南アフリカで開催されているワールドカップ、日本はカメルーンとの初戦を1-0で勝利。

さて、日本では3戦全敗を予想していた人が結構居たように思います。
セルジオ越後氏は堂々と3戦全敗を公言し、杉山茂樹氏は「3戦全敗の可能性はかなり高いだろう」と言っていました。他にもブログやコメントなどで3戦全敗を予想する声も結構あった。
私の身近な人の中でも3戦全敗をほぼ断言するかのような口調で予想する人もいました。


セルジオ氏とか杉山氏などはサッカーに詳しいのですから、どちらが強いかという戦力分析はある程度の制度でできているのでしょう。しかし、全敗というのは勇気ある予想です。かなりチャレンジングです。

サッカーは意外なほどに前評判どおりに進まないことがよくあるんです。後付け解説ならジャイアント・キリングの説明はできても、前評判時点でそれをするのはかなり難しい。(セビージャがバルサに勝ったことやPSVの躍進を後付けで解説できても、事前予想でそれを織り込むのは困難です)

しかし、今回書きたいことはそういう2チームの戦力差が勝敗を決定付けないというだけではありません。



以下の予想が秀逸。
英国ブックメーカー予想は「日本全敗」(デイリースポーツ)
いよいよ14日に迫ったサッカー日本代表のW杯初戦(対カメルーン)。英大手ブックメーカー「ウィリアムヒル」で日本戦のオッズを調べてみると…。優勝候補と目されるオランダとの試合(19日)は、「オランダ勝利」の賭け率が0・75倍。圧倒的にオランダ勝利を確信する人が多いことが分かる。日本は14日のカメルーン戦、24日のデンマーク戦といずれも相手チームの勝ち予想が約2倍に対し、日本の勝ち予想は約3・5倍。賭け率だけでみると、1次リーグの日本は3戦全敗予想となっている。
どう考えても、ウィリアムヒルの各試合のオッズから【1次リーグの日本は3戦全敗予想となっている。】とは読めません、
ブックメーカーの取り分を無視して考えると、デンマークとカメルーンの勝ちオッズが2倍だと日本が負ける確率は50%です。
デンマークとカメルーンの両方に負ける可能性は50%×50%=25%です。その上でオランダにも負ける可能性を考えると・・・
実際はブックメーカの取り分があるので、日本の対戦国の勝率をもう少し高めにする必要はありますが、それでも日本全敗という確率は30%程度です。
どの相手に対しても不利なオッズになっていることから日本が"最弱"とか"予選脱落候補最有力"とはいえても「3戦全敗予想になっている」とは言えません。

同じウィリアムヒルの予選突破オッズで日本の倍率は3.75倍でした。オランダは1.14倍。カメルーンとデンマークは2倍。これを見ても日本が最弱だという評価なのは一目瞭然です。これに胴元取り分の補正をして計算すると日本の予選突破確率は約25%です。75%の確率で予選落ちという予想です。
しかし、予選落ちでも3戦全敗のほかに、1分2敗、2分1敗、1勝2敗、1勝1分1敗、1勝2分、2勝1敗といろいろなパターンがあります。それを含めての75%なので、やはり3戦全敗の確率はそう高くありません。


日本が他対戦国に負けるという1つ1つの事象が起こる確率は高くても、それが全部同時に発生する確率は全く別です。確率90%の事象でも10回連続で起こる可能性は35%弱、20回連続だと12%です。


事実、過去のワールドカップ予選のデータを見ても3戦全敗でグループリーグを敗退する国はそう多くありません。弱いと思われたチームでも必ずしも全敗で終わるわけではなく、1回くらい引き分けたりもするものです。
プレミアリーグでも上位チームが意外と下位チームに取りこぼします。今期のマンUは昇格組のバーンリーにまさかの黒星を喫しています。プレミアリーグではなくFAカップでは下部リーグのリーズにやられたりと意外と順当に行きません。





投資ブログでなんでこんな話を書いたかというと・・・

「感情ではなく、確率をちゃんと冷静に判断しようね」ということです。

行動経済学でも言われていますが、ちょっとした差が過大に評価されることが多いように感じます。
 ・格下の日本代表は勝てない (実際は日本の方が不利だが、それほど圧倒的な差は無い)
 ・就活では大学格差があって学歴は重要 (実際に大学の差はあるが、言うほどの差は無い)


これは投資の世界でも同じことでしょう。
ちょっとした危機があるとそれを恐れてパニックになってしまったりと、過剰に反応することがしばしばあります。そういう時に冷静に判断しましょう。

デイリースポーツの記者のように3戦全敗を導き出すのは危険です。



P.S.
杉山氏は自身のブログの「可能性はある」という空虚な答にて
可能性は「ある」に決まっている。
問われているのは、それがどれほどかってこと。
1%なのか 80%なのか。50%以下なら難しい。可能性は「低い」と答えるべきだろうし、50%以上あると思えば、可能性は「高い」と答えるべきなのだ。
のように書いています。ただ可能性が高いだけで50%以上なのだから、かなり高いと言うからには70%や80%の確率で3戦全敗を予想していたのでしょうか。いや、断言するからにはそうなのでしょう。どういうロジックで日本の全敗確率がそれほどと予想したのか解説してほしいものです。
また、
だから僕は、20%以下なら「低い」ではなく「ない」と言うことにしている。
確率20%以下が「ない」なら、Pinnaclesportsの直前優勝オッズから優勝確率を算出すると、ワールドカップで優勝する可能性がある国は1国も無くなります。
杉山氏はこのように何やら数字に弱い気がしてします。


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