信託報酬が安い投資信託を求めて、運用会社による投資信託の直接販売を求める声があります。
販売会社を通さずに売ることで販売会社に取られる費用(だいたい信託報酬の約半分)が削減されて、最終消費者である投資家に低コストで商品を提供可能になるという話です。家電や食料品など一般の商品でも卸など中間の業者を省くことで、そこで取られるマージンを減らして低価格で商品を提供している場合もあります。
また、投資信託の場合には、直販で低信託報酬の商品を提供している代表的な会社としてアメリカのバンガード (Vanguard)があり、このモデルを意識されての声でもあります。
では、投資信託は直販にすれば安くできるのでしょうか?
生産者が量販店やスーパーに商品を卸す場合もあります。何故自前で販売店を設けて売らないのか?
ネット販売でもAmazonや楽天市場などで商品を売っている会社は多数あります。楽天市場の数字で見る楽天によると2015年3月末時点で41,458店舗も参加しているようです。彼らは何故自前で売らないのか?
小さな会社が直接販売しようとすればコスト負担が大きくなります。販売のために店舗を作るとなると非常に大きなコストがかかります。ネット販売にしてもその作成及び運用コストはバカになりません。むしろ、外部のプラットフォームに乗る方が損益分岐点が低くなり、最終商品価格は安くなるということが往々にしてあります。
大きな量販店がまとめて1000台買ってくれるから安く出せても、1000人の顧客に自分たちで1000台売るとなると販売コストが多大にかかります。後者の販売価格は量販店への卸価格よりもはるかに高額になっても仕方ありません。
投資信託において大手の金融機関に商品を卸せば、販売は彼らがやってくれます。
野村證券などは気合を入れて営業をすると、新規投信の設定時点で1000億円以上を集めるような販売力があります。これなら運用会社の取り分が0.3%でも3億円入ってきます。
一方、運用会社が自前で販売活動をした場合、どれほど売れるでしょうか。直販で低コストということだとセゾン投信が思いつきますが、セゾン投信は2014年11月に取り扱いファンド合計での純資産総額が1000億円を突破して、ようやく黒字化したというところです。1000億円突破まで足掛け7年8カ月かかっています。採算ラインに乗るだけでも長い時間がかかります。
現在の投資家の資金の流れを見ていると、直販で低コストな商品を取り揃えたからといって簡単に資金は流れてこないでしょうから、ビジネスとして考えた時には選びにくいところかもしれません。
バンガードの平均Expense Ratioは2014年末時点で0.18%ということで、今では世間一般の平均より約80%も低い水準です。 (参考:Put Vanguard's differences to work for you | Vanguard)
しかし、長期で見ると、昔はそれほど安いわけではありませんでした。確かに業界平均よりは低いですが、とびぬけて低いというほどではありません。
資産の増加に伴ってExpense Ratioは低下して業界平均との差が開いています。直販という仕組みは1977年から採用していますが、直販だから費用が下がったというわけではなく、低コスト化が進んだのはスケールメリットによるものとも読めます。
アクティブファンドの場合は説明が大変だからもう少し要求されるかもしれませんが、ニッセイ日経225インデックスファンドに代表されるような最近のニッセイの低信託報酬インデックスファンドを見ていると直販しなくても販売コストを下げる余地はあるように思えます。
そういうわけで、幾度と書いていますが「信託報酬の提言を望むなら投資家として信託報酬が安い/安くしようとする投資信託に資金を集めましょう。」ということを言って終わりたいと思います。
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販売会社を通さずに売ることで販売会社に取られる費用(だいたい信託報酬の約半分)が削減されて、最終消費者である投資家に低コストで商品を提供可能になるという話です。家電や食料品など一般の商品でも卸など中間の業者を省くことで、そこで取られるマージンを減らして低価格で商品を提供している場合もあります。
また、投資信託の場合には、直販で低信託報酬の商品を提供している代表的な会社としてアメリカのバンガード (Vanguard)があり、このモデルを意識されての声でもあります。
では、投資信託は直販にすれば安くできるのでしょうか?
