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両論併記…

一般的には、「一方の意見のみを取り上げるのではなく対立側の意見もしっかり取り上げる」といったポジティブな印象がある言葉です。しかし、そうとは限りません。
新聞などを見ていても、そういうポジティブなものばかりではなく、あくどい両論併記があります。

両論併記は、世の中で主流になっている通説を批判する場合などにも使われます。

例えば、あるAという物質は普通に食べても健康上の問題はないと考えられており、食品への使用が許可されていたとしましょう。食品添加物と呼ばれるものが代表格ですが、これが通説です。
両論併記の場合亜、これに対する反論として「~であり、健康に対して悪影響がある」というものが紹介されます。


ここであくどい両論併記を使うとどうなるか?

「Aは許可されており広く使用されている」のように通説を簡単に紹介します。
その後に、ある研究者のマウスへの投与実験や仮説などを紹介して反論をより多くのボリュームで説明します。
ここにあくどさがあります。あたかも通説を覆すようなエビデンスが出てきて、エビデンスベースで通説が間違っていることが証明されたかのような印象を与えます。

しかし、多くの場合、通説というのは、その反論が持ち出してきたような仮説や実験結果の何十倍や何百倍もの検証を重ねた結果に認められている科学的仮説だったりします。

マウスでの研究成果が即時人間に適用できるなんて考えるのはバカもいいところです。そんな簡単な説明でよければ製薬会社はわざわざ莫大な金のかかる治験などやりませんし、規制当局もそんなものを要求しないでしょう。動物実験のみで新薬を世に送り出します。
たった1回の研究でいい成績が出たらそれまでの何十回もの同様の研究での反対の結果を無視していいなら、いいデータが得られるまで何度も同じことを繰り返します。

しかし、現実にはそうではありません。


あくどい両論併記の汚さは、従来の通説が多くの科学的検証に耐えてきた結果として通説として広まっているという点を切り落としている点です。
その通説と対立仮説がそれぞれどれほどのエビデンスに支えられているか、そこを示さないと本当の意味での両論併記にはなりません。



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