4月19日の日経新聞電子版に個人資産を巻き込めば円安にできる フジマキ・ジャパン社長 藤巻健史氏という記事がありました。
主張としては「円高」が日本の失われた20年という諸悪の根源であり、その対策はと言うものです。

この「円高悪玉⇒円安にすべき」説は藤巻氏に限らず、よく見る主張の一つです。


今回のエントリーでは円高が本当に失われた20年の諸悪の根源か否かは問いません。
円高が問題だったという全体条件が成立するとします。その上で、その対応策が「円安政策」でいいのかを少し視点を変えて考えてみたい。

そもそも円高が問題ということは、日本(の産業構造)が円高に弱く、円安に強い構造だったからとなります。だからこそ円高が問題なのです。


【日本(の産業構造)が円高に弱く、円安に強い構造】
上記の場合、円安にすることは円高対策の一つの回答ですが、円安のみが回答ではありません。
産業構造を円高に強い構造に変えるという手もあります。

今現在と2007年を比較するとポンドはドル/ユーロ/円という主要通貨に対して、かなり強いポンド高水準でした。イギリスの物価が高いことがネタになるくらいのポンド高。
しかし、イギリスは2007年にポンド高で経済的な苦境に陥っていたかというと、そうではありません。むしろ2007年以降の圧倒的なポンド安の流れの中で不景気になっていきました。


通貨高=不況とは言えないのであれば、日本は円高に強い体制を作ればよかったとも言えます。
そして、これが十分に可能だったことは近年の日本企業が証明しています。
日本ではMade in Japanの製造業の輸出業を中に抱えることによって、円安に依存する体制を作り上げていました。2007年の驚異的な円安を味方につけてトヨタが2兆円の利益を上げるなどしていました。ところがその後の円高反転によって、各メーカーは為替で大きく利益を減らすことになった。

このような円安バブルの終焉とともに海外への工場移転/為替マリーなど円高対策を急速に推し進めた結果、多くの大企業はたった数年で90円を下回った水準でも利益が出せるような体制を作り上げました。
企業がやる気になれば数年でかなりの円高に耐えられる体制を作れたのです。円高になればやられる体制を放置し続けたのは企業の経営判断ミスとも言えます。

円高対策と言った時、「円安誘導すべき(だった)」だけではなく、「円高に備えられる体制を作るべき(だった)」という解が出されてもよいでしょう。


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