直接販売すれば安くなるわけではない
直接販売することで中間業者を省くのはコスト削減の方法の一つです。しかし、それは直販にかかる費用と中間業者のマージンを天秤にかけないといけません。生産者が量販店やスーパーに商品を卸す場合もあります。何故自前で販売店を設けて売らないのか?
ネット販売でもAmazonや楽天市場などで商品を売っている会社は多数あります。楽天市場の数字で見る楽天によると2015年3月末時点で41,458店舗も参加しているようです。彼らは何故自前で売らないのか?
スケールメリット(規模の経済)は大事
そこがスケールメリットです。小さな会社が直接販売しようとすればコスト負担が大きくなります。販売のために店舗を作るとなると非常に大きなコストがかかります。ネット販売にしてもその作成及び運用コストはバカになりません。むしろ、外部のプラットフォームに乗る方が損益分岐点が低くなり、最終商品価格は安くなるということが往々にしてあります。
大きな量販店がまとめて1000台買ってくれるから安く出せても、1000人の顧客に自分たちで1000台売るとなると販売コストが多大にかかります。後者の販売価格は量販店への卸価格よりもはるかに高額になっても仕方ありません。
投資信託において大手の金融機関に商品を卸せば、販売は彼らがやってくれます。
野村證券などは気合を入れて営業をすると、新規投信の設定時点で1000億円以上を集めるような販売力があります。これなら運用会社の取り分が0.3%でも3億円入ってきます。
一方、運用会社が自前で販売活動をした場合、どれほど売れるでしょうか。直販で低コストということだとセゾン投信が思いつきますが、セゾン投信は2014年11月に取り扱いファンド合計での純資産総額が1000億円を突破して、ようやく黒字化したというところです。1000億円突破まで足掛け7年8カ月かかっています。採算ラインに乗るだけでも長い時間がかかります。
現在の投資家の資金の流れを見ていると、直販で低コストな商品を取り揃えたからといって簡単に資金は流れてこないでしょうから、ビジネスとして考えた時には選びにくいところかもしれません。
バンガードだって安くなかった
また、直販で知られているバンガードですが、彼らは同時に3兆ドル(1ドル=120円とすると約360兆円)以上の資産を運用する世界最大規模の資産運用会社でもあります。バンガードの平均Expense Ratioは2014年末時点で0.18%ということで、今では世間一般の平均より約80%も低い水準です。 (参考:Put Vanguard's differences to work for you | Vanguard)
しかし、長期で見ると、昔はそれほど安いわけではありませんでした。確かに業界平均よりは低いですが、とびぬけて低いというほどではありません。
資産の増加に伴ってExpense Ratioは低下して業界平均との差が開いています。直販という仕組みは1977年から採用していますが、直販だから費用が下がったというわけではなく、低コスト化が進んだのはスケールメリットによるものとも読めます。
今の日本に必要なのはコストを引き下げようとする運用会社への資金流入か
信託報酬0.25%(税抜)のニッセイ日経225インデックスファンドで販売会社に支払われている信託報酬は0.11%です。もうひと頑張りするとして「販売会社を通すコスト」は0.1%弱程度にはできるでしょうか。アクティブファンドの場合は説明が大変だからもう少し要求されるかもしれませんが、ニッセイ日経225インデックスファンドに代表されるような最近のニッセイの低信託報酬インデックスファンドを見ていると直販しなくても販売コストを下げる余地はあるように思えます。
直販は最終的な低コスト化の下限を下げる手段か
長期的(超長期的)にみて、Lv99の「販売会社経由」vs「直販」という究極生物同士の対決となった際には、販売を自前で持った「直販」の方が低コスト運営できるといった類のものかもしれません。そういうわけで、幾度と書いていますが「信託報酬の提言を望むなら投資家として信託報酬が安い/安くしようとする投資信託に資金を集めましょう。」ということを言って終わりたいと思います。
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