投資信託に限らず、ファンドと言われるものの多くに求められるものだと思うのですが、特に一般向けの公募投資信託では客観的に評価できる基準が欲しい。
評価できる基準≠いわゆるベンチマーク
本題に入る前にいくつか細かい話をします。(一度目は読み飛ばしていただいてもOKです)評価できる基準というと、多くの投資信託が設定しているベンチマークが思い浮かびますが、ここでいう評価できる基準はベンチマークに限りません。
ベンチマークがなじまないファンドがもある
細かい話ですが、投資信託を「インデックスファンドかアクティブファンドか」に分ける分類がありますが、そのどちらにもカテゴライズできないファンドがあります。例えば、ラダー型のパッシブ運用をするファンドです。日本債券ファンド(毎月分配型)はパッシブ運用の代表的なラダー型の運用をすると決められているファンドです。対象指数が存在しないのでインデックス運用ではありません。しかし、パッシブファンドであり、アクティブファンドではありません。
このようなファンドの場合、連動を目指すべきベンチマークは存在しませんし、積極的に何かの指数を上回ろうと努力することもできません。ベンチマークという考え方がなじまないファンドです。
評価できる基準って何よ?
本題です。代表的なのは対ベンチマーク
先にベンチマークがなじまないファンドがあるとも書きましたが、それでも評価できる基準の代表的なものは、多くのファンドが設定している「特定の指数を上回る成績を残すことを目指す」といったベンチマークでしょう。これはシンプルで、評価する期間においてリターンがベンチマークを上回ったか下回ったかで評価すればいいのです。
仮に1年間のリターンでファンドが+10%のリターンの時にベンチマークが+15%なら、1年間の評価では、このファンドはダメダメとなります。非常に分かりやすい。
絶対的な数字は評価指標になる
特定の指数との勝負ではなく、絶対的な数字を掲げる方法もありそうです。ヘッジファンドが絶対リターン追求などと言われますが、そのように相場環境に関係なく「年率+○%のリターンを目指す」というのも明確な評価指標になります。
この派生として「リターン○% & リスク○%以内」のようにリターン以外の数字も評価指標に入れることもできるでしょう。このリターンとリスクの組み合わせとしては鎌倉投信の結い2101があります。結い2101ではベンチマークはありませんが、「年率リターン4%、リスク10%」が掲げられており、客観的な評価指標になります。
実際の運用が運用方針に従っているか - これが一番大事
対ベンチマーク、絶対的な数字、は共に明確な数字による比較でした。それは明確に分かりやすいのですが、それ以外の評価基準もありそうです。掲げられた運用方針と実際の運用の中身が一致しているかは非常に重要でしょう。場合によってはリターンやリスクよりも重要です。仮に日本株に投資するファンドと謳いながら日本株を買わずに外国株を買っているようなファンドがあったとしたら、パフォーマンスが良かったとしてもダメファンドです。 (そもそも許されるのか?)
日本株に投資すると思って投資していたのに新興国株に投資されていたなんて日には、
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ
おれは日本株に投資するファンドを買っていたと思ったら
いつのまにか新興国株に投資していた。
な… 何を言っているのかわからねーと思うが
おれも何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
催眠術だとか金融工学だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
上の話は極端すぎますが、バリュー投資と言いながらどこがバリューか分からないような株をいろいろ買ったり、長期保有と言いながら短期で売買してる、といったファンドはあるでしょう。
ひとつの例として、私が批判的に取り上げたさわかみファンドを挙げます。
『さわかみファンド』は、経済の大きなうねりをとらえて先取り投資することを運用の基本とし、その時点でもっとも割安と考えられる投資対象に資産を集中配分します。そのなかでも市場価値が割安と考えられる銘柄に選別投資し、割安が解消するまで持続保有する「バイ・アンド・ホールド型」の長期投資を基本とします。
※運用方針より
これがさわかみファンドの運用方針です。美しい投資方針です。
しかし、実情は違いました。最近はまた運用スタイルが変わっていますが、かつては集中配分と言いながら300銘柄ほどに投資していたり、割安が解消するまで保有と言いながら「ごめんなさい売り」なる迷言を言いながら損切りしていたりしていました。
掲げられている運用方針と実際の運用方針の間にずいぶんの隔たりがありました。
しかし、彼らは(ズルいことに)明確な評価指標を掲げていません。集中配分と言いながら300銘柄に分散投資しているのは言動不一致と思えるのですが、明確に基準を掲げていない以上、「300銘柄はTOPIXに比べれば集中だろう」ということなのかもしれません。だったらそう書けよ……とも思うのですが、如何せん具体的な内容が一切ないので、これでは運用方針はあってないようなものです。
対ベンチマーク比や絶対評価のリターンはよくファンドの評価に使われることがありますが、ファンドの評価基準として運用方針と運用の一致性はもっとファンドの評価に使われて欲しい。
この考えに基づけば、必ずしも高いリターンを目指さないというファンドもあっていいはずです。特定の領域に投資したいという人達のお金を集めてそこに投資するファンドだっていいでしょう。
投資信託ではありませんが、ミュージックセキュリティーズのファンドなどはまさにその例です。
今、ファンド情報を確認したら「アロマスター自由が丘出店ファンド」「職人が握る、作る 松葉寿司ファンド」などがありました。これは如何に市場の隙間をついて高いリターンを確保するか……といったファンドたちとは別の性格を持つファンドです。これらのファンドにとって大事なことは、その目的でしっかりと投資されているかであり、リターンはその後です。
最後に大事なことをまとめ
- 投資信託は何らかの形でファンドを評価できる基準が欲しい
- 評価できる基準は対指数のベンチマークである必要はない
- 運用方針と実際の運用内容の一致性はファンドの評価で最重要
【関連コンテンツ】