投資信託の直接販売で低コストインデックスファンドを提供している会社と言えば、Vanguard(バンガード)
そのバンガードには次のような行動指針があります。
●細心の注意を払い、長期的な方向性と明確な目的をもってファンドを運用しています。ベンチマーク指数や他社の同種同等のファンドよりも優れた運用成果をご提供することを最終的な目標としています。
●私たちは、販促活動などへの配慮よりもまず、顧客に対する受託者としての責任を最優先に考えています。
●私たちは投資家に対して投資成果のみならず、リスクとコストに関しても正確かつ正直な情報提供を行います。
●私たちは顧客との信頼関係において公正な取引、誠実、正直の精神を持ち続けます。
この理念が具現化されているサービスがあってこそバンガードは支持されています。

これを念頭において日本で最近増えている直販(チョクハン)ファンドに目を向けてみます。
どうでしょう?日本の直販ファンドはこれを満たしているでしょうか?

販促活動よりも、顧客に対する受託者としての責任を最優先に考えているでしょうか?
リスクとコストに関して正確かつ正直な情報提供を行っているでしょうか?
公正さ、誠実さ、正直さの精神があるでしょうか?

私の評価は残念ながらNOです。部分的に満たしているところはあっても、総合的にはNOです。セゾン投信などはいい線をいっているとは思いますが、それでもまだというところです。


チョクハンの中には、ファンドの特徴を「販売手数料0%、信託報酬0.7%(税込0.735%)」と太字の赤字で書いて低コストと謳っているファンドがあります。しかし、このファンドは、その後にカッコでとじられた中に黒字&強調無しで「実質的な信託報酬は1.5%以上」と書いています。
目論見書でも、最初に出てくる『当ファンドに係る手数料等について』という項目でも投資先のファンドに支払うコストについての言及がありません。
目論見書を読み進めていて、最初に出てくる当ファンドに係る手数料等についてを読んでコストについて分かったように思った投資家を欺こうとしているのではないかとさえ思えてきます。
これが誠実さ、正直さでしょうか?

なお、セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドでは、HPのファンド概要で実質的に投資家の負担となる信託報酬(0.74%±0.035)が大きく赤字で記述されています。交付目論見書の『当ファンドに係る手数料等について』でも実質的な信託報酬が記述されています。

これで、チョクハンは顧客目線で公正で誠実で正直なモノを提供できていると言えるでしょうか?
セクシャル・ハラスメントの判定基準ではありませんが、ファンドがどう考えているかは問題ではありません。重要なのは顧客がどう受け取るかです。
「運用会社自身が頑張っているつもり」には価値がありません。それが顧客にとってよいかが問題です。上で良い例として挙げたセゾン投信の信託報酬情報の提供のような例もありますが、それでも現在のチョクハンはまだまだでしょう。


チョクハンは受託者としての責任を最優先に考えているでしょうか?
資産運用会社なのですから資産運用・経営管理をしっかりやるのが何よりも受託者の最大の責任です。
野村や外資系運用会社の商品には眉をひそめるものも多くあります。しかし、それでもその規模を生かしたネットワークによる情報収集力や資産管理手法のレベルは決して低いとはいえません。
「自分自身には個別銘柄を選ぶ能力が無いからアウトソースをしている。おまけにそのためにアウトソース先へのコストもかかる」と言っているファンドが受託者としての責任を最優先に考えているのでしょうか?

フットボールチームのManchester UnitedのスターであるRyan Giggsは「才能だけでプレーできることはあるけれど、自信だけでプレーすることはできない」と言っています。私の好きな言葉です。
プロフットボーラーとしてプレーするだけの能力があってこそプロとして活躍できます。自信や想いだけではプレーできません。
資産運用会社もこれは同じです。チョクハンも資産運用会社としての能力があってこそ運用会社として認められる存在になります。自信や熱意だけでは資産運用会社としては通用しません。
今のチョクハンが大手資産運用会社と比較して受託者としての責任を果たす能力で勝っていると言えるでしょうか?

なお、バンガードは経営管理についても「経営管理にシックスシグマの手法を採用し、業務のあらゆる局面で、正確、迅速な運営を実現。作業工程の更なる改善に日々取り組んでいます。」とまで謳っています。(バンガードの独自性 より)


コスト競争が進んだ時に販売会社がいない直販は強力な武器になります。直販というシステムには大いに期待しています。しかし、現在のチョクハンは残念ながらこのレベルには程遠い。

バンガードのような直販低コストファンドを望んでいますが、「インデックスなら何でも良いわけではない」「直販なら何でも良いわけではない」ということです。
高品質であることは必要条件です。


こういう声を乗り越えてガンバレ、チョクハン。


【関連コンテンツ】