昨今の日本の賃金低下では、低所得者が増えて絶対的貧困者が多きく増えたわけではありません。また、有名大企業勤めのサラリーマンの年収があがったわけでもありません。上位〜中位層の所得が減って全体の平均が押し下げられているというのが、賃金低下の傾向です。

平成21年版 労働経済の分析 ─賃金、物価、雇用の動向と勤労者生活』に第3-(2)-7図 年齢階層別年間収入があります。
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これを見ると分かるように、年収のちょうど上位10%に当たる層の年収は30〜34歳を境に1997年と2007年で大きく乖離しています。
(仮に大企業の年収は全部中小企業より高いとすると)大企業の雇用者数が雇用者全体の30%と言われていますから、上位30%が大企業の雇用者になります。その中の上位1/3が全体の上位10%となるので、上位10%というと正にイメージするような典型的な大企の正社員というあたりでしょう。
1997年ならば、上位10%に位置すると50代にもなれば年収は1000万円を超えるあたりでした。これが2007年では大きく下がっています。世間では大企業の正社員と非正規社員で格差が拡大したというストーリーも語られますが、実は大企業の正社員も待遇は悪化しています。

そして、次に注目すべきは中位層。全年代で1997年からの10年間で年収が大きく減少しています。
また、上位10%では20代のうちは1997年と2007年に大きな乖離は無く、30代から拡大していました。しかし、中位層においては20代から相応の開きがあります。このように20代においては特に中位層の没落が大きいと言えそうです。
第3-(2)-8図 雇用者の年間収入の分布 (25歳〜39歳) でも分かるように中位層が減ってフラットになっている様がよく分かります。
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第3-(2)-7図 年齢階層別年間収入に戻ると、下位10%の層は20代で多少の差はあるものの大きな違いは見られません。

「勝ち組と負け組みに分かれた」というセリフも聞きますが、このようなグラフを見ると大企業正社員を含んで、ほぼ全部が没落組でここに勝ち組はいないように思えます。少なくとも給与所得者の上位10%程度では勝ち組とは言えないような状況のようです。
この10年間で踏みとどまったのは、それ以上落ちるのが難しかった下位層くらいです。そういう見方をすると、1997年〜2007年はちょうど下位10%に位置する人とちょうど上位10%に位置する人の差が縮まった10年間だったと言えるかもしれません。

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