日経ビジネス2011年1月3月号の記事で目を引いた記事です。

『新・金融立国ニッポン』という特集の中で、底入れへの「1人1策」というコーナーがありました。この中でライフネット生命保険社長の出口治明氏のコメントが少し目を引きました。

 日本人の若者の英語力を引き上げるのは簡単だ。小学校から英語の事業を行うことでも、ネーティブの先生を増やすことでも何でもない。日本経済団体連合会が、加盟企業は120点満点のTOEFLで100点以上の学生しか採用しませんと宣言すれば、日本の大学生は必死になって英語を学ぶ。

 最近、若手社員が海外に行きたがらないと嘆く金融機関の経営者が多い。「今の社員は」と若者のせいにしているが、実は問題は経営者自身にある。本気で海外経験が重要だと思うなら、10年間で3カ国の経験を積んだ社員でなければ管理職にしないと宣言すればいい。海外子会社の経営に携わった経験がない管理職は役員になれないという明確なルールを作ればいいのだ。
 現実には、日本の金融機関では社長の近く、つまり本社から離れずにいた人が偉くなるのが実態だ。役員の経歴を見れば一目瞭然。経営企画や社長室、人事部にいた人が出世する。そういう現実を見ている若手社員が、わざわざ海外を希望するはずなどないのだ。

経団連がTOEFL100点以上で縛るような話は現実的ではありませんが、面白い提言です。
人間があるスキルを習得しようとするのはそこにインセンティブがあるからです(一部道楽でやる人もいますが少数派)。そのように考えた時に就職や出世や給料がエサにされれば確かに勉強するでしょう。

特に後段の話は正鵠を射ています。欲しいという学生を活かす体制が用意されてもおらず、しかもその基準に満たない学生を採用しておきながら企業が文句を言うのは筋違いでしょう。海外でバリバリ働く人が欲しいのであれば、海外でバリバリ働くと、多い給与がもらえたり、出世できたりする仕組みが用意されていないと話になりません。
外国語ができるという理由で海外を転々と回されて、一方本社では英語ができない人間が本社ローカルルールを熟知していく。そして最終的には本社ローカルルールに染まった人間が経営陣になる。こんな話では英語をまともにやることも海外に行くというモチベーションが湧かないのも一理ある。


【関連コンテンツ】