株式トレードにおいて、損切りの重要性を訴え、「●%下がったら機械的に損切りしよう」みたいな声もありますが、このような機械的な損切りルールはトレード手法としては決して巧い方法ではありません。

これは、行動ファイナンスにおける自身の買値へのアンカリングに他なりません。

AさんとBさん、二人の投資家を想定します。
二人とも今日時点で全く同じ910万円をX社の株に投資しています。

ただし、一つだけ違うのは購入額です。
  • Aさんは1000万円で購入して、株価の下落によって910万円になりました。
  • Bさんは910万円で購入して、910万円の評価額です。

二人の資産はX社の株910万円と全く同じですが、Aさんは-9%の含み損での910万円、Bさんは損益無しでの910万円という違いです。

仮に損切りルールを買値から-10%と決めていたとしましょう。

そして、このX社の株が900万円まで下落したらどうしましょう?
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  • Aさんは1000万円→900万円なので含み損が-10%→損切りです
  • Bさんは910万円→900万円なので損切りしません


これはおかしな話です。
同じ株を同数持っている二人なのに、一方は売った方がよく、もう一方は保有し続けた方がよいとなります。

今の900万円は900万円です。過去にそれが1億円だったか100万円だったかは関係ありません。
しかし、「●%下がったら機械的に損切り」ルールは過去にいくらだったかを気にする典型的な買値に対するアンカリングです。

これは巧い方法とは言えないでしょう。


とはいえ、最悪を回避する方法としては機能します。
アンカリング効果+プロスペクト理論で損が出ても特に戦略もないままにいつまでも損切りできずに資産も減らしつつ心も疲弊してしまうような最悪トレーディングを回避することはできます。

そういうわけで、機械的な損切りは巧い方法ではないがど下手くそにはならなくてすむ手法という位置づけ。



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