先の『消費税の逆進性と複数税率化』に続いての消費税ネタ。まあ、続編です。

先のエントリーで紹介した関西社会経済研究所の『消費税の逆進性と複数税率化』というレポートがありますが、ほぼ同時に会計検査院から森信茂樹氏が『消費税の逆進性対策を考える』というレポートを出していました。

先の『消費税の逆進性と複数税率化』でも森信氏の発言が引用されたり、参考文献とされたりしていたので、読んでみました。
基本的な主張は先の『消費税の逆進性と複数税率化』と同じ。複製税率には問題があり、導入すべきでないという話です。詳細はレポートに譲りますが、このレポートの中でEU諸国の複数税率下での面白い話がありましたので、それを紹介します。

マクドナルドでハンバーガーを買う場合,テイクアウトにすると食料品となり軽減税率(英国ではゼロ税率)が適用されるが,その場で食べると飲食サービスとなり標準税率が適用されるということになる。誰もが軽減税率の適用を望んで「テイクアウトといって購入し,その場で食べる(飲食サービス)」という事態が容易に想像される。そこで英国では後述する温度基準を策定した。
英国では,名物のフィッシュ・アンド・チップス屋は,新鮮な魚も併せて販売している事が多いが,実際の販売割合は,調理済みと新鮮な魚とが7:3 だが,税務統計上は3:7 になっている。これは,新鮮な魚はゼロ税率,フライドフィッシュは標準税率で課税されるためである。
カナダの税制では,ドーナツ等の菓子について,その場で食べるか持ち帰りかにより区分しているが,いつ食べるかというタイミングを売却時に判断することは不可能なので,販売個数により,5 個以下の場合には飲食サービスとして標準税率,6 個以上は食料品としてゼロ税率というように外形的に決めている。その場で見知らぬ者が集まって,にわか「ドーナツ購入クラブ」を結成し共同購入すれば,食料品となり,安く購入できる
・温度による基準
冷凍ヨーグルトは(アイスクリームとの競合から)標準税率,冷蔵庫に入っているヨーグルトは優遇税率
・タイミングによる基準
その場ですぐに食べてしまうような場合は標準税率,後で食べるような場合は優遇税率
・量による基準
1-5 個のドーナツは標準税率,6 個以上のドーナツは優遇税率
・加工度による基準
加工食品は標準税率,本来の性状が変化しない程度の原始加工を経たものは優遇税率
ちょっと前に話題になったイギリスの「M&S社のお菓子がビスケットかケーキか論争」もそうですが、外から見る分には面白いですね。
実際に内部に入って、こんな案件でいちいち裁判になって裁判費用やらが税金から持ち出されることを考えると笑い話ですみませんが。


また、このレポートで大変興味深かったのは、一部非課税枠を設けることで「税の累積」が生じて税率を下げた分ほど価格が下がらなかったり、逆に消費者の負担が増えることがあるというくだり。

具体例として、消費税率10%として弁当とレストランでの食事の価格が以下の2パターンでどうなるかを検証している。
 ・一律課税で優遇税率無しの場合
 ・食料品非課税(外食サービス標準課税)の場合
この簡単なシミュレーションでは、一律10%の税率で1100円の弁当は税率0にすると1020円になり、一律10%の税率で1100円の食事が税率0にすると1122円になっている。
実際にはこんなに簡単な図式通りにはいかないだろうが、あまり意識していないポイントなので面白かった。


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