※2014年4月29日10:30更新

以前に、何故、投資信託でコストを重要視するのかと書きました。

投資信託でコストを重要視する理由

一般的な世の中の商品(例えば家電/家具など)では高い商品は性能/品質が良いと言えます。高いパソコンは性能も良いのです。
価格が高くなっても優れた商品が得られるのですから、価格が高い正当な理由があります。

では、投資信託において高い信託報酬は正当な理由があるのでしょうか?
「信託報酬が高い投資信託は運用成績が素晴らしく、信託報酬が安い投資信託の運用成績は悪いのか?」が問題になります。

何故、投資信託でコストを重要視するのかでは、以下のように竹中正治氏のデータを使った検証を紹介しました。
その一つとして竹中正治氏の分析(2007, 日経ビジネス)があります。

上の図表は竹中氏の分析から引用したものですが、表に注目です。年率コストで2%未満と2%以上の二群に分けて比較するとコストが高い群のリターンが1.27%も低い結果になっています。コスト差が1.14%なので、このパフォーマンス差のほとんどはコスト要因になります。
また、竹中氏は2007年だけではなく、その後も同じように分析をしています。2011年12月時点のデータで分析した結果は竹中氏のブログに公開されており、ここでも高コスト→低パフォーマンスという傾向が出ています。(コストが高ければ必ずしもパフォーマンスが悪い、というわけではない)


そして、今回は自分で検証してみました。

いろいろ考えたのですが、条件として以下の条件で選びました。
    • 3年以上の運用実績がある
    • 国内大型株に分類されるファンド
    • インデックスファンド除く
短期のリターンを見るにしてもある程度運用実績がないと設定開始直後の資金流出入などに大きく影響されてしまうので、3年以上の運用期間としました。
また、国内株でやろうともしましたが、それだと「コストが高いファンド=小型株」などのようなカテゴリによる影響がありそうなので、国内株の大型株とアセットによる差が出にくい範囲に絞ってみました。

その結果が以下の通り。
リターンと信託報酬 (1年)
リターンと信託報酬 (3年)
リターンと信託報酬 (5年)
リターンと信託報酬 (10年)

【相関係数】
    • 1年: 0.12
    • 3年: -0.05
    • 5年: -0.20
    • 10年: -0.16
※相関係数
2つの項目の連動性を見る数字で、-1〜1の間の値を取ります。
相関係数が正の値をとる場合(0<相関係数≦1)、一方の数字が増えるともう片方の数字も増えやすいということを示します
⇒今回の信託報酬とリターンの関係でいえば、信託報酬が高くなるとリターンも高くなる

相関係数が負の値をとる場合(0>相関係数≧-1)、一方の数字が増えるともう片方の数字減ることを示します
⇒今回の信託報酬とリターンの関係でいえば、信託報酬が高くなるとリターンが低くなる

なお、その数字が大きいほどその連動性が高いことを示し、相関係数=1(-1)だと完全に連動します。


なかなか面白いデータが出ました。
1年だと「信託報酬」「リターン」の関係はプラスとなりました。しかし、3年となると「信託報酬」「リターン」の間に相関はほぼなくなりました。
さらに時間がたって5年、10年ともなると「信託報酬」「リターン」の関係は相関係数が-0.15 〜 -0.2程度となりました。

ものすごく強い相関とは言えませんが、先日、コストは期間が長いほど投資パフォーマンスへの影響度が大きくなるとも書きましたが、そこで書いたようなグラフの変化とも言えそうです。


個々のファンドを見ると、信託報酬が安くてもパフォーマンスの悪いファンドもあれば、信託報酬が高くてもパフォーマンスのいいファンドもあります。しかし、全体的には信託報酬の高いファンドはパフォーマンスが悪いという傾向です。


今度は別のアセットでも検証してみたいとも思うのですが、コストで区別したはずがスタイルの偏りになってしまうんじゃないか…などもあって悩ましい。



【関連コンテンツ】