先日、名目と実質の数字ははっきり区別しましょう - 名目/実質リターン他と書きましたが、この名目と実質の違いを理解するための例を一つ思いつきました。
「テストで10点しか取れない子が100点を取れるようにします。」
満点を10倍にします。以上。
実質的にその子が賢くなったり成長したわけではありませんが点数をインフレ化させることで名目の点数は増やすことができます。(100点満点のテストなら1000点満点にします。これなら100点満点で10点の子は100点になります。)
ここからが今回の本題です。
前回のテーマでも重要な役割を果たしたインフレ率が主役です。
老後資金は3000万で足りると試算された方、本当に3000万円で足りますか?
経済環境が大きく変わって日本が破綻しているから年金も無ければ、公的医療保険も無い……というような話ではありません。TPPによって自由診療だらけで医療費が暴騰したり、原発再稼働後の事故で日本が壊滅状況……というような話でもありません。普通の経済環境の中の話です。
その中で老後資金は3000万円で必要と考えた時に3000万円で足りるでしょうか?
老後を迎える時点(65歳?)で3000万円の現金があれば足りるでしょうか?
見落としはありませんか?
3000万円の価値はいくら?
現時点で30歳の人が引退年齢とも言える65歳を迎えるのは35年後です。今から35年前(1980年)を振り返ってみます。
以下のグラフはIMFのデータから1980年~2015年の日本とアメリカの物価の動きです。(1980年=1)
アメリカは、この35年で物価が2.88倍になっています。
世界的にも珍しい低インフレが長らく続いていた日本でも1.35倍です。
インフレが進むということはお金の価値が下がるということです。
仮に過去35年のアメリカのように35年間で物価が2.88倍になるならば、お金の価値は1/2.88になります。
このような場合、35年後の3000万円は今の1042万円の価値しかありません。
「一時払いの年金保険で65歳時点に3000万円の保険金を確保してあるので老後資金は確保済み。他のお金は残さなくてOK。」のように、インフレを考慮せずに3000万円を必要額だと思っていたら危険です。
3000万円を用意したのに、実は現在でいうところの1000万円程度のお金しか用意できていないことになりかねません。
老後資金を見積もる際には、今の物価水準で計算されていることがほとんどです。しかし、自分が老後生活に入ったらその時の物価水準で支出が発生しますのでインフレ率を考慮に入れないと危険です。
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