TPPを巡っていろいろな議論があるが、多くの間違いや勘違いが流布されているように思う。
そこで、ど素人ですが私が調べた限りでそれらの誤りへのツッコミを書いてみます。調べたもののメモ書きのようなものです。
(内容の正しさは保証しかねます。正しさの判断は皆様にお任せします)

●「GDP比でアメリカと日本で9割超なので実質日米FTA。アメリカの狙いは日本」

アメリカから輸出先としての日本のシェアは4.7%(605億ドル)。小国のシンガポールが2.3%を占めており、シンガポールの2倍強程度に過ぎない。そして、日本以外のTPP交渉参加国の合計は日本より大きい。
また、アメリカの輸入先として日本のシェアは1205億ドルで6.3%。マレーシアが259億ドル、シンガポールが174億ドル、ベトナムが142億ドル。これにオーストラリアやニュージーランドなども加わる。
アメリカの輸出を見ても輸入を見ても日本のシェアは単独国としては最大だが、日米FTAと言えるようなものではない。
GDP比で語ることは極端に日米以外の国を過小評価することになる。
⇒アメリカがTPPを対日本の道具として考えているというのは、日本の自意識過剰と言えそう。


●「TPPは例外なき自由化である」

これは最近払拭されつつありますが、TPPは完全なる自由化ではありません。
アメリカがニュージーランドを恐れて乳製品を除外したがっていますし、P4時点でもブルネイがアルコール・酒を除外しているように例外は十分に考えられます。


●「日本が交渉に参加するのにアメリカ議会の承認が必要。アメリカの言うなりだ。」

11月2日の報道で騒がれだしたが、「日本の参加には米議会の承認が必要」について誤った情報が広まっています。
TPPへの参加に関してはP4のArticle20.6に参加国の承認が必要と定義されています。
アメリカはTPAが失効し、通商交渉権は議会が持つために議会の承認が必要。日本の参加が承認されるには同様に他参加国の承認も必要なわけで、アメリカが支配しているわけではありません。
日本で全く取り上げられていないブルネイやチリが承認しなくても参加できないのです。


●「TPPを脱退するには他国の承認が必要」

TPP参加へ承認が必要というニュースが出たせいか、脱退にも承認が必要ではないかという意見が出ています。しかし、脱退には他国の承認は必要ない。これはP4のArticle20.8に規定されている。


●米韓FTAのISD条項(毒素条項)

TPPとは直接関係無いが参考となりそうな米韓FTAが話題となっています。特にISD条項が注目です。
拙い英語力で米韓FTAの条文を読んでみましたが、ISD条項は「韓国のみに適応」と規定されていません。米韓FTA上では、アメリカ政府を韓国の投資家が訴えることができます。
ただし、アメリカ側の履行法(United States-Korea Free Trade Agreement Implementation Act)にて米韓FTAと米国内法の関係が記載されており、そこでアメリカ外の人はアメリカ政府を訴えることができないと書かれていることが問題なのです。
⇒このやり方がTPPで通用するのであれば、日本側もアメリカと同様な制度を設けることでISD条項をかわせそうです。

【参考:アメリカと日本における条約の位置づけ】
・アメリカ合衆国憲法第6条
この憲法の確定以前に契約されたすべての債務及び締結されたすべての約定は、連合規約の下におけると同じく、この憲法の下においても合衆国に対して有効である。
この憲法、これに準拠して制定される合衆国の法律、及び合衆国の権限をもってすでに締結され、また将来締結されるすべての条約は、国の最高の法規である。これによって各州の裁判官は、各州憲法又は州法の中に反対の規定がある場合でも、これに拘束される。
・日本国憲法第98条
この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。


アメリカの輸出統計(国・地域別)
TPP条文(P4)
「大統領貿易促進権限(Trade Promotion Authority)」について (外務省)
アメリカ合衆国憲法 Article 6
米韓FTA本文
United States-Korea Free Trade Agreement Implementation Act


【関連コンテンツ】