検索していてひっかかたのでご紹介。

このブログでも何度がご登場いただいている荻原博子氏。その荻原氏の記事がありました。
「60歳までに老後資金を貯める」は危険思想 (Family)

前半は老後資金や住宅ローンなどの話なのですが、「アンチ投資、貯金推奨派」の荻原氏だけあって、最後の2段落に反投資を書くことを忘れない。

 もちろん、余裕があるなら貯蓄をするのは無駄なことではないが、それを運用して少しでも増やそうとするのは考えものだと荻原さんは言う。
「今の日本経済はデフレの時代。デフレとは物の値段が下がり続けることで、物の値段が下がった分、貨幣の価値は上昇します。簡単に説明すると、今1万円の物が翌年には9500円で買えるということ。つまり、1万円を1年間、温存させるだけで、品物に加えて500円のおつりまでくるわけです。これは1万円をただ持っているだけで5%の利子がついたのと同じことになるんですね」

 それに比べて、超低金利のこの時代に、5%で運用できる金融商品は、大抵、リスクも高く、ヘタをすると損をする可能性も。
「バブル期には多くの人たちが株を買い、不動産に投資をしましたが、最終的に得をしたのは何にも手を出さなかった人たち。不況下にある今の時代でも、現金で地道に蓄えたほうが、最終的には得をするのです」

カッコの外は上島寿子氏の文章なので荻原氏が直接書いた内容ではありませんが、荻原節全開と言ったところです。

「デフレだと貨幣の価値が上昇する」は正しい。
「簡単に説明すると、(デフレだと)今1万円の物が翌年には9500円で買えるということ」という表現は現実と連動しない例として使うのはいいです。

しかし、現実の日本のここ10年(2002年〜2011年)のインフレ率推移は以下の通りで、物価指数(CPI)は101→99.7とわずかな物価下落にとどまっています。
 +0.90% → -0.25% → -0.01% → -0.27% → +0.24% → +0.06% → +1.38% → -1.34% → -0.72%, -0.29%

-5%というバーチャルなインフレ率を持ち出して「それに比べて、超低金利のこの時代に、5%で運用できる金融商品は、大抵、リスクも高く、ヘタをすると損をする可能性も」と現実世界の投資パフォーマンスと比較してはいかんです。

確かに年5%のパフォーマンスを出すのはそう簡単な話はなく、相応のリスクを伴います。これも全くもって正しい。
しかし、それ以上に5%のデフレで実質価値を5%高める方がはるかに困難です。(そもそも年率5%もデフレが進行していくような国になったらどうなる…)

記事中では5%という数字を基準として「デフレ vs 投資」比較をしていましたが、現実のインフレ率(デフレのパフォーマンス)の数字であれば、それほどリスクが高くない投資で稼ぐことは十分に可能です。例えば、10年国債をラダーで買っていけば十分でしょう。


投資を嫌うのはいいのですが、年率5%のデフレという架空の数字を持ち出して「5%を投資で稼ぐのは難しいから投資は危険」というような記事は賛同できかねます。


【関連コンテンツ】