為替ヘッジで、一方が有利で一方が不利ということはありません。どちらもフェアな条件で取引します。

高金利通貨は高金利であるぶんだけ為替レートで不利になっています(高金利ほど為替レートは下落しやすい)。だから、高金利通貨でヘッジしても期待リターンは増えません。高金利のインカム-為替のマイナスで±0です。

ブラジルレアルでヘッジをしても期待リターンは同じ(コスト等除く)なのに、どうして高金利通貨を対象とした通貨選択型がたくさん開発されて売られているのでしょうか?

分配金原資を確保するためです。

投資信託では顧客から預かった金をそのまま分配金として出すことは禁じられています。分配金は収益金からしか出すことができません。
普通に日本株を運用して利益を出せるかというとそう簡単ではありません。そこに登場した錬金術が通貨選択型の高金利通貨ヘッジです。

高金利通貨でヘッジすると、FXのスワップのように、ほぼ金利差分をヘッジプレミアムとしてファンドの収益に入ってきます。もちろんそのぶんだけ為替レートでは不利になってトータルでのリターンは±0かもしれませんが、それは関係ありません。
ここが投資信託の会計上の不思議で、損益を合算せずにヘッジプレミアムを分配にまわすことができるのです。

日本国新興国株に投資していて、損益±0の時、非ヘッジ型ではほとんど分配できません。しかし、ブラジルレアルでヘッジしておけば元本の一部をヘッジプレミアムという名目にロンダリングしたので、分配できます。

高分配金でお客を釣る分配型ファンドにとっては、安定的に分配原資を確保することは至上命題です。
そこで、投資信託を販売(運用)する側は、多くの分配原資を獲得するために、ジャンク債も活用します。
ジャンク債は利回りが高い代わりにデフォルト確率も高くなっています。デフォルト分の損失を無視して、受け取った高金利分を分配原資に組み込めます。
そこに高金利通貨のヘッジプレミアムも上乗せするのです。
新興国社債+高金利通貨という2つのエンジンで元本をどんどん分配金原資にロンダリングしているのです。

これが通貨選択型ファンドが取り入れている元本を分配原資にロンダリングする錬金術です。


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