DC


日経新聞にて確定拠出年金、年収比例に 掛け金上限10〜20%(日経新聞) と報じられました。
厚生労働省は運用成績によって将来もらう年金額が変わる確定拠出年金で、掛け金(保険料)の上限額を見直す。年収の10〜20%を上限額とする方向で検討する。

これに対する反応もいくつかネット上で見ました。もちろん賛否両論なのですが、まずは企業型確定拠出年金の運用実態を見てみたい。

これを見るのに一番いい資料は企業年金連合会の確定拠出年金に関する実態調査でしょう。

この調査は2006年から行われており、最新版は2013年の第4回の資料です。この資料をベースに「掛け金の限度額が年収比例」に関係ありそうな項目を見てみます。(※第4回の資料はサイトから直接ダウンロードできませんが、簡単な申請フォームを記入するだけでメールで入手できます)

(1) DC採用企業の6割が法制度上の拠出限度額は51,000円

    • 限度額51,000円の規約: 61.5%
    • 限度額25,500円の規約: 38.5%
※DCのみ、もしくは併用する制度が退職一時金/中小企業退職金共済の場合は限度額51,000円

法律上は51,000円まで拠出できる規約が多くなっています。


(2) 昇給・昇格に応じて掛け金が増える規約が8割強

    • 一律定額: 12.0%
    • 一律定率: 31.9%
    • 等級等によって段階的に設定: 52.9%
    • 定額と定率の組み合わせ: 3.2%
定率との組み合わせの3.2%を含むと84.8%で給与や昇格に応じて掛け金が増える拠出額になっているようです。

つまり、今の法律上の限度額は定額(51,000円/25,500円)になっていますが、企業の運用としては、議論されている年収比例のような、収入が増えると掛け金が増える仕組みで運用されているところが多数のようです。


(3) 平均の掛け金は14,448円

    • 〜4,000円未満: 5.5%
    • 4,000〜6,000円: 15.8%
    • 6,000〜8,000円未満: 16.1%
    • 8,000円〜10,000円未満: 13.5%
    • 12,000円〜14,000円未満: 9.4%
    • 14,000円〜16,000円未満: 7.5%
    • 18,000円〜20,000円未満: 2.7%
    • 20,000円以上: 13.4%
法律上の限度額は51,000円の規約が61.5%とのことですが、平均で14,448円で。全体の半分以上の平均掛金額は10,000円未満と法律上の上限を大きく下回っています。


(4) 現制度で拠出限度額に達した人には別で支給/給付している

拠出額が限度額に達してしまった人への対応状況です。
    • 超過分は前払いとして現金支給している: 54.4%
    • 退職一時金やDB型制度等の給付に反映させて退職時に給付している: 35.5%
    • その他: 10.1%
10%のその他の中身はわかりませんが、約90%(かそれ以上)では、限度額超過分は何らかの別の制度で支給や給付しているようです。




■考察1: 年収比例制で低所得者は不利になるのか

「低所得者層の掛け金額が減らされてしまって不利になる」という声もあります。
しかし、運用実態を考慮すると年収比例/段階式の規約が大半であり、(掛け金の大きい人も含めた)平均掛金額も14000円程度ということです。これを考えると、年収比例に変更されて掛けが減らされてしまうような人は多くなさそうです。
もちろん、皆無とは言えませんが…

■考察2: 年収比例にすると高所得者は有利になるのか

従来の限度額定額から「年収比率の青天井にすると高所得者は有利になる」という声があります。
しかし、これも運用実態を見ると少し違った姿が見えてきます。ほとんどの企業において、今の制度では限度額に達してしまった人には別に現金したり、DBを増やしたりとすでに超過分は別の形で支給/給付されていました。年収比例で限度額が増えれば、現金給付やDBアップを止めたりするようになりそうです。

高所得者が有利になるというのはちょっと当てはまらないと言えそうです。


※このあたりの要素は企業年金部会の資料にも入っており、これらを踏まえた上での議論ではあるようです。




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