Global Investment Returns Yearbook 2014


ちょうど日経新聞に「債券は株より安全」という思い込みは危ないという記事もありましたが、そんな感じの話です。

意識が高い煽りタイトルをつけると次のようなタイトルになりそうな話でもあります。
  「債券に投資してはいけない3つの理由」
  「なぜ、債券ではあなたの資産を守れないのか」
  「資産を守りたければ債券ではなく株式を買いなさい」


先日書いた1900年からの超長期データで見る、単一国への集中投資の危険性1900年からの超長期データで見る、国際分散投資でどれほどやられうるのか?でグラフを眺めていて気がつきました、

万が一の時(数十年/百年に一度の危機?)、現金や債券は株式よりも大きくやられる?

1900年からの超長期データで見る、単一国への集中投資の危険性で紹介した危機があった国のグラフを再掲します。
1990-2013_worldstocks
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『Global Investment Returns Yearbook 2014』より

1900年からの114年間では、多くの国で株式や債券がやられた時がありますが、実は最大の危機の時は株式よりも債券の方が大きくやられている国がけっこうあります
戦争などによる国家の危機においては国債は安全資産にならないということでしょう。
第二次世界大戦の敗戦国であるイタリア、ドイツ、日本は第二次世界大戦で大きくやられています。敗戦国に限らず戦勝国であるフランスなどでも債券が大きくやられています。
また、第一次世界大戦からその後にかけてのイギリスでは、株式はそう下がっていないのに債券は大きく下げています。

通常の値動きは株式の方が荒いですが、いざという危機においては債券も安心できません。
歴史から見ると、数十年~百年に一度というような危機においては債券は防衛資産にならないかもしれないと言えそうです。


短期債券/現金も安全ではない

また、短期債券(Bills/グラフの赤線)も大変に興味深い値動きをしています。いざという危機においては大きくやられているところが多く、長期の国債以上にやられている国もあります。また、ポルトガルでは1910年代〜1920年代にかけてBillsだけが大きく負けていることも興味深い。

債券/現金の裏付けは信用のみ信用の上に成り立つ危うい存在

債券が危機時に大きくやられているのは、国債も現金も国家の信認の上に成り立っている存在なので、その信認が崩れれば吹き飛んでしまうということでしょう。

その一方で、普段は債券の何倍も値動きする株式が国家の危機では意外と粘っているのが面白い。
株式は投資先が企業であり、企業自身は土地・特許など有形・無形の資産を持っていたり、海外に資産があったりもしますので、その国家が本社を置く/上場している国が破綻しても株式の価値がなくなるわけではない…ということかもしれません。

分散投資の魔法発動

さて、各国の株式や債券のチャートを見て、数十年〜百年に一度のような危機では債券は株式と同じかそれ以上に危険ということが分かりました。

ここに追加で考慮したいのは分散投資。
上で見てきたチャートは単一国への集中投資のケースの値動きでしたが、分散投資すると値動きは幾分かマイルドになります。
1900-2013の株式/債券の値動き(世界)
『Global Investment Returns Yearbook 2014』より


ここから学べること

普段の値動きのリスクは株式の方が債券より大きいが、いざという危機においては債券は株式よりもやられかねないということが分かりました。究極的な資金の退避先として債券の方が株式より良いかは怪しいところです。株式の方がマシかもしれません。

「ある程度資産があったら株式投資などせずに低リスクな国債や預金などに…」という声もありますが、これは数十年や百年に一度というような危機では危ないかもしれません。平常時の値動きでは資産の増減はありますが、むしろ株式や債券など各種投資先に国際分散投資していた方が、いざという時の危機には強いかもしれません。

あくまで万が一のケースであり、過去の話ですが、このようなことは頭の片隅に置いておけばよいでしょう。




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