前回のエントリーで酷評した石渡嶺司氏の『転職は1億円損をする』ですが、ダイヤモンド・オンラインの連載でもやらかしてくれています。

「すごい学生じゃないと内定が出ない」はホント!?
就活生に蔓延する“普通の学生不利論”の真偽


とある就活の論客によれば、同氏は学生に対して「プロ学生」になることを強く推奨されています。
 なお、同氏の名前は諸般の事情により、ここでは以下「某論客」とします。ただ、この方と対談したときのコメント、この方の著作に出てくる話は公的なものですので、以下、いくつか引用しました。
 プロ学生とは、大学の学業に専念しきった学生ではありません。
「学生でありながら社員並み、あるいは社員を超えるような仕事ぶりを発揮している学生」
 のことです。
 同氏著作によると、「百科事典セールスのアルバイトをしていて社員も含めてトップ」「つぶれかけの塾の経営を任された」などの例が出ています。他にも起業もお勧めされているご様子。

これに対して一生懸命反論しているのですが、レベルが低すぎます。「すごい経歴だけで必ずしも採用されるわけではない」のように的外れなことを吼えています。

この次の第4回の『明暗を分けたのは“経歴”ではなかった!内定取れない「すごい学生」、取れる「普通の学生」』では
前回、「すごい学生イコール有利論」がおかしいという話をご紹介しました。別にサークルの役職者や留学経験は、学生が思うほどすごい話ではない。これも昔からです。

などとも吼えています。


何がおかしいか?

●ここが変だよ石渡(その1)
「すごい経歴を持っている人が有利」という命題が批判されていません。すごい経歴保有者に採用されない人がいることは命題を否定していません。

「同じ年末ジャンボ宝くじで1万枚持っているAさんと1枚持っているBさんでは、100万円以上の賞金を当てる勝負ではAさんが有利」
こんな命題をたてます。
1万枚持っていても必ずしも100万円以上の賞金が当たるわけではありません。1枚だけでも100万円以上の当たりくじを当てることもあります。
でも、そういう可能性があるというだけで「1万枚持つ人が1枚しかもたない人より有利とは言えない」なんてバカなことは言いませんよね?全体の傾向や、有利・不利の話をする時に、個別の違う事例を示しても何の反論にもなりません。しかし、こんな例を挙げてご満悦されている石渡氏は不思議です。


●ここが変だよ石渡(その2)
すごい学生の定義が変わっています。
第4回では「別にサークルの役職者や留学経験は、学生が思うほどすごい話ではない。」とサークルの役職者や留学経験が学生のすごい話になっています。

あれ?第3回では某論客の話を公的なものとして次のようなことを挙げていましたよね。
「学生でありながら社員並み、あるいは社員を超えるような仕事ぶりを発揮している学生」
「百科事典セールスのアルバイトをしていて社員も含めてトップ」
「つぶれかけの塾の経営を任された」
他にも起業

どこをどう読んでも第3回と第4回のすごい学生像が一致しません。まるで第3回で書かれた内容を全く知らないかのような第4回のずれっぷりです。


前回のエントリーで
松尾健治氏の著書と同様に、いい加減なでたらめデータに騙されないための訓練をするには非常に良い本ですが、一般的にはお勧めできません。

と書きましたが、少し訂正。
石渡氏の文章は、学生には論理的思考力と常識を身につける訓練として使えるかもしれません。彼の文章を読ませてそのおかしな点を考えるというのは「普通の学生として就職できるようになる」ために面白そうです。


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