野田総理がTPP交渉への参加を言及してからまたTPPが賑やかになってきました。
このTPP交渉への参加へ反対する意見が多いのですが、不思議です。

交渉は抜けられる

あくまでTPP交渉への参加です。
中国や韓国はいなくてもアジア数カ国とアメリカやオーストラリアが参加する外交上の大きなテーマです。その交渉の場に参加する権利を自ら放棄していいのでしょうか?

交渉の場ですから、さまざまな交渉をすればいいのです。その結果、日本にとって不利益だと思えばTPPを批准しなければよい。
日本はアメリカやアジア諸国にとって美味しいターゲットで日本市場こそがTPPの最大の目的だという反対派の意見もあります。各国がそれほど日本に参加して欲しいと思っているのであれば、日本がわがままを言うチャンスです。
「市場を開放しろって?ただではできないなー?この条文を追加して、あの条文は削除してよ。」と言ってもいいはずです。

交渉の結果、日本にとって有利な条件を引き出せなければ抜ければいいのです。
参加の意思を示しながらも決裂はあっていい話です。


交渉力の弱さは理由にならない

これに対しては「日本の交渉力が弱いから、参加すれば食い物にされる」という意見もあるでしょう。しかし、この考え方ではいずれにしても日本は食いモノにされます。
日本は交渉が下手だから外交交渉はしないとなれば、それこそ日本の危機です。
G8で日本の存在感はありません。オバマ、メルケル、サルコジなどの前にかすんでおり、彼らが多くのルールを決めています。日本は追従するだけのようなところです。だからと言ってG8から離脱するべきではないでしょう。その場にいることに十分な意義があります。

「交渉をしながらも決裂」は良くあることです。交渉に参加したら契約締結・条約批准が当然かのような考えを日本人が持っているのだとしたら、その発想が危険です。


アメリカも無茶はできない

TPPはアメリカが一方的に要求を突きつけてきた従来の日米交渉とも違います。
相互的な条約なのでアメリカも下手なことはできません。日本以上の世界一の市場ですから、下手をすればアメリカの市場を食われます。
アメリカは食料自給率が高いことなどから、日本やアメリカがTPPを批准した場合、日本は輸入が増えて、アメリカは増えないという意見もあります。しかし、話はそう簡単ではありません。
欧米では補助金漬け農業がトレンドであり、アメリカの農業には莫大な補助金が支払われています。

TPPを批准して関税が撤廃されても日本の農業を守るには補助金を出せばいいのです。
TPP反対派からは補助金さえも撤廃されるかのような議論がありますが、そうなればアメリカの農業もピンチです。補助金が無くなったアメリカの農産物の価格は上がって日本に輸出するどころではなくなるかもしれませんし、食料輸入国になるかもしれません。
また、アメリカはポスト中国の1国であるベトナムからの工業製品の輸入をも覚悟する必要があります。日系企業も多く東南アジアに進出しており、日本企業からの輸入が増える可能性すらあります。


TPPは積極的に参加して駆け引きをして不利ならば離脱こそが外交の王道ではないでしょうか。


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