Pension_handbook_Japan_年金の支給水準引き下げを受けて受給者が国を集団訴訟で訴えるというニュースがありました。
年金にはマクロ経済スライドがあるので物価水準に応じて年金額が調整されるはずした。ところがデフレ下ではマクロ経済スライドが発動しないという欠点のある制度であったために、年金支給額が従来の想定よりも多くなってしまっていたことを解消するための引き下げへの訴集団訟です。



年金減額で初の集団提訴…鳥取「生存権を侵害」 (YOMIURI ONLINE)
 国が2013年から段階的に実施している年金の減額は憲法違反として、鳥取県内の国民年金や厚生年金の受給者24人が17日、国に減額決定の取り消しを求め、鳥取地裁に提訴した。
 原告側は13年10月に実施された1%減額の決定取り消しに絞って争う方針で、「特例水準は物価上昇で解消する想定だったはずで、一方的に減額するのは不当」と主張。

物価に連動させるはずの公的年金の受給額が、その仕組み故にデフレ下においてマクロスライドが発動せずに本来想定されていたよりも高い水準の受給をしていた問題です。これを解消するために段階的に引き下げを行うこととなったのですが、これに対して集団訴訟ということです。

この裁判に対しては「貰いすぎだったんだから適正水準に戻されることで文句を言うな」のように原告たちに対して否定的な意見が多くみられるように思います。私も同じような感想を持ちます。

しかし、その一方で、裁判として訴えたいというのも理解できます。
年金"保険"として考えた時に、この変更はちょっと腑に落ちない。

同じ「保険」という名前もついていることですし、民間保険会社の保険を考えます。
民間の保険会社であれば、変額年金など運用成績で受給額が変わる場合は別ですが、一般的に契約時に積立額や将来の受給額を決めて契約します。この約束した金額は原則として変更されることはありません。一度契約した保険については、一方的に保険会社の都合で保険料を引き上げたり受給額を引き下げられません。破綻もしていない生命保険会社が予定利率の引き下げ等を行うことは非常に難しく、以下の2つの条件が満たされて、やっと引き下げられるというルールになっています。それでも責任準備金は引き下げられないですし、保険料を値上げすることもできません。
    • 今そこに破綻の危機にあると認定された
    • 引下げ反対が契約者/契約額の10%以内


さて、このような基準で考えた時に、公的年金保険はどうでしょう。
これは散々です。被保険者の同意なく支給開始年齢や保険料は引き上げられますし、支給水準は減少したりします。選挙で選ばれた国会議員が法律改正を行っており、その同意によって保険業法があるから…というロジックかもしれませんが、たった10%の被保険者の同意で引下げ却下の民間に比べるとずいぶんと甘い水準です。そんな中、「百年安心プラン」などとふざけた宣言もしており、お前はアブラハム・プライベートバンクかと・・・…

本来の想定水準より貰いすぎだったのを適正にしようとしたら訴える人も訴える人ですが、契約済みの保険の内容を被保険者の同意なく被保険者に不利に変更するような保険もロクなものではないとも思えます。公的年金自体が訴えられること自体には理解を示したいところでもあります。(無理を言っていますが、金融庁の検査を受けてほしいような気もする)


公的年金の説明のトップに大々的に目立つように書いてほしい注意書き

公的年金には以下のような注意書きを書いてほしいものです。
  • 本保険は、被保険者の同意なく勝手に保険料が引き上げられる可能性があります(上限はありません)
  • 本保険は、被保険者の同意なく勝手に支給開始年齢が引き上げられる可能性があります(上限はありません)
  • 本保険は、被保険者の同意なく勝手に支給額が引き下げられる可能性があります(下限はありません)







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