフォリオに文句つけるのは分が悪い。株式比率の高さについては長期間の運用になるほど株式比率が高い方がいいという声も強い長期投資の王道ですから。
※参考: 民進党は公的年金(GPIF)を短期的な利益を狙うファンド扱いするな
GPIF:運用益2.4兆円、株価底入れと円高頭打ちで−7〜9月期 (ブルームバーグ)
GPIFが25日午後に公表した今年度第2四半期(7−9月)の運用状況によると、収益率は1.84%、収益額は2兆3746億円。いずれも今年前半の不振から持ち直した。
さらに,直近(2016年11月末時点)では9月末よりも株高&円安が進んでいます。
- TOPIX: 1,322.78 → 1,469.43 (+11.09%)
- USD/JPY: 101.33 → 114.44
為替もドル円が12.94%ほど円安に振れているように全体的に円安傾向なので,外国債券や外国株式の評価も上がっているでしょう。実際,先進国株式の投資するインデックスファンドの基準価額を見ると11%台の上昇です(たわらノーロード先進国株式が11.50%の上昇)。
GPIFのポートフォリオには国内債券が35%ほどあるので,こんなには増えていないでしょうが,かなりのリターンが出ているはずです。
運用結果で評価する年金損失5兆円追及チームは今度は褒めたたえるのか?
「年金損失5兆円追及チーム」は民進党自身が言っているように,損失を出したという結果を受けて立ち上げられたチームです。結果が出る前から「ポートフォリオでリスク取りすぎ」と言っていたチームではありません。結果重視の「年金損失5兆円追及チーム」ですが,この第二四半期や10,11月の株高・円安で運用成績がプラスの場合には何と言うのでしょうか。
上に引用した山井和則衆院議員の言葉を借りるなら「5カ月で10兆円を超える国民の大切な年金が増えてしまったことになる。非常に嬉しい問題。単に株が上がったからではなく、アベノミクスと称して一昨年10月に年金積立金の株式への運用比率を倍増したことが大きな貢献となって10兆円を超える年金が増えた。さらに、そのことによって1昨年の10月以降通算で運用損益がプラスになった。これはつまり株式運用比率を倍増したことが成功だったのではないか。大切な年金が増やされているではないかという危機感を感じる」ですかね?
大きな損失時に叩くなら大きな利益が出た時には称賛しないと,批判だけする政党になってしまいます。
GPIFの運用を政治の論点にするなら,結果に触れずにポートフォリオの決め方の筋が悪いという点で戦わないと厳しいのではないだろうか。
ここは「アベノミクスの株価対策に使われた」「(結果はともかくとして)リスク取りすぎ」という主張なら一定の理解は得られると思うのですが,損益という結果で勝負してしまうと,国内外の債券にバランスよく投資している現在のGPIFのポートフォリオに文句つけるのは分が悪い。株式比率の高さについては長期間の運用になるほど株式比率が高い方がいいという声も強い長期投資の王道ですから。
※参考: 民進党は公的年金(GPIF)を短期的な利益を狙うファンド扱いするな
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