マネックス証券のエコノミックレポートに

どこまでが円高修正なのか

という興味深いレポートが掲載されており、その中では以下のような主張がありました。
≪引用開始≫
Monex_Effective_Rate
過去4年間の、米欧日の通貨の位置の差は、「金融緩和を徹底した米欧中銀」、「金融緩和に出遅れた日本銀行」によって説明できる。その結果、為替レートが割高水準に放置された日本だけが、デフレと株安に苦しんできた。
≪引用終了≫

しかし、「金融緩和の徹底度で為替レートが説明できる」というほど為替の世界は単純ではなさそうです。

先のデータにイギリス(ポンド)のデータも加え、Japan, UK, US, Euroでグラフ化してみましょう。
4FX_200901

イギリス(ポンド)は日本以上に実質実効為替レートが通貨高(ポンド高)に向かっています。
「金融緩和の徹底度で為替レートが説明できる」のであれば、イギリスの金融緩和は日本以上に出遅れていることになります。

では、金融緩和の度合いを測る指標としてマネタリーベースを見てみます。
アダム・スミス2世の経済解説日銀、FRB、ECB、BOEの政策比較という記事にちょうどグラフがありましたので下記に引用します。
monetarybase

イギリス(BOE)はピンクです。
見て分かる通り、各国が金融緩和に走る中でBOEはかなりの金融緩和を行っています。
2009年1月にはBOEとECBはほぼ同じ場所に重なっていたのが、グラフの終わりでは圧倒的にイギリスが上にあります。「金融緩和の徹底度で為替レートが説明できる」のであれば、ポンドはユーロ以上に実質実効為替レートが下がっているはずですが、そうなっていません。

データを見る限り、為替レートが金融緩和の徹底度で単純に説明できるほど簡単なものではなさそうです。


ある少数のサンプルから特定の傾向が見えることはあります。
しかし、それは"たまたま"そういう傾向があっただけということが考えられます。特にたった3つのサンプルでは、偶然に日本/米国/ユーロでは金融緩和と実質実効為替レートに関連性があるように見えたという可能性もあります。
単純に日米欧3つの金融緩和度と実質実効為替レートを比較してもデータの説明力はほとんどないでしょう。

※金融緩和が為替レートに一切影響を及ぼさないと言っているのではありません。



【おまけ:3年/5年/10年/20年/30年で見た実質実効為替レート】(始点=100)
実質実効為替レート3年 実質実効為替レート5年
実質実効為替レート10年 実質実効為替レート20年
実質実効為替レート30年


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