私を含めた極一部のマニアックな人たちの間で独立系投信運用会社の方向性が少し盛り上がっています。("極一部のマニアックな人"で"少し"なのに盛り上がっていると言えるのかというツッコミはさておき・・・)
 ※参考:独立系投信の目指すべきは株式上場 (高配当ETFで戦略的インデックス投資日記 )

先日の「生き残る独立系投信会社、死にゆく独立系投信会社(各社の経営状況)」もこの議論を進めさせる一端になったと思っていますが、そこで書いたように数年前に数多く設立された独立系投信は依然として事業として採算ベースに乗っていません。

そこで彼らはどうすべきか・・・という話になり、具体的な案として株式上場やクラウドファンディングのようなアイデアも出ています。これらの案に対して「いやいや株式上場は反対だ。株主と受益者の利益は一致するとは限らない」など"極一部のマニアックな人たち"の間で"少し"熱い議論もされています。


私の意見は「何でもござれ(=上場もあり)」です。


株式上場のケースを考えてみます。

上場すると株主と受益者の利害対立が生まれるという反論もありますが、必ずしもそうとは言えません。

非上場企業においても企業と顧客の間には利益相反の構造が存在します。非上場のオーナー企業でも株式会社であれば経営者が株主です。「株主=経営者」と「顧客」との利害が一致するとは限りません。
非上場のオーナー企業にすることで無くなる利益相反は「株主」と「経営者」の利益相反です。(無責任な非上場企業もある中で、投資信託運用の非上場会社だけは無条件で善であると思えるほど楽観的ではありません)

さらに言えば、真に信頼される運用会社の経営者であれば上場しても株主からも信任されるでしょう。
資産運用会社とは違いますが、投資家から尊敬を集める人としてバークシャーのバフェット氏がいます。バークシャーの株主は基本的に彼の方針に従い、むしろ彼からの言葉を聞きたいと思うくらいです。
株式上場することでボロボロになるような会社は元々が真に優れたビジネスモデルではなかったという話かもしれません。

上場/非上場は経営スタイルやガバナンスの手段の違いであって、顧客に対する良いサービス提供の本質にはあまり重要なファクターではないと考えます。

少し業種は異なりますが、生命保険業界の上場企業であるライフネット生命を考えてみます。
生命保険業界も投信同様に手数料ビジネスです。株主は少しでも保険料を高くにすることで多くの保険料を集めてくれた方が儲かります。投信運用会社同様、株主と顧客の利益相反構造が存在します。そして、ライフネット生命は高収益企業ではなく赤字企業です。
まさに今の独立系投信運用会社のような状況です。
一方、他の多くの生命保険会社は非上場です。
では、ライフネット生命と非上場の日本生命のどちらがいいのか。「上場しているライフネット生命はダメだよね」とは言えないように思うのです。

上場/非上場で言えば以下の4つがあるだけでしょう(笑)
 (1)良い上場
 (2)悪い上場
 (3)良い非上場
 (4)悪い非上場


「良い投資信託運用会社とは●●で▲▲で■■である」のように決まっている必要はありません。
最初は独立系ベンチャーで始まって上場して大きくなる会社があってもいいですし、独立系のままでもいいでしょう。LVMH傘下に入ったブランドたちのようにある企業の下に入ってもいいと思います。

今後設立されるかもしれない会社も含めて、各運用会社はいろいろな道を歩んでほしいというのが私の願いです。皆が皆同じ方向を目指すのならば複数の運用会社があっても面白くありません。


【関連コンテンツ】