先のその高分配の毎月分配型投信、基準価額は元に戻らないし分配金は減りますよの続編です。この時は純資産総額トップのフィデリティ・USハイ・イールドFの基準価額及び分配金の推移を見ました。

今回は純資産総額第2位の新光 US-REITオープン 『愛称:ゼウス』でも同じようなグラフを作ってみました。
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アメリカのREITとアセットは違いますが、基準価額及び分配金についてはフィデリティ・USハイ・イールドFと同じような傾向です。(低分配⇒分配金増額⇒基準価額大幅低下後にさらに大幅に分配金増額⇒分配金減額)

しかも、今の新光 US-REITオープンは基準価額が4500円程度に対して分配金が月75円ですので、フィデリティ・USハイ・イールドFよりも基準価額低下圧力は強くなっています。

このような高い分配金⇒基準価額低下の流れは「フィデリティ・USハイ・イールドF」「新光 US-REITオープン」に限りません。毎月分配金を世に広めた大功労者であるグロソブも同じ流れです。


●グロソブが示唆する高い分配金を売りにする投資信託の寿命

グロソブの軌跡は、高い分配金を売りにする投資信託の寿命を教えてくれます。

グロソブは長らくは基準価額8000円で毎月40円の分配という運用を続けていました。これで5兆円ファンドにまでなりました。
しかし、2008年以降の円高が宴の終焉の始まりで、長らく8000円前後を維持していた基準価額が6000円程度まで下がりました。
それに合わせる形で2009年1月には分配金を30円に引き下げました。これは基準価額の下がった割合(8000円→6000円)とほぼ同じ割合の分配金引き下げですので、非常にまっとうな判断だったのではないでしょうか。

ところが、これで本格的に歯車が狂いだす。対基準価額比でみた分配金利回りを維持するというまっとうに思える国際投信の判断が、"安定した"分配金目当ての投資家たちのグロソブ信仰を終わらせるきっかけになりました。
ライバルの高分配ファンドも多数登場してきましたこともあってグロソブから資金が流出していきます。

慌てた国際投信は2009年8月には早々に分配金を35円へと引き上げて、分配金目当ての顧客をつなぎとめようとしました。
ですが、2007年までのような円安バブルはやってきません。円高は2011年後半まで続き、本格的な円安転換は2012年末からです。
その間も毎月35円と基準価額から考えると分不相応な分配金を出し続けたグロソブは基準価額は5000円を割ってさあ大変。2013年末にはUSD/JPYが105円程度まで円安に大きく触れましたが、基準価額は5400円といったところまでしか回復していません。8,000円ははるかかなた…

そこまでしてもなるべく高い分配金を維持しようとし続けましたが、ついに2014年に白旗です。会計上の分配金余力が怪しくなり、このままだと基準価額を犠牲にしても安定した分配金を出すことすら怪しくなってしまいました。ついに分配金を20円に引き下げました。



●アセットの期待リターンを大きく上回る高い分配金
⇒基準価額の低下
⇒分配金利回りが高まり、基準価額低下圧力が強まる
⇒いよいよ高い分配金を維持できなくなり、分配金の引き下げ


遅かれ遠かれ他の高分配型ファンドも同じ道を辿るでしょう。




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