今回の題材は以下の記事。
解雇規制緩和は若者も非正規労働者も救わない-「解雇自由」のデンマークより首切り自由な日本

国家公務員一般労働組合ということですが、ずれっぷりが凄いので取り上げます。こういうズレた主張をしているから公務員や組合が叩かれるんだ、というような内容です。
さらに、正社員ばかりが高い賃金をもらっていて、非正規社員の賃金は安いから、じゃあ正社員の賃金を下げれば非正規社員に回ってくるかというと、そんなに甘いものではないですね。要するに企業としては利益を最大限に確保したいという企業活動の第一の欲求がありますから、企業自らは正社員に払っていた賃金を下げたからといって、その下げた分を非正規社員に回すわけがありません。ですから、正社員の賃金を下げても非正規社員は幸せにならない。そういう意味では、正社員のパイを奪って、そのパイが非正規社員に回ってくるという考え方自体が、夢のようなことを言っているだけで何の実態もない話なのです。
まったく現実が見えていません。企業が利益を追求するためにいくらでも人件費をカットできるかのような夢のようなことを言っています。
仮に「企業としては利益を最大限に確保したいという企業活動の第一の欲求があり、できる限り人件費を下げたくて下げることができる」ならどの企業の正社員の給与も法定水準のギリギリになっているはずです。
しかし、実際が違うことは世間を見渡せばわかります。同じ正社員でも企業によって給与は違います。それだけのお金を払わないと人材を確保できないということの証左です。期限の定めのない雇用契約であろうが1年や2年の有期契約であろうが営業部長として雇用するならそれなりの金額を払うでしょう。
私が勤務する会社でも有期雇用が主流な国もありますが、その国でもポジションが高ければ有期雇用であっても報酬は高くなっています。


正社員に権利があるから非正規社員の権利も生まれるという関係
正社員に権利があるから非正規社員の権利も生まれているという関係にあるわけです。ところが正社員の権利の方を破壊してしまったら、こうした矛盾そのものがなくなってしまい、非正規社員が上っていくところもなくなってしまうわけで、非正規社員の問題は何ひとつ解決しないと思います。
正社員＞非正規社員というふざけた階級意識を恥ずかしげもなく話しています。
正社員の権利どうこうは関係なく、非正規社員の権利をちゃんとしろというのが世間の話です。
ところが「落ちこぼれの非正規社員も権利を主張できるのは、俺たち本流の正社員様がいるからだ」という歪んだ思想を語っています。しかも、それが歪んでいると気づいていない点が恐ろしい。


　また、よくある話では、解雇規制が強いために退職強要が起こると言われます。だから退職強要をなくすためには解雇規制をなくす必要があるという論理です。これは、たとえば泥棒がたくさんいて困っている、どうしたらいいんだろう？と皆で考えて、「そうか、泥棒が犯罪だからいけないんだ」、「泥棒は犯罪じゃないことにしよう」ということで解決しようとしているようなものです。要するに、なぜ退職強要が起きるかというと、労働者が退職したくないからです。退職したくない労働者の退職強要を解決するのに、解雇を自由にしたら結局その人達は強制的に会社から放逐されるだけですね。それはまったく何の解決にもなっていません。
支離滅裂です。
追い出し部屋を作ってそこに何週間も追い込んで退職させるのと、お金を払って辞めてもらうのを同じというのは馬鹿としか言いようがありません。
退職部屋で辞めさせられた場合は労働者の手元にはお金が入りません。しかし、パッケージをもらって辞めればお金が手に入ります。これは決定的な違いです。
割増退職金を払う希望退職を募集すると多くの人が応募することがあるように、「パッケージを貰えるなら退職していい」という人はいます。
繰り返しになりますが、同じく退職することになるにしてもお金を貰えるか貰えないかは結構な違いです。
ところが、この佐々木氏は「退職したくない人を退職させるのはダメ」という思考停止に陥っています。


　森��　私も実感として、企業は解雇しやすくすれば新たな人を雇うかというと、そうはならないと思います。企業が人を雇うのは、任せたい仕事があるからなんです。そこがポイントなので、奨励金もらえるから雇うとか、助成金がもらえるから雇うということも、実はそんなにない。奨励金や助成金がミスマッチ解消に役立つことはたしかにあるのですが、雇用自体を増やすことにはならない。ましてや解雇規制を緩和させるからといって雇用が増えるわけではないと思います。むしろ雇用を増やすのは、実体経済の改善です。株価を上げるということではなく、実体経済を良くすることで雇用を増やすというのが基本だと思います。そのためにも、良質な雇用を広げることが必要なのです。
これも「オマエハナニヲイッテイルンダ」というレベルです。

「任せたい仕事がある」「解雇しやすくなる(と企業はどんどん解雇するようになる)」なら新たな人を雇うに決まってるじゃないですか。
任せたい仕事があるのに人を解雇して新しい人を雇わなければ、仕事をする人がいなくなりますよ。この森崎氏の頭の中では企業はどうやって仕事を回すと考えているのか不思議で仕方ありません。


「正規雇用は善であり何が何でも守る」というだけで。そのためなら現実に存在する労働者や企業が救われなくても構わないと考えているようにすら感じられる主張でした。


